【五月号】巻頭言 事実と秘密と真実【キ刊TechnoBreakマガジン】

2021年のクリスマスイヴ、彼はモツ野ニコ美女史と神楽坂の路地裏にあるビストロで帆立のパイ包み焼きなどに舌鼓を打っていた。

年に一度も身に付けないくらいお気に入りの、金魚と水草を描いた明るい色のタイを締めて来たものだった(色違いの暗い方は年に五度は身に着ける)。

彼から彼女へのプレゼントは何を渡したかもう忘れたが、彼女は仕事着がわりにもなるようなボディスーツを寄越した。

商品の選別の眼差しの先に、彼自身の存在を見ていてくれた気がしたのが嬉しかったらしい。

さて、ニュースはその会食中に知らされた。

北欧の至宝、メインビジュアル解禁の報である。

妻への暴行により、ジョニー・デップがファンタスティック・ビーストシリーズから降板、後任をマッツ・ミケルセンが務めることは前々から発表されてはいたが。

『カジノロワイヤル』で世界へ向けて華々しく反逆の狼煙を上げてから15年。

その間のキャリアにハンニバル・レクターを演じ、危険な魅力に拍車をかけ、さらに人間的な魅力から世界中にファンを拡大した。

『ドクター・ストレンジ』でカエシリウス役を演じて来日した際には、公式ツイッターが「#マッツとこたつ」というタグで動画を投稿していた事も記憶に新しい。

今作で代役を引き受けた大きな理由の一つが、二人の子供がハリー・ポッターシリーズの大ファンで、圧力をかけられたからだというのがスゲー良い。

その男、ゲラート・グリンデルバルドは、ル・シッフルかハンニバル・レクターのヴィジュアルをそのままに、前髪は白髪を交えた様子をしているので

「あぁ、これだよ、これこれ!分かってるじゃないか!」

という感覚がファンの全身を歓喜で震わせるものだ。

その衝撃の度合いと言えば凄まじく、彼はBlu-ray Discを入手しすぐさま前二作を鑑賞したほどである。

心を開いて見てみれば、全面的に良い作品だった。

様々な視点や議論が散りばめられていた。

特に一作目は、目に涙を溜めながら見させられるようなシーンが多かった。

ジョニー・デップの人間離れした容姿が少し気になって、二作目中盤の屋内のシーンでは浮いているような印象を受けたのではあるが。

いやはや、ハリー・ポッターシリーズを毛嫌いしてロクに観もしなかった、厄介な映画好きの戯言だ……。

というわけで観に行ってきた。

Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore and MADS MIKKELSEN

(邦題:ファンタスティックビースト ダンブルドアの秘密とマッツ・ミケルセン)

未見の方は眉間にシワを寄せないよう、以下ネタバレ注意!!

本作にはマッツの秘密として、お風呂入浴シーンがあるからおったまげた!

すげぇよ、マッツに恋したダンブルドア(世界のケン・ワタナベ似)がおっ勃つ!

お風呂上がりはチリンビールで乾杯だ!

真面目な話、『ダークナイト』ですら、冒頭五分間たっぷりと息詰まる強盗シーンを見せた上で、いよいよジョーカーがその顔を明かすのに。

一作目だって、化けの皮が剥がれるのは物語のラスト、拘束されてからなのに。

スッとぼけてんのかこの北欧の至宝さん、シレッとお茶飲みに来ちゃったもん!

そこからはまぁ、出るわ出るわ、原作の人も吹っ切れたかのように出す出す……。

これって、アレじゃねーかな、大人になってからそういう映画情報をキャッチしにいくように行動変容したけど、中高生ファンの人の中には当然裏事情を知らずに三作目観に来て

『このおじさんは誰だろう?』

っていう現象あるでしょ(笑)

旧グリは、北欧ではなく北極育ちなのだろう。

極寒の冷気を身に纏い、関わるものを震え上がらせる北風だ。

まつ毛の先まで凍りついていて、対話よりも命令を好んでいるらしい。

これに対して新グリは、早々にキャラ設定を変更されたかのように美味しい立ち位置。

マッツファンはこの瞬間を劇場で体験できて歓喜しているに違いない。

では、唐突ですがまとめ(2つ)に入ろうと思います。

まとめ1、先ず考えたこと。

ダンブル「サイコ野郎と距離おいたらさ、捨てたのやら何やらって逆恨み激しくってさ、困ってます」

みたいなのスゲー腹立つ。

確かに、グリはサイコ野郎で、ダンブルを利用するために言い寄ったとか、利用とまではいかないながらも敵対させないための束縛大好き彼氏なのかもだけど、だったら

「さも捨てたと取られるような距離の置き方をしたオマエの行動に非があるから、困っているのは身から出た錆だろ」

って思うよ。

で、その先は法が裁くわけで。

(上記は筆者の良くない思い込みであり、当然冗談です)

チリンのお辞儀なんか、そういうこと吹聴してる奴に相応しくないだろ。

いや、双子じゃないだろ、ホムンクルスだアレ!

だからクリーデンスも気付かなかったんだ……。

よく広告に書かれてる

「ハリー・ポッター」では明かされなかった最大の謎、解禁

ていうのは全く意味がわからなかったのだが、それはハリー・ポッターシリーズを全く観ていないからだろうか?

俺からしてみれば、ホムンクルスで二重のチリンすり替えして、名声を手に入れている権力欲とかそういうところが黒い秘密の誕生って感じね。

最後にあのカバンを手渡したのが誰かっていうのがそこら辺の動かぬ(状況)証拠ですわ。

まぁ、岸田今日子さんに似てて、僕は岸田今日子さん好きだからこれ以上言わないけど。

最後に一言。

一番好きなシーンは、マッツさんのパーティ会場入り。