【2023夏号】第三回戦 波乱 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

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嵐の翌日、錦糸町82はテラス席が閉鎖されていた。

先に店舗入りしていたJunは82エールで喉を潤していたが、後から来たShoとは乾杯だけして早々にゲーム起動。

何せ、一日千秋の思いで迎えた決戦の初戦だからだ。

今月のUncommonガール

【六月一回戦第一試合】

先攻Sho、山から《僧院の速槍》を召喚し速攻アタック。

この瞬間、白単低速コントロールのJunは敗北を覚悟、前回のゴルガリ・ジジイに続いて又してもアグロなデッキを組んで来たと言う事に腹立たしさすら感じていた、勝負を放棄して安易な戦術を取りやがる、とも。

Shoは順調に《勝負服纏い、チャンドラ》が三ターン目に場に出るが、Junサイドには《永岩城の修繕》くらいで展開が遅すぎる。

さらにSho、四ターン目には《焦熱の交渉人、ヤヤ》を召喚しプレインズウォーカーが並ぶ、Junは投了ムードでなるべく手の内は明かさずに敵の展開を見極めておきたい、《ドゥーム・スカール》を予顕してしまうのもバレバレで無意味だった。

果敢持ちクリーチャーを並べたShoが終始余裕で勝利。

【六月一回戦第二試合】

Jun先攻、マリガンで開始。

四ターン目、後攻のShoが仕掛けた召喚は《ウラブラスク》、ファイレクシアの赤の法務官。

Junの盤面は《エスパーの歩哨》一体に《永岩城の修繕》を二枚張っている、Sho側は《ウラブラスク》と早くから召喚してあった《僧院の速槍》、ライフは15対20。

応じてJun、先ずは《永岩城の修繕》の伝承カウンター三つ目の効果により3/4トークン一体生成、次いで二枚目の永岩城の二つ目の効果により《エスパーの歩哨》を手札から捨てた上で場に出す、そして召喚《エリシュ・ノーン》。

「うぉぉ、法務官対決かよ、熱ちい!」

一本先取のShoは余裕があるのか勝負を楽しんでいる。

ウラブラスクが第二面に変身できる算段があるのがShoの余裕の根拠だった。

無謀なる衝動》ウラブラスクの能力が誘発しJunに1点、《静電気の放電》はJunに4点と誘発1点、《稲妻の一撃》これは《エリシュ・ノーン》に3点とJunに誘発1点、これらによりJunの残りライフは8。

しかしながら、《エリシュ・ノーン》も負けてはいない、何らかの発生源がダメージを与える度に1マナか2点ライフを要求する、Shoは《ウラブラスク》変身のためにマナの支払いは拒否し続けたため、五回の支払い要求で合計10点のライフを失い残り10。

《ウラブラスク》第二面の英雄譚《大いなる業》に変身、Junとコントロールする各クリーチャーに3点のダメージ、Junが展開していた永岩城の3/4トークン以外全て焼き払われる。

しかし、《エリシュ・ノーン》の断末魔でクリーチャー四体とJun本体、再度五回の支払い要求が誘発。

Sho、残す山一つからの支払い以外、8点のライフを失って残り2。

これでJun残りライフ5対Sho残りライフ2。

しかし、このゲームは先に相手のライフを0にした方が勝つ、この程度は安い支払いなのである、双方にとって。

Sho、一時的に4/5に膨れた《僧院の速槍》でアタック。

「あっ!違う!!待った、間違えた!!」即座にShoが悲鳴を上げる。

その通り、Junはこの攻撃をブロックせずとも残りライフ1、返すターンにブロッカーのいない状態で永岩城トークンで殴れば勝ちなのだ。

法務官同士の意外な友情コンボ、勝因は手癖。

【五月一回戦第三試合】

もつれ込んだ最終戦、理想通りの展開で応酬すればまだJun側にも望みはありそうだが。

先攻Sho、四ターン目に《焦熱の交渉人、ヤヤ》、前のターンにJunは《婚礼の発表》をエンチャントした程度なので分が悪い。

さらに《ウラブラスク》が召喚される、理想的な展開はSho側にあった。

Jun、手札は悪くないのだが、低速コントロールとしての展開の理想であってやはり相手側が手に負えなくなりつつある。

手札にある《ドゥーム・スカール》をいまだに予顕せずにいるのは祈りとも諦めとも言えるのだが、生憎Shoが次ターンからインスタントを連続で唱えて《ウラブラスク》の変身が間に合い、状況を覆せないままJun敗北。

「因みに、今回のデッキ名は『フォーマー・ワークプレイス』、前の職場って意味だ」

Shoが嬉々として言い放つ。

Junのデッキ名は『赦し』、先月の負けを雪辱するために憎悪を込めた黒単を組んできたが、急遽白単に変更したためである。

【五月二回戦第一試合】

後がないJun対今週で決めたいSho。

Junには確信があった、前週の一回戦を終えて飲んでいる際、Shoがデッキのシステムを明かしたのだ、表面上は速攻デッキだが実質的な勝ち手段は《ウラブラスク》頼みなのだと。

何故手の内を明かすのか、それはSho自身が自分のデッキはイマイチだと認めているからではあるまいか。

間違いなく、この戦いにShoは先月の黒緑毒デッキのゴルガリ・ジジイこと『アンクル・ハイアー』で来るはずだ。

その読みは当たって、しかしあのアグロデッキに勝てるのか。

牙持ち、フィン》、《敬慕される腐敗僧》、《チーム結成》とShoのテンポはこれ以上ない良い動き。

一方、Junは《エスパーの歩哨》をフィンのチャンプブロックに当てざるを得ない。

Sho、MVP級クリーチャー《グリッサ・サンスレイヤー》を召喚し、盤上のクリーチャー数は三対零。

Junは何とか《ドゥーム・スカール》で一掃するも、返すターンでSho《死住まいの呼び声》を唱えフィンと腐敗僧を戦場に戻してそのまま勝利。

【五月二回戦第二試合】

Jun先攻、《エスパーの歩哨》、《獅子の飾緒》、《放浪皇》と順調に展開。

一方のSho、土地は問題なく伸びるのだが、クリーチャーの展開が無い、何とか《ミレックス》から毒性トークンを生み出す程度。

土地ばかり引く事故の続くShoをそのまま殴り続けてJunが勝利。

【五月二回戦第三試合】

混迷の二回戦、最終試合。

Jun、三ターン目に預顕した《ドゥーム・スカール》で二体除去。

Sho、返すターンで《グリッサ・サンスレイヤー》を再度召喚。

さらに次ターン《敬慕される腐敗僧》の召喚に対応してJun《行進》でグリッサを追放、Sho追加の《敬慕される腐敗僧》二体目も召喚。

この後、Sho長考。

Junの盤面には《エスパーの歩哨》とアンタップ状態の平地が四、Shoが腐敗僧二体でアタックすれば《放浪皇》による追放の可能性がある、長考の末一体の犠牲はやむなしと判断してアタック。

だがこの一体を、《放浪皇》の+1カウンターと先制攻撃を付与された歩哨で討ち取り、次のターンで残る一体を追放、Shoとしては二体を失う最悪の展開である。

Shoはミレックスからダニトークン生成、現在Junに毒カウンター三つ。

この後は、ミレックスからのダニトークン達との攻防で、《屍気の拝領》がエンチャントされたトークンからのアタックにより危うく八つまでの毒がJunに与えられたが、《エリシュ・ノーン》が即変身して何とか競り勝った。

【五月三回戦第一試合】

この日、Shoは今月初お披露目の『フォーマーワークプレイス』こと赤単ウラブラスクデッキ。

対するJunは、今月のコンセプト『赦し』こと白単ジャンクでは無く、先月完敗を喫したデッキ名未詳の赤緑で挑んだ。

双方土地を五枚並べて、プレインズウォーカー同士の勝負となったが、クリーチャーと除去のバランスが良いShoが終始押し気味で勝利。

群れの希望、アーリン》が5/5トランプルと化し、《勝負服纏い、チャンドラ》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》などに何度も突撃を敢行したものの、テンポ面での遅れを取り、状況を覆す事が出来ずJun敗北。

二ターン目にJunが出したキーカードの《辺境地の罠外し》が、取り敢えずの感覚で《火遊び》により除去されてしまったのには警戒しておくべきだったか。

さらに、《大いなる創造者、カーン》によりサイドボードから引き寄せた《先駆のゴーレム》三体が火力一発で連鎖的な除去を許してしまったことも、対戦相手のデッキを全く考えていない悪手であり、勝敗の分かれ目だったと言える。

【五月三回戦第二試合】

正体不明だったJunのデッキがブン回った。

あらかじめ出しておいた《液鋼の塗膜》で対戦相手の土地をアーティファクト化し、四ターン目に召喚したプレインズウォーカー《大いなる創造者、カーン》の+1能力により0/0のクリーチャーにして自滅させる。

このデッキのコンセプトは土地破壊が主軸、カーンをShoに見立てた『Shoの精神支配』デッキである。

Shoが戦場に出した四枚目の山がこのギミックで潰され、以降毎ターン土地が破壊されてゆく。

はずだった。

返すターンでShoの《ウラブラスク》が間に合い、呪文を三つ唱えて第二面へ変身。

一歩及ばずJun惜敗。

ブン回ったのはShoのデッキも同様だったのだ。

「もし今日のデッキが、今月の白のデッキだったら墓地が消されるから不安だったけど」

などと言って、さも良い勝負が演じられたかのような口振りで、上機嫌に言っていたShoだった。

Junは危うく、次月に携えて行く予定のデッキを取り下げて、別のデッキで参戦しかねないほどに怒り心頭だったが、五月に作成した赤緑何でも破壊デッキが接戦を制することが出来なかったのもまた事実。

敗因は様々にあるのだ。

今月のUncommonガール