【人生5.0】Junの一食一飯 #007 CoCo壱番屋【ONLIFE】

誰も出勤しない休日のオフィスに唾を吐き捨てる代わりに、銚子のビジネスホテルで缶詰になって仕事をしてきた。

晩にはお刺身、焼き魚、煮物、揚げ物が出され、朝は焼き魚と卵とお味噌汁。

昼食時だけ外を出歩くのも格好の気晴らしになる。

普段、往復の通勤時間に充てる三時間はベッドで寝ていれば良い。

キッチンが無いから作りながら飲む事ができないのがまた良い。

その代わりに飲みながら仕事が出来る、これは家ではなかなか難しい。

なので毎晩したたか飲んだ。

 

木曜の晩から日曜の朝まで、そんな生活にとっぷりと浸り、あともう一日泊まりたいという気持ちを堪えて帰路に着く。

千葉駅まで二時間かかる電車の中でも仕事をしながら、では昼食を何にしようか考えていると、いまひとつ仕事が手につかぬ。

挙句、前日は真夜中まで映画を見ながらハイボールで、ほとんどひと瓶空けてしまった。

喉の渇き、胃のむかつき、嫌な汗、二日酔いの喜びが満身に結晶している。

だからカレーが食べたい、無性に。

酒飲みなら誰にでもある様なこの経験が、カレーは飲み物という至言を生んだのではあるまいか。

勘違い行楽気分への絶縁状、ハロー日常、バイバイ旅情。

 

ラーメンなら毎日のように食べるくせに、カレーが食べたくなるのは思い出したようなときくらいだ。

誠意を欠いた付き合い、反省せねばなるまい。

でも、ラーメン屋さんはコンビニくらいあるのに、カレー屋さんはお花屋さんくらいしかないじゃないか。

この男、どうやら反省していない。

誠意を欠いていたのは付き合い方ではなく、この男の性根の問題だったらしい。

真っ直ぐに歪んだ心を、しかしそう簡単には変えられない。

半ベソをかきながらCoCo壱番屋さんへ這入った。

 

手近なところでリキを入れるためにあいがけというのはもちろん効果的だ。

大学の目の前にあった三品食堂という所は、牛めし、カレーライス、カツライスの組み合わせでやっていて、午後の講義を乗り切るために注文する赤玉ミックスは学生当時一番の贅沢だった。

だが、今までの漫文に書いた通り牛丼屋さんでは、𠮷野家さんは牛、松屋さんはカルビ焼肉、すき家さんは混ぜのっけ朝食、カレーが割り込む余地は基本的にない。

おそらく、これら三店舗の中で、一番頻繁に行くお店であればカレーを注文することもあるだろう。

それならば、CoCo壱番屋さんは、一体何が違うのだろうか。

CoCo壱番屋、その本質は一体何か。

答えはシンプル、カレー屋さんなのである。

だが、果たしてそれだけだろうか。

 

メニューにはカレールーが五種類から選べる(CoCo壱番屋さんはこれをソースと表記している)。

ポークが基本で、ビーフは割増料金だ。

こういった時は、松か竹か、迷わず高い方にするのだが、ポークカレーが好きなのでここは身を委ねる。

ライスの量は、表記を勝手に並盛り中盛り大盛り、それ以降は一括して特盛りと捉えて大盛りにする。

それに呼応してお玉二杯分のルーを追加する。

辛さについては長くなるので、調整なしが良かろうとだけ記しておく。

これで未だ千円超えていないのは小学生でも計算できることだ。

観えて来たのはイイ感じ未来予想図、私の心の眼に映る。

 

しかし、CoCo壱番屋さんの本質はカレーの調整に小回りが効くということでは無いと観る。

心の眼で観ているイイ感じ未来予想図が鮮明になる。

そうだ、これは半分だけ真っ白いキャンバスなのだ。

今こそ私は、カレー色の大海原を目の前に見据え、しかと踏みしめるこの白い砂浜に、素敵な物だけたくさん集めよう。

CoCo壱番屋さんの本質は、シンプルにカレー屋さんであるということ。

なればこそ、そのカレーを半無限の自由度で創造出来ることもまた本質。

問われている、私のデザイン思考が。

 

CoCoで会ったが百年目、迷わず冬季限定の牡蠣フライだ。

これが怒りの牡蠣Fury。

Haben Sie ein Zimmer frei?

私は迷わない、悩むこともない。

考えているからだ。

もしも間違えたらその非を認め、また考えれば良い。

だが待て、私はトッピングのメニューを見てもいない。

牡蠣フライは良いとして、考えずに決めていたではないか。

もしも間違えたらその非を認め、また考えれば良い。

そうだ、問われているのは、私のデザイン思考。

 

しかしどのページを見ても、トッピングのコーナーが無い。

というか、土台みな同じカレーなのだが、上に載せるものだけアレコレ変えるだけで何ページにもなるというのは圧倒的な自由度の表れだ。

このメニュー、しかと目を通して考えねばなるまい。

トッピングのコーナーは大食い元お笑い芸人(灯台下暗しに掛けたつもりだが、石塚英彦さんは現役のお笑い芸人さんである)、ルーの種類やライスの量を選ぶページ下部にそっと載っていた。

 

悩んでいてもはじまらぬ、ここは食べ歩きの直感を信じて選んでしまおう。

有れば注文の牡蠣フライ、意外と安値のビーフカツ、ついつい追加でクリームコロッケ、牡蠣フライ用にタルタルソース、カレーの恋人半熟タマゴ、とっても嬉しいオクラ山芋、チーズで美味しいおまじない。

そう、こと食事に関しては、食べながら考えたって良い。

運ばれてきた一皿は半分白いキャンバスから、だいたい茶色い絵画になっていた。

何処だチーズは、ルーに溶けてしまって確認が難しい。

これは美味しい海洋汚染、清濁併せ呑む時だ。

これは後で知った事なのだが、というより今書きながらメニューを見ていて気付いた事なのだが、ライスを増量するとその分のルーも増加するという。

だから、運ばれてきた一皿を見て、チャレンジメニューのように思われた方々も無理からぬことである。

しかし、私の目の前にあるのは、私自身には他と比較する仕様が無いのでそのまま美味しく頂くことができた。

今更、カレーの味をどうこうと論ずるのは無意味であろう、カレーは美味しい。

ともかく、デザイン思考はresignすることに決める。

【人生5.0】Junの一食一飯 #006 すき家【ONLIFE】

シン・エヴァンゲリオンを観てすぐに気が付いた事がある。

碇シンジは、誰に対しても好意を伝えることに怖気付かなかったのだ。

作中、何度も「好き」と発言する彼に、ちょうどその頃の自分が重なった。

こんな私でも、誰かを、いや接点のあるすべての人と、好感から始まる関係を構築したいと思っているからだ。

子供は「好き」なんて照れ臭くて、言ったほうが負けという観念に支配されている。

当たって砕けた事もないからそうなる、砕けてそのまま腐っているからそうなる。

 

そんなわけで、私は

「好きです、すき家」

というキャッチコピーを前々から良い言葉であると思っていた。

好きと言うのは勇気が要るものだ、強さが必要なのだ、大審問官のラストなのだ。

なればこそ、すき家さんに対して反発したい人がいるであろうことも理解できる。

おそらく、先方も初めの頃は店名が照れ臭かったから、車で行くような立地に出店して我々と距離を取っていたのではあるまいか、好きと言うのは勇気が要るからだ。

でもこの頃は、街を歩いていてもよく見かける。

好きと言うのに抵抗がなくなったというのであれば成長の証拠だと思う。

 

すき家さんとの付き合いは、この頃はじまってから、せいぜい五年程度になるか。

店内には高森浩二さんがパーソナリティを務めるラジオが流れ、合間には歌詞のほとんどが「好き」だけで出来たようなすき家のテーマ曲が差し挟まれる(最近はあまり聞かれなくなったか、耳に馴染みすぎて意識しなくなったかしらん)。

もしも私がバファリンならば、半分が優しさ、残り半分が猜疑心で出来ているような、頭痛に効かない紛い物商品だからこそ気付く事もある。

それは、この徹底的にハートフルな雰囲気が合わないという人もいるだろうという事。

その点で、すき家さんにはもっと人の心の暗い部分にも無言で寄り添えるような、ほんの少しだけでいいから懐の広いお店になって欲しいと願うのは無い物ねだりだとは思わない。

 

私がすき家さんにお邪魔するのは決まって朝食時、電車で寝過ごして別ルートから出勤する道すがら、バンドの打ち合わせで泊まった翌朝、休日にデパートが開店するのを待ちながら。

この時間に馴染みがある、毎朝ではないから特別な時間になる。

そして、朝食と言えばすき家さんではこれは、混ぜのっけ朝食だ。

すき家さんも、おススメ!と書いている。

ご飯大盛りにして、豚汁に変更して、牛皿も鯖も追加して、店員さんにはタバスコをお借りする。

小鉢に入った方の牛にタバスコをたくさんかけて、酸味を楽しむ。

これが出来るから本当に好き、大好きやと叫びたい。

そんな大声で店員さんに感謝の気持ちを伝えても迷惑な客になるから、ここに書き留めるだけにする。

鯖は水っぽいが美味しい、パサついたものを出されるより兆倍良い。

朝起きて、鯖食べて、回転寿司では鯖で〆め、である。

それと、塩分を非常に気にしているので、そこまで塩辛くないのが非常にありがたい。

悲しいかな、日常的なもので塩辛いものを口にすると、命の危険を直覚してしまう。

お魚は鯖、お肉はホルモン、これ以上の贅沢を望まないでおけば、世の中には美味しいものだらけだという事に気付く。

こんな主張でも十分贅沢だと言われるだろうか。

人はパンでは生きられない、脂がなければ生きていく気にもなれない。

 

お碗にはおんたまとオクラが入れられている、ここに好みで袋に入ったかつぶしを入れる、特製たまごかけしょうゆを垂らす。

混ぜのっけ朝食は、このお碗の中で混ぜて、ご飯に乗っけるというお店側からの誘導が読み取れるのでそれに従うことにする。

そうするとお碗にどうしても温玉の黄身がくっついてしまうので、少々もったいない気がする。

同じように卵かけご飯でも、もう随分長いことご飯にかけてから混ぜるのでなく、とき卵にしてからご飯にかけているからお碗につく分がもったいない気がしていた。

ならばこれを天使の塵と名付けよう。

ヘタに手を出してはならぬということだ。

【人生5.0】Junの一食一飯 #005 松屋【ONLIFE】

𠮷野家さんで御馳走を頂いたので、次は松屋さんへ伺うことにしたい。

今はなき船橋西武さんの真正面にあった、これも今はなき松屋さん(フェイスビル一階へ移転した)。

牛めしという商品名が当時の私には珍しく、こちらはお味噌汁が無料で付く。

高校生だった頃の私たちにとっては救いのようなお店だった。

価格競争真っ只中でお安い料金で提供してくれたし、当時の𠮷野家さんは戦場だという認識があったためだ。

例のフラッシュが理由だろう、フラッシュなんて衣類パンツなのではあるが。

 

松屋さんは定食メニューが充実している。

松屋世界紀行は記憶に新しい、シュクメルリ定食(ジョージア)、チキンカチャトーラ定食(イタリア)。

後続は無かったが、スウェーデン料理など出るか、今後に期待している。

回鍋肉定食、麻婆豆腐定食これらも都度出して下さる。

カレーは先代から変化があったし、ハンバーグのバリエーションも嬉しい。

これら期間限定商品には都会の風めいたものすら感じる。

サラリーマンになった今でも、私の救いであり続けるのだ、松屋さん。

嬉しい気持ちが湧き上がる。

 

いつか、津田沼の松屋さんで食事していた時、といっても高校生の時分であるが、おじいちゃんが何やら文句を言っていた。

豚汁に入っている里芋の数が少ないのだと言う。

当時、豚汁に入っていた具は、里芋も豚肉も、目分量でわんさか入っていた。

いつからだろう、里芋の数は二つ、豚肉もほんの少しに変わった。

私は毎回豚汁変更するのでその変化には気付いたものだが、不平等感を無くすと言うこともまた大切なことかも知れぬ。

小声で申し上げるが、里芋と豚肉は好きだから、また増えたら良いなと生涯思い続けたい。

私の変態食欲は一途な恋です。

 

飯田橋の小諸そばさんが閉店なさってからは、その真隣の松屋さんに這入って朝食を摂っていた。

前回の𠮷野家さんは、それに飽きて以降のことである。

カルビ焼肉定食、ご飯大盛りを注文することが多かった。

その頃牛めしに黒七味が付いた。

しばらくしてから小袋になったが、あの工夫は良いと思う、嬉しい限りだ。

 

その後に親友となった、とあるお肉大好きルポライターR女史は、牛焼肉定食をポン酢で頂くのがお好みだと言っていた。

私とは対照的な選択に尊敬の念を抱いた。

彼女も白飯党で、牛丼の類はつゆ抜きと言っていた。

さてそれでは、今回松屋さんに赴いて、何が食べたいかと言われると。

牛めしか、創業カレーライスか、ハンバーグか、いやそれらではなく定食なのだ。

期間限定商品というのでもなく。

 

そんなわけで、今回、そう久しぶりでもなく松屋さんへお邪魔して、いつもの定食をシンプルにアレンジした欲張り定食を注文しようと思う。

カルビ焼肉定食大盛り豚汁変更に、単品牛焼肉たったのこれだけである。

JunのレギュラーメニューにR女史のオススメを合致させた、いうならばJR定食か。

豚汁をつけたのは、なんというか、松屋さんの導きに従ったまで。

タダでもお味噌汁が付くというのに、お金を払ってしまうと、味わいが段違いの汁物を付けることができてしまうのだ。

塩分摂取を極力避けている私でも、こればっかりはもう戻れない身体になってしまったというわけか、悔しい。

𠮷野家さんでは二日酔いの翌朝でもなければBセット(お新香、味噌汁)を注文することは無いというのに。

松屋さん、いつからか卓上ソースからカルビソースが撤去されてしまっている。

注文の組み立てをああだこうだ考える割りに能天気な私は

『今日も切らしているんだろう』

と正式撤去を全く認めようとしていなかった。

一説には、店員さんに言えば冷蔵庫から出してくれるそうなのだが真偽不明。

カルビ焼肉のお皿にはお店から指示されている通りカルビソースを入れていたが、不承不承で焼肉ソースを入れざるを得なくなっている。

しかし食べてみると、人生初で注文した時につけ比べて食べたあの違和感が全く無い。

これはあれか、焼肉ソースの容器にカルビソースを入れているのではあるまいか。

あるいは、毎週せっせと取材と称した食事に出かけて、漫文こさえている私の舌が馬鹿なのか。

後者であろう。

だが私はチェーン店さんでは舌や頭で食事をしているわけでは無い。

料理は心、ご飯は喉ごし。

 

あ、定食の生野菜があった。

ごまドレッシングを適量かけて、全部食べる。

漬物などでもない限り、食事はお肉とご飯で良い。

この理屈で、回鍋肉も先にキャベツとピーマンを食べてしまう。

これをやると友人から白い目で見られる。

白い目で見られながら食べる白いご飯も美味しい。

変態食欲のなせる業か。

 

牛焼肉のお皿にポン酢を入れて、つけて食べる。

カルビ焼肉に比べて淡白なお肉に、酸っぱい味がついている。

酸っぱすぎて吹き出しそうになる。

カルビ焼肉と牛焼ポン酢は180°味が違う。

なんだこの酸っぱいお肉、美味い不味いではなく笑える。

家でしゃぶしゃぶを食べたってポン酢と牛であるには変わりないが、慣れていないというだけで結構な事件だ。

私にとっては最早カルビ焼肉が良い箸休めとなっている。

R女史はこれをいつも食べていたのかカッコいい、さすが香の者。

 

豚汁に関してはあまり書こうとは思わぬから、別の機会にする。

JR定食に関して言えば、通常のお味噌汁で十分という気がしている。

【人生5.0】Junの一食一飯 #004 𠮷野家【ONLIFE】

職場の最寄り駅出口すぐ横に𠮷野家さんがある。

毎朝そこへ這入って食事を済ませて出勤する。

そういうことが長く長く続いていた頃があった。

私は𠮷野家さんを尊敬している。

早い、安い、美味い。

それに加えて鰻が年中提供される。

味噌汁が高い、そこは大目に見る。

寛容になれる自分を認められる、そんなお店だ。

 

絶滅危惧種を頂くのはよくない。

でも売られてしまっている以上お救いし申し上げなければなるまい。

頼まれてもいないことを、まさに買って出る。

人生はハードモードを選びたい。

鰻と苦労は買ってでも…なんて言葉もあったか。

可愛い子には旅をさせ、私はいつまでも赤ん坊の弾力的な心を大切にしたい。

人の心は赤子のごときもの、とは宣長さんも言っている、それに賛同しよう。

 

いつも注文していたのは、鰻重味噌汁牛小鉢セット、ご飯大盛り、もちろんタレ抜き。

タレが好きな人は普通にお召し上がりください。

私は太く長く食べ続けるために塩分を諦めている、それだけである。

ちなみに𠮷野家さん、豚丼はタレ抜きができない。

タレに自信ありというわけだ、だから私は豚皿とご飯とを別々に注文する。

ホントは多分、レトルトパックからご飯に上げるのにどうしてもタレごとかかってしまうからなのだろう、邪推は私の悪い癖だ。

しかしながら、スタミナ超特盛丼ではタレ抜きができた。

調理場の方にはたいそう怪訝な顔をこちらに向けて頂けた、無理からぬこと光栄である。

 

この夏、酔狂で𠮷野家さん、松屋さん、すき家さんで鰻を食べ比べてみた。

ちょうど、どこか新興のウェブサイトで似たような企画をしていたからだ。

まぁ、あんまりどこも大差なかろうかと思う、尻尾が出てくるところもあった。

一枚盛りで注文したのが良くなかったか、まぁ当然だろう。

𠮷野家さんで注文するのは、満足度と値段のバランスをとって二枚盛りだ。

異常食欲のなせる業か、私の食事に朝晩は関係ない、バランスが何だというのか。

それでも社会人としてお酒は控える。

ドイツ人にあらざる私には止むを得ない仕儀である。

 

鰻はタレ抜き。

なればこそ、牛丼を頂くときにはつゆ抜きである。

だから今回の来店では、やはり牛丼つゆだくだくというのを試すべきだろう。

いや、自分の心のまま正直に告白する。

つゆだくだく食いてえ、と心が叫ぶのだ、私の身体を支配しているのは心だ。

ということで、この度、鰻重二枚盛りタレ抜きと、牛丼アタマの大盛りつゆだくだくを注文させて頂いた。

普段𠮷野家さんで牛丼を食べるときには、アタマの大盛りつゆ抜きと決めている。

お味噌汁は注文しないでおいた。

なぜって、つゆだくだくのこれはもう汁物だということに勝手に決めたから。

で、ここの鰻は簡単に左右に別れてくれるというのが特徴だ。

見た目には上下なのではあるが。

プロとコントラ(賛否)あるかと思うが、食べやすい大きさに別れてくれるのは良いことだとしておく。

皮目の焦げた味わいが強いのがもう一つの特徴だ、これも賛否あるだろう。

まぁ、そういうののためにお店にお邪魔しているわけではないので気にしない。

 

鰻にかけるために、山椒の小袋が付いてくるが、これを見て欲しい。

この「どこからでも切れます」を装って、ど真ん中に切れ込み一本だけが入っているこの小袋を。

この小袋には諧謔があると見るが、どうだろうか。

これは私の在り方ほどには及ばない。

私の場合は、諧謔を通り越して単なる道化だから。

それゆえ、この小袋のように在り方までをも強制されているというのには、同情の念を禁じ得ない。

いやいや、これ以上、𠮷野家さんの山椒小袋に自分を重ねるのはよそう。

破こうとして、真ん中から勢いよく開くと、中身が散らばってしまうので気をつけて欲しい。

お重の上で、慎重に開封することをお勧めする次第である。

 

鰻からご飯と一緒に頂く。

パリパリよりトロトロが好きな私は大好きだ。

で、追っかけて牛丼をざっとかっ込む。

ひ、ひ、ひ、思わず下卑た笑いが心の中で巻き起こる。

天使がラブソングを歌っている。

落ち着けローリン・ヒルよ、ここで紅生姜を頬張る。

これを繰り返す、笑いが止まらない、落ち着けローリン・ヒル紅生姜。

なんというか、もうカレーを食べている気すらして来た。

合間にグッと飲む水も非常に美味しい、カレーだこれは。

 

こうなると、鰻が美味しいのか、久しぶりに食べるつゆだくだくに感動しているのか、なんなのか一体分からない。

鰻は毎日食べるものではなかったのだな、不承不承ながら平賀源内に頭を下げる。

我々は、長いことAを考えあぐねた挙句、Bに行き着くというやり方もあると、そんな認識を持ってもよかろうと思う。

毎日鰻を食べ続けた挙句、鰻はたまに食べるのが良いと気付くような。

無論、やるやらないは別として。

そうこうしているうちに、狂喜のカレー定食はきれいになくなった。

胃袋の満足感を抱えてお会計を済ませる。

 

さて、かつての毎朝鰻生活は、筋トレ命、筋肉の権化みたいな大先輩から

「身体に毒だぞ」

とかなんとか言われ、長く続いた朝の幕開けは終焉を迎えたのだった。

だが、真偽不明のこんな発言に影響を受けることは、読んでくださった諸氏には無用のこと。

単に懐具合を気にして思い止まったまでである。

【人生5.0】スーパー美味しんBONUS #000.1【ONLIFE】

規約説明と本戦準備

初期美味しんぼは、幼稚園児に読み聞かせたって、どれほどの名作か彼らが理解する。

その目は力強く見開かれて、こう言うだろう。

「パパ!将来こんなクレーマーになりたくない!」

その通りだ。

あるべき物は、あるべき場所に、そうあらん事を。

手垢がつきすぎたというより最早、手垢でできた握り飯のような美味しんぼ評論。

私はこれに新たな可能性を見出そう。

私が主催し審判を下す、新たな究極対至高の対決によって。

俺と僕とが繰り広げる一騎打ち…。

初期美味しんぼ第三巻までのエピソードで。

東西、紅白、源平に別けての十二番勝負。

一勝負につき、一万円のささやかな賞金付き。

名付けて

「スーパー美味しんBONUS」

 

説明はここまでだ、私たちにこれ以上の説明は必要あるまいな。

俺「結局賞金ってのは、俺の財布から出るんじゃねえか」

僕「誘ってくれて嬉しいよ、ちょうど退屈してたんだ」

では、各自の陣営にエピソードを召喚してくれたまえ!

 

ただし、第一巻9話、第二巻8話、第三巻9話。

この中から、第1話「豆腐と水」は別格としてプロローグに使用した。

すると、残り25エピソードは奇数となり対戦に余りが生じてしまう。

よって、第一巻第9話をエピローグに使用すると前もって断っておこう。

俺「ふぅん、ババアの回ってワケね、俺たちにとっちゃまさに切り札だ」

僕「最強カードを一枚、合意の上で封じるのは競技に普遍性が増すかな」

 

運命のコイントスが私の手により執り行われる。

2007年のワーテルロー土産である。

ナポレオンの図柄、表。

先行は僕。

俺と僕はそれぞれ、光なき闇の問わず語りの主役をしていた人格だ。

無論、統合しているの主宰者はTechnoBreak Jun。

上手にやりさえすれば、人格の分裂は有効だ。

 

私から簡単に紹介しておこう。

 

先攻となった僕は、TechnoBreak Junのウルトラポジティブな面。

詩や文学、芸術一般を好む、相手の良さを褒める公正さが売りの聞き上手。

平日昼間の稼業では九割がた彼が担当するが、人前でお道化て見せることもある。

光なき闇の問わず語りでは、ブログを不在にして主にnoteで執筆していた。

 

後攻となった俺は、TechnoBreak Junのハイパーネガティブな面。

ブラックジョークを好む攻撃的な性格で、猜疑心の塊のような破滅系。

基本的に、気心の知れた関係に限ってしか現れないが、敵対者と喧嘩するときには矢面に立つ頼れる人格だ。

光なき闇の問わず語りでは、闇としてメインのブログ更新をしていた。

 

では、陣営にエピソードを迎え入れる、召喚フェーズに入ろう。

このフェーズでは、先攻がエピソードを一つ、次に後攻がエピソードを二つ、以降は二つずつ交互に陣営に引き入れていく。

先攻、僕は、まず第二話味で勝負を召喚。

二枚のジョーカーを抜いた今、スペードのエースを選んだというわけだ。

後攻、俺は、応じて十一話活きた魚、続けて第五話料理人のプライドを召喚。

エース級とまでは言えないが、強い絵札を二枚選んでいる。

最終的な召喚順は以下の通りとなった。

先攻 赤い究極陣営(僕) 後攻 黒の至高陣営(俺)
第一選択 味で勝負 活きた魚
第二選択 日本の素材 料理人のプライド
第三選択 接待の妙 寿司の心
第四選択 幻の魚 手間の価値
第五選択 ダシの秘密 料理のルール
第六選択 炭火の魔力 野菜の鮮度
第七選択 油の音 そばツユの深み
第八選択 平凡の非凡 包丁の基本
第九選択 肉の旨味 土鍋の力
第十選択 醤油の神秘 和菓子の創意
第十一選択 美声の源 思い出のメニュー
最終選択 昼メシの効果 中華そばの命

上記は、召喚フェーズの選択順であって、本戦の対戦表を表すものではない。

 

… もうこんな時間か…………寝足りないなァ。