【十月号】環状赴くまま #012 巣鴨—大塚 編集後記【キ刊TechnoBreakマガジン】

だいぶ涼しくなり、ジャケットを羽織だしたのが丁度、薪能を観に行った日だ。

来月はビールの飲み歩きは厳しいかと思いつつ、先日木曜に環状赴くまま歩いた。

この日のゲストは職場の後輩A。

ニューデイズの冷やし具合がちょうど良く、ジョッキ生の泡立ちが良かった。

放っておくと溢れるので少し飲んで、19時36分乾杯。

駅前から振り返ると、向こう側に線路沿いの路地が見える。

この光景は、駒込駅前にそっくりだった(駒込は駅前のスペースがやや広かったのと、まだ陽が出ていたので、向こう側から駅を撮影していたため同じ構図の写真は無い)。

すがも桜並木通りというようだ。

この道沿いにずっと桜が咲くかと思うとすごく良い。

目を惹かれる店舗はせいぜいここくらい。

となると、逆回りコースのゴールはここしか無いということに必然なる。

先、ずっと続く。

後輩Aが足早で、撮影を遮るかの様に前にちょいちょい出る。

17時半には出れたところを19時まで待たせておいて、何を急いでいるのか。

で、ジョッキ生は飲み口が広いので、歩き飲みするとこぼれやすい。

ちょっと、今後は控えることになるな(冬場寒い時はどうしようか、コーヒーにウィスキーを垂らして飲み歩くか)。

突き当たりの様だが、ほんの少しだけ左に逸れるだけ。

山手線上に架かる江戸橋がある。

角にテイストの違う中華料理店が二つ並んでいて美味そう。

江戸橋に出た。

やはり、駒込—巣鴨間の光景に重なる。

ここから振り返る向きに線路の写真を撮った。

この流れはもうお約束な感じがする。

後輩A「いいっすね〜」

私は何が良いのか分からないままに撮影するのだが、彼は一度きりの同行で良さが分かってしまったようだ。

と言って、こんな風な散策をライフワークにするというわけでも無いのだろう。

さて、江戸橋を越せば、すがも桜並木通りはおしまいのようだ。

様子が変わったのが分かる。

なるほど、江戸橋の手前までが巣鴨、ここから先は大塚エリアということか。

日暮里と西日暮里の境で感じた空気の変化と、同じものを感じた。

少し下り坂。

道中、つくづく感じていたことなのだが、ここは街では無い。

街と街とをつなぐ、道である。

これは、車で過ごした東海道五十三次で得た着想だが、全く同じに感じた。

では、街と道との違いは何か。

環状赴くままにを続けていれば気付くだろうか。

坂を下りた突き当たりの右、進行方向。

遠くのマンションが目を引く。

所詮、道は線でしか無いから、赴いた土地を面で理解することが困難である証のように建っている。

坂を下りた突き当たりの左、線路の高架下。

この場面は、愛しの鶯谷ミステリアストンネルを連想させたが、写っているのはイマイチな一枚。

右に折れて出発。

非常に怪しげなのだが、調べてみればどうやら日本医療ビジネス大学校のよう。

足早に警察署を過ぎた。

怖いから。

うおっ、エンカウントしたぞ。

足早に歩いたら、ここだ北大塚ラーメンだ。

濃いめ醤油ラーメンの上に、気前よくチャーシューのささがきみたいなのが載っているビジュアルだけは知っていた。

後輩Aに今夜はここで〆ても良いし、都電で帰って早稲田で〆てもいいよと提案。

それにしても、そうか、北大塚か。

地図を確認したら、環状の上端は田端で、そこから左下へ向けて回ってきている途中、大塚は十一時の位置にあるようだ(歪んだ時計だが)。

ここまで来ると、もう道というより街の様相が強くなる。

交差点の左手は高架下。

つまり、駅前は近いということだ。

横断歩道を渡って先へ。

なんだあれ!

こちらは右手。

もう一度左手。

世界飯店と見える、現地の味が楽しめる小汚いお店らしくチェックしてあった。

ところで、この日の翌日に地元のタイ料理屋さんでロアナプラ気分に浸ろうと思ったら、最後に注文したフォーがとんでもなく不味くて、いやでも現地ならむしろこんなもんじゃないかなと妙に納得したのに重なる。

不味い料理は滅多に食べられないから好きである。

今度はさらに右手。

奥の建築物のライトアップが一際目を引く。

どうやら飲食店の集合施設のようだが。

しらべてみたら、なんでも星野リゾートがホテルを建てたのに合わせて出現したとか。

非常に分かりにくいが、左奥が大塚駅。

ゴールは19時56分、20分の道のりでした。

後輩Aにどこに行くか聞くと、

「魚ですかね」

なんて言うもんだから、大塚北口に魚はねえんだよと思いつつ、ピンを打っておいたお店の方へ向かうべく、ここからさらに北上。

すると、うおお、なんだこの長蛇の列は?

え、おにぎり屋さんに並んでるの??

おにぎりぼんごさんは、自分ではノーマークだった。

後輩Aは友人からこう言うお店があるのを知っているかと聞かれた記憶を思い出していた。

調べてみると、回らないお寿司屋さんのおにぎり版のようだ。

だいたい一個三百円から、と言う感じ。

面白いお店だ、いつも並んでいると言う。

写真に写っていないが、左手の通り向こうにも、電飾の輝く飲み屋施設が建っている。

先ほど写っていたのはそこだ。

北上すると、面白い看板。

例の施設の一隅、餃子で飲ませるお店だろうか。

しかし、餃子は間に合っているのであった。

魚なんて言われなければここの焼きとんだったのだが。

通過。

見落としそうになりながら、こちら。

カウンターで二、三組とテーブルに一、二組程度ながらゆったりしたお店。

その日は我々を入れて二人組が三組。

カウンターへ着き、生二つとコース。

大福帳の上にうるめいわしと卵焼き。

どちらも味わい深い。

能書き。

卵焼きの味付けにガタガタ言うな、黙って喰らえ。

ということか。

甘いのしょっぱいの、だし巻きだの色々ありますね、卵焼きは。

我が家には家庭の味がなかったので、卵焼きの味付けにこだわりなんかはゼロ。

近所のお弁当屋さんの卵焼きは甘めでしたな、回転寿司のネタにあるような。

某グルメ漫画では、目玉焼きにケチャップがどうとかあったっけ。

この後、柿と茸の胡麻和え、鮎の姿煮。

食べ終える前にお酒は九頭龍の冷やに移行。

燻製五種、鯖の切り身、肉(詳細は失念した)、チーズ、笹かまぼこ、ポテトサラダ。

喜久酔のぬる燗に移行しつつ、メイン。

鰹出汁で炊いて、左のカマトロ、右の大トロの順に出して下さいました。

黒胡椒をペンチで程よく潰したのが添えられていた。

熱々のねぎを食べるのに気をつける。

食後、釜炊きのご飯。

一杯目は二口分ほど、たっぷりの香の物でいただける。

二杯目と三杯目はそれに炊いた出汁をかけていただいてサッとかき込む。

ここも黒胡椒を振っておくのが良い。

粒あんとほうじ茶でおしまい。

ラーメン食べないで大満足コースだ。

駅前に移動し、一人で来ていたらここだったろうなというお店を写した。

この日は、前々日に良い仕事が出来ていたので、ケチケチせずに後輩に振る舞いたい気持ちだったのだ。

都電で数駅先の早稲田へ、東西線に乗り換えるためだ。

つい、懐かしいお店に足が向いてしまった。

なすからマシマシおかずのみ。

コンビニで缶ビールを購入して、一杯飲み直し。

安定の穴八幡。

姿は見えないが奥から学生たちの声が聞こえた。

夜が更ける。






編集後記

 十月号のテーマは能とか狂言、もあるのだがやはり小林秀雄である。一通り散りばめたつもりだが、本当に出汁程度の香りもしない様な登場の仕方もある。新潟へ行き、安吾風の館に行ったのも小林秀雄との関連だ。

 総力特集は毎月十五日と決めているのだが、またしても落としそうになったし、やはり総力を上げた割に目を惹くのはタイトルだけになった。未熟なものを未熟なままに出すということ、それは一つの里程標だろう。

 しかし、八月末からの多忙も明日、三十日で終わりそうだ。定時に上がってグッと飲もう。