同僚が結婚するそうだ。
彼は俺の後輩だが同い年。
招待状の返信に、メッセージを添えた。
手元にある「歴代中国詩選」
これをパッと開いて出た一編を。
今夜の詩は、李白「客中行」
蘭陵美酒鬱金香
玉碗盛來琥珀光
但使主人能酔客
不知何處是故郷
蘭陵ランリョウの美酒、鬱金香ウッコンコウ
玉碗ギョクワン、盛り來る琥珀の光
但だ主人をして能く客を酔わしめば
知らず何れの處か是れ故郷
蘭陵の酒はウコンが香り高く
なみなみと玉碗に注がれ琥珀の光をたたえる
あとは亭主が気持ちよく酔わせてくれるなら
故郷が何処かなぞ気にすることもないのだが
李白を自分、新郎を亭主に見立てれば、
なかなか乞食根性丸出しの良い詩を送ることになる。
祝おうって気持ちは無いのか知らん。
悲しいかな、どこかの亭主に招かれて飲むということはない。
その経験は、披露宴に代えられるものだろう。
会費に見合う程度に、悪酔いしない程度に過ごしたい。
「客中」は旅行中の意、「行」は歌の意。
当時、ウコンは酒を醸すのに使われたそうだ。
『この詩は、李白が玄宗の側近高力士の無根の悪口によって追放され、斉魯(今の山東省)の付近をさすらっていた時の旅先での歌』とある(歴代中国詩選)。
気のいい亭主にそうそう出会えないという思いは、豪放磊落と言われた彼が傍若無人ではなかったことを示しているようで良い。
今夜の漢詩は李白「客中行」
知らず何れの處か是れ故郷