【2023秋号】糞Jun 今月のHustleデッキ #002【キ刊TechnoBreakマガジン】

糞Jun

 ただクリーチャーで殴るのが気に食わないから、手札を破壊したくなる。相手の呪文を打ち消したくなる。それを一緒にしたくなる。だから、青黒デッキには夢がある!まぁ、相手からすれば悪夢かもしれないな。そんなわけで、前回紹介した赤緑人狼コントロールの翌月は、青黒ディミーアカラーのデッキでULSのバトルに殴り込んだぜ。戦果はこちら側の敗北で、悪夢を見たのは俺の方だったんだけどね!

デッキ名『ディミーア・ハイブリッド』

 先ず黒い方から見ていこう。手札破壊の担当は序盤に強い《コジレックの審問》が4枚、1対2交換が可能で墓地対策まで付いて破格の《真っ白》これは2枚、以上だ。オイオイ《思考囲い》も4枚挿しHustleしろよって声が聞こえてきそうだけど、このデッキのキーコンセプトを盛り込むために泣く泣く枠を譲ってもらったんだ。ワイルドカード4枚使って交換してあるから、黒単デッキには絶対入れたいよ。

 さて、《思考囲い》の分まで働いてもらうのが《ヴェールのリリアナ》だ。プレインズウォーカーなのに3マナで召喚できちゃうんだから、おっそろしい女の子(?)だよね。+1能力で、相手も自分も手札を捨てる、これがメインの使い方。自分も手札を捨てるデメリットがあるんだけど、そんなの関係ねぇ!って気持ちでブッ放してるよ。−2能力の布告系除去は、単純に3マナの除去のオマケにパーマネントが付くって、こんなの認められ無いでしょレベルのパワーカード(体言止め)。

 そして−6能力が、対戦相手が展開したパーマネントをこちらが半々に分けて選ばせるというHustle極まりない奥義だ。3ターン目に順調に召喚できた《ヴェールのリリアナ》が無事ここまでゴール出来ると、大概は相手の手札がゼロで、土地が戦場に2〜3枚しか残らないことになるんだよね。この能力を起動して対戦相手のパーマネントを選別している時間って、めっちゃ気の毒で時間が過ぎるのをとても遅く感じるよ。ほら、視点を変えるのに慣れてるからさ!もちろん、砂時計一本分は時間をかけて選別してるからっていうのもあるケド。

 肝心の殴り役は、《ファイレクシアの抹消者》君に決めた!黒4マナのクアドラプルシンボルってのが尖っててHustleだけど、5/5トランプルの基本性能に加えて対戦相手がこのクリーチャー自身にダメージを与えちゃったらその点数の分だけパーマネントを生贄に捧げなければならないって、どんだけ優遇されちゃってるのよコイツ。俺はデッキ構築を細々考えるタイプなんだけど、ゲームの展開と回鍋肉は大味なのが好きです。他にはお馴染み《しつこい負け犬》。コイツは墓地から唱えてもそのターンだけは仕事が出来るから、《リリアナ》の能力で手札から捨ててしまってもあんまり罪悪感が無い、深夜に食べるおでんのこんにゃくみたいな存在だ。

 1マナ枠に《よろめく怪異》が4枚。殴り役では無いけれど、死亡時の誘発能力が−1/−1修正or宝物トークン1つ生成か選べて小回りが効くニクい奴だ。2ターン目に《命取りの論争》を唱えるコストに充てて宝物トークン合計2つから、3ターン目の《ファイレクシアの抹消者》召喚に上手く繋がれば理想だね。しかしながら、召喚したい本命クリーチャーは別にいるので後で紹介する事にしたい。

 それじゃあ、お次は青のカード紹介。なんだけど、青の枠は完全に打ち消しに割いている。3枚ずつ《かき消し》と《旋風のごとき否定》だ。《かき消し》は序盤に頼れる不確定カウンターで、呪文を唱えるために追加の2マナを要求し、支払えなければ打ち消すもの。《旋風のごとき否定》も不確定カウンターだが、要求するマナは4マナと増えており、スタック上の呪文や能力全てに対して支払いを要求する。ガンガンスタック上に誘発して行くヘリオッドカンパニーに対して打ち込みたいキャンセル呪文だね。ULSでは《リリアナ》の効果で打ち消し呪文をバンバン捨ててたから、ホントに黒単デッキみたいな動きだったけどな!

 このデッキの涙ぐましい努力の一旦は、切り詰めた土地を《ジュワー島の撹乱》1枚でやりくりしている点に確認できる。これは青の土地として戦場にタップインするか、2マナの不確定カウンターとして使用するか選べる柔軟性のある両面カードだ。柔軟性ゆえに支払い要求が1マナのみと最小限だから、お守り程度の1枚挿し。さらに別の土地兼用両面カードが《ゾフの消耗》、これはデッキに2枚。

 どうしてこの、6マナの4点ドレインを2枚採用したかの理由を紹介しよう。それが『ディミーア・ハイブリッド』のキーカード《碑出告と開璃》だ。このクリーチャーは、戦場に出た際にカードを3枚引いた上で手札の2枚を選んで山札の上に戻せる。そして、死亡した際に山札の一番上のカードを追放し、そのマナ総量に等しいライフを対戦相手から失わせ、さらにそのカードがインスタントかソーサリーならタダで唱えられるというもの。つまり《ゾフの消耗》を追放してやれば、マナ総量の6点+呪文の効果で4点で合計10点のライフロスを発生させつつ、自分は4点回復という高パフォーマンスを発揮するぞ。

 このムーヴを最大限に悪用するため、さらに2枚《爆発的特異性》を採用しているのがHustleの真髄だ!《爆発的特異性》は10マナの10点火力だから、Hustleラッキーが決まれば一発で20点致死量のダメージを叩き出せるぜ!この瞬間がたまらねぇんだ!(蒼天2)このデッキが『ディミーア・ハイブリッド』の名を冠しているのは手札破壊と打ち消しのみならず、このギミックを無理矢理組み込んであるからってワケ。

 全てはこのために、4枚挿したい《リリアナ》や《抹消者》を泣く泣く3枚に減らし、手札破壊や打ち消しも10枚以下の採用にせざるを得なかった。そしてULSの勝負に負けてマジ泣きするって言うね。俺はHustleに殉じるんだ!構築に悩んでプレイングは大味な糞Junと、試合中もうんうん唸って決断するShoとが対照的です。しかし、この青黒ディミーアカラーの強みはデッキ自体のポテンシャル以上に、この前後に使用可能になるデッキ展開との総合力で勝負しているという事に刮目していただきたい。(Shoに二本先取された八月の一回戦や激闘の九月の展開を参照)

 『今月の裏Hustle』このデッキは61枚目のカードを擁している。《否定の契約》だ。何と0マナで唱えられる打ち消し呪文で、格安メリットの代償に次のターンで5マナ支払えないとゲームに敗北してしまう。お守り程度に入れてはいるが、終盤のマストカウンターを土地フルタップの状態から奇襲的に無効化できるのはとても心強い。土地を引く確率が下がるのは《致命的御愛嬌》という事で。

デッキ

1 否定の契約 (AKR) 73

1 天上都市、大田原 (NEO) 271

4 コジレックの審問 (STA) 31

4 よろめく怪異 (HBG) 167

3 命取りの論争 (HBG) 150

1 ジュワー島の撹乱 (ZNR) 64

1 ストーム・ジャイアントの聖堂 (AFR) 257

3 かき消し (SNC) 49

3 旋風のごとき否定 (STA) 23

3 ヴェールのリリアナ (DMU) 97

3 しつこい負け犬 (SNC) 97

2 真っ白 (STX) 72

3 碑出告と開璃 (MOM) 228

3 ファイレクシアの抹消者 (ONE) 105

2 爆発的特異性 (NEO) 140

1 目玉の暴君の住処 (AFR) 258

1 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278

4 清水の小道 (ZNR) 260

4 闇滑りの岸 (ONE) 250

3 難破船の湿地 (MID) 267

3 マナの合流点 (JOU) 163

2 冠雪の沼 (KHM) 281

1 ボジューカの沼 (WWK) 132

2 ゾフの消耗 (ZNR) 132

3 オークの弓使い (LTR) 103

サイドボード

3 覆いを割く者、ナーセット (WAR) 61

1 絶望招来 (NEO) 101

2 巻き込み (SIR) 57

1 思考囲い (AKR) 127

2 不憫な悲哀の行進 (NEO) 111

1 覆いを割く者、ナーセット (WAR) 61

2 絶望招来 (NEO) 101

3 ギックスの命令 (BRO) 97

【2023秋号八月分】第五回戦 恐慌 Uncommon Low Skirmish -珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

熱狂の七月三回戦から二十一日が過ぎた。

それは、あまりに途方もない、次のSkirmishに十分すぎる時間だった。

その日、Junは業務で出張のため、錦糸町のいつものパブに十七時過ぎに集合した。

先に入店していたShoはこの日は暑いからとビールを、Junも同じ理由でシードルと黒ビールのハーフ&ハーフを買って着席。

【八月一回戦第一試合】

先攻Junは初手キープ、後攻Shoもキープ。

黒の両面土地から《よろめく怪異》、Shoもこのクリーチャーの厄介さを知っていた。

死亡誘発能力で、対象のクリーチャーに-1か、宝物トークンの生成かを選べるのだ。

ターンもらってSho、部族指定をクレリックにして土地を出し、《月皇の古参兵》召喚。

他クリーチャーの召喚で1点ライフ回復、死亡しても墓地から再度召喚し直せるという、こちらも厄介な一マナクリーチャーである。

Jun、三ターン目に《ヴェールのリリアナ》、四ターン目に《ファイレクシアの抹消者》とお手本の様な展開。

しかしながらShoも四ターン目の返し、《月皇の古参兵》が二体いる状態で《祝福されし者の声》を召喚、+1カウンターが2つ乗って4/4のパワー・タフネスとなっている。

さらに、Junの抹消者に《次元の撹乱》をエンチャントし、これを完全に無力化してしまう。

そのままJun、為す術なく敗北。

Shoは《太陽冠のヘリオッド》までも戦場に出していた。

これでも双方、デッキぶん回りの結果である。

【八月一回戦第二試合】

先攻Jun、《コジレックの審問》による手札破壊を初手から二ターン連続で決め、さらに《オークの弓使い》を三連打、《ファイレクシアの抹消者》も戦場に出すなど大攻勢。

しかしながら、Shoの《太陽冠のヘリオッド》により絆魂の支援を受けた《光明の幻影》がしぶとくライフ回復を繰り返し、逆転負け。

白単ヘリオッドの強烈さが光った。

二試合連続、デッキぶん回り。

そのどちらともJunが一歩及ばなかったという結果である。

【八月二回戦第一試合】

先攻Sho、平地セットから《魂の管理人》、《月皇の古参兵》、《太陽冠のヘリオッド》、《婚礼の発表》と毎ターン展開していく。

後攻Junは先月の赤緑デッキ、初期手札はビートダウンもコントロールも狙えるのだがクリーチャーを展開していく流れに判断(ここで土地破壊路線に舵を切っておくべきだった)、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》から《無謀な嵐探し》と殴りつつ、《古えの遺恨》二枚を捨てて《ナヒリの怒り》を《魂の管理人》と人間トークンに撃ち込む(これも早計な判断だったと思われる)。

Shoはこの後、《スクレルヴの巣》や《セラの模範》などを召喚し、自陣にクリーチャーを呼び込むことで「ライフ回復→ヘリオッドの能力誘発」を計り+1/+1カウンターを増殖する盤面を強固にしていく。

Junは粘るのだが、Sho陣営にクリーチャートークンたちが大量生産され、十五分を越す長丁場を押し切られてしまう。

双方理想的な初期手札の様だったがJunの判断ミスで今月のULSにShoが王手をかけた。

【八月二回戦第二試合】

先攻Jun、《辺境地の罠外し》、《不吉な首領、トヴォラー》、《大いなる創造者、カーン》と毎ターン展開。

後攻Sho、《月皇の古参兵》、《スクレルヴの巣》、《祝福されし者の声》と展開。

ここはJun、《トヴォラー》で強気に殴りに行き、《祝福されし者の声》をチャンプブロックさせることに成功、《カーン》からは-2能力で《液鋼の塗膜》をサーチ。

ターンもらってSho、《次元の撹乱》を《カーン》にエンチャントすることで能力を封じる。

中盤に差し掛かった盤面は夜

Jun、《激情の罠破り》、二体の《執拗な仔狼》のうち二体目は強化されている、《液鋼の塗膜》、無力化された《大いなる創造者、カーン》はこのターンに二体目を召喚する事で交換されている。

Sho、《スクレルヴの巣》とそれにより生み出されたファイレクシアン・ダニトークンが四体、《月皇の古参兵》、《魂の管理人》。

双方手札は一枚ずつ。

ここでJunが仕掛ける、《液鋼の塗膜》で《スクレルヴの巣》をアーティファクトに変えて《激情の罠破り》が単独で攻撃、これにより《スクレルブの巣》は破壊される、《カーン》の能力で《ワームとぐろエンジン》を手札に。

Sho、この展開を打開できるカードを引き込めず、次第々々にリソースが尽きていく。

この試合は十五分弱となったが、Junが勝利。

【八月二回戦第三試合】

Jun、マリガンを忌避した反動で土地ばかりの逆事故、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》以外にクリーチャー展開出来ず。

一方でShoは理想的な流れでどんどん盤面に布陣していく。

五分かからずShoの勝利。

「心の安定を早くに与えてくれてありがとう!」

とは勝者の言。

だが、Junの心も晴れていた、真正面からぶつかった、ならば結果はどうでも良いのだ。

次月のデッキは決まっているのだった。

【2023夏号】糞Jun 今月のHustleデッキ#01【キ刊TechnoBreakマガジン】

糞Jun

 みんなHustleしてるかい?糞Junだ。

 このコーナーでは、俺たちがMtGアリーナでバトルする『Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-』で活躍した各月のデッキを詳しく紹介していくぞ。

 食物連鎖の頂点に位置したと勘違いしがちな俺たち人類は、全般的に環境破壊を趣味の中心に据えて日々の生活を一喜一憂エンジョイライフしているよな!そんなわけで、俺は土地破壊を軸にしつつ優良クリーチャーで殴りに行く、ビートダウンとコントロールの良いとこ取りみたいな赤緑デッキを組んだ。七月の勝負では全週で一貫して使用して、Shoの最強デッキたちに辛くも勝利をおさめることができたのは記憶に新しいんじゃないだろうか。

 デッキ名『完成化されたSho』

 まずこのデッキに無くてはならないのはこれ、《液鋼の塗膜》だ。こいつはタップするだけで、パーマネントを何でもアーティファクトに変えてしまう2マナのアーティファクト。2ターン目に出して、3ターン目に《古えの遺恨》をアーティファクト化した対戦相手の土地に打ち込めば《石の雨》と同じムーヴが可能だ。さらに、4ターン目にもフラッシュバックで土地破壊ができるから、相手からすれば非常にイヤらしい展開だよな。

 この裏パターンとして、2ターン目に《辺境地の罠外し》を召喚するってやり方も見逃せない。返しのターンに対戦相手が何も動かなければ、3ターン目に戦場が夜になって《激情の罠破り》に変身!第一メインフェイズに《液鋼の塗膜》を出して即起動すれば、3/3が殴りに行くオマケでアーティファクト化されたパーマネントが破壊されていく。

 夜が昼になるためには、自分のターン中に2つ呪文を唱える必要があるから、序盤から土地が止まるともう手の施しようが無くなるのはULS七月二回戦第一試合で展開された通りだよな。実はこのデッキ、赤緑はクリーチャーの除去手段がダメージに頼りがちになるから、対戦相手の《ファイレクシアの抹消者》対策も兼ねてこの構成にしてあるのがHustleポイント高めと言えよう。

 ここでデッキ名の『完成化されたSho』に対応するプレインズウォーカーを紹介しよう。《大いなる創造者、カーン》だ。コイツは、+1能力でアーティファクトをクリーチャーに出来るんだが、その際のパワー/タフネスはそのアーティファクトのマナ総量に等しい。つまり、0マナの土地を《液鋼の塗膜》でアーティファクトにして、Shoことカーンの能力を起動すれば、毎ターン対戦相手の土地を破壊し続けることが出来るってわけ!野良試合でこれをかまされた時には戦慄したと同時に垂涎だったね、「俺も使うんだ!」ってさ。

 コイツの-2能力には、なんとサイドボードから好きなアーティファクトを手札に加えられるというものがあるので、メインに《液鋼の塗膜》3枚、サイドに1枚、さらに《大いなる創造者、カーン》をメインに4枚投入することで、キーカードの《液鋼の塗膜》を実質7枚体制で構成してあるぞ。さらに、メインクリーチャーは3マナ域までの軽量なのしかいないので、フィニッシャ―として《根導線の融合体》、《ワームとぐろエンジン》、《ファイレクシアの肉体喰らい》、《街並みの地ならし屋》、《瞬足光線の大隊》といったアーティファクトクリーチャーを各1枚ずつサイドボードに控えさせ、都度状況に応じて手札に持ってくることができるから、長期戦も視野に入れられてHustleだぜ。

 Shoに見立てたカーンを、俺の意のままに操って、対戦相手に土地破壊で嫌がらせしたりブン殴ったり、重量級パーマネントも簡単に除去したり・・・まさに槍対砲台だよな!

 それじゃあ、メインクリーチャーを見ていこう。種族は狼で5種類、どれも4枚差しだ。

 まずは唯一の1マナ枠、と言ったらもうだいたいコレしか無いかな、《執拗な仔狼》。後続のクリーチャーに+1/+1、トランプル、警戒を一挙に与えてしまう頼もしい、相手にとっては嫌らしいヤツだ。視点を変えるって重要だよな!環境問題とかね!

 後続の2マナクリーチャーには先ほども紹介した《辺境地の罠外し》。1マナと自身の生贄でアーティファクトかエンチャントを破壊できるのも、状況次第で即戦力だ。序盤から戦場が夜になるってことは、相手がパーミッションか事故ってでもない限りは難しいんだけど、手札初手の様子を見て3ターン目から積極的に土地破壊につなげたい。

 もう一体の2マナクリーチャー、強化するならこっちが本命だなってのが《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》!2/2先制攻撃持ちだが、攻撃が通れば対戦相手の山札からカードをランダムで一枚引っ張ってこられるのがHustle!夜になって変身すれば、パワー・タフネスこそ2/2のままながら、先制攻撃が二段攻撃になるから、引っ張ってこられるカード枚数も二枚になってHustle!Hustle!!《執拗な仔狼》から付与されるトランプルも、対戦相手へのダメージを通しやすくしてくれるから実に良い。得られたカードは、限定的とは言え実質的に自分の手札に加わるようなものだから戦術面に幅が出るし、プレンインズウォーカーを引っ張ってこられればスゴクイイゾ。ま、それがあるから、大抵は2ターン目に出てもその返しで除去されちゃうんだけどな!そのためにも四枚挿しって大事だね。

 さて、赤緑狼デッキで3マナと言ったら、これはもう《不吉な首領、トヴォラー》だよね。狼や狼男が対戦相手に戦闘ダメージを与えるたび、手札を一枚ずつドローできるって、やりすぎじゃね?3ターン目にコイツを召喚してから戦場に出ていた他の狼で強気な攻撃をすると、たいがいは相討ちを嫌って素通しさせてくれる事が多い。そして夜になれば、3/3から4/4にサイズアップしつつ、赤緑Xマナで対象の狼や狼男にターン終了時まで+X/+0の修正を与えると同時にトランプルを付与するから、攻撃が通りやすくなってドローにつながる。

 トヴォラーの能力で誘発するドローを活かしたハンドアドバンテージは《ナヒリの怒り》のコストを補填する事が出来るので、クリーチャー同士の殴り合いを打開するポテンシャルも秘めているね。《ナヒリの怒り》は3マナの火力呪文だけど、対象を一つ取るために手札を一枚捨てなければならず、その捨てたカードのマナ総量が与えるダメージになるから、対象を多くとるほどにダメージ量も上がっていく。ここで積極的に捨てていきたいのが、ダブついた《大いなる創造者、カーン》や伝説のクリーチャーたち、さらにフラッシュバックを持っている《古えの遺恨》だ。『衛星軌道からの核攻撃』を済ませた焼野原を人狼の群れが跋扈する様は、ULS七月二回戦第三試合の流れを決定付けたよな。

 そして、最後に紹介するのは《無謀な嵐探し》!自身のみならず後続のクリーチャーたちも速攻付与に加えてパワー修正、夜に変身していればトランプルまで与えてしまうHustleな相棒だ。身も蓋もない話すると、MtG Wikiで見かけて「これだ!」ってなったよね。それからはもう芋づる式に《執拗な仔狼》や《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》のシナジーも見つけちゃってね、前任のレア人狼たちを軒並み放牧しちゃったもんさ。飼っている動物を棄てるのは犯罪です!覚えておこうな。

 さて、この人狼デッキが円滑に展開できるためにはマナ基盤が重要だけど、このデッキで勝てないとULS三連敗しちゃうからレアのワイルドカードで二色土地いっぱい交換したよ。このデッキの影の主役はこのレア土地達だね(笑)

 Shoをして「未だに対策が練れてない」と言わしめた『完成化されたSho』をご紹介した。実はこのデッキの前段階として、完全ビートダウンの赤緑人狼デッキと、パーマネント破壊に特化した液鋼デッキがあったんだ。前者は《群れの希望、アーリン》や《結ばれた者、ハラナとアレイナ》で爆発力も持久力も備えていたんだけど、クリーチャー並べて殴るだけってのが個人的にHustleじゃないなと思って不採用。後者は5月に採用した初期バージョンで所々致命的な欠陥があったのを、7月に再調整したこのデッキで参戦したってわけ。結果的にデッキ三つ分くらいのワイルドカードを使う羽目になって手痛かったけど、良いとこ取りは出来たし勝負にも勝てたし、エルドレイン風に言えば《めでたしめでたし》かな。早くパック空けて《ネクロポーテンス》引き当てたいぜ!

それじゃあ、刻一刻と変わる環境の中でKeep hustle!It becomes night!

デッキ

4 指名手配の殺し屋、ラヒルダ (Y22) 42

3 液鋼の塗膜 (BRR) 28

4 大いなる創造者、カーン (WAR) 1

4 執拗な仔狼 (Y22) 56

4 辺境地の罠外し (MID) 190

3 冠雪の森 (KHM) 285

4 不吉な首領、トヴォラー (MID) 246

4 古えの遺恨 (ISD) 127

4 銅線の地溝 (ONE) 249

4 岩山被りの小道 (ZNR) 261

4 カープルーザンの森 (DMU) 250

2 落石の谷間 (MID) 266

1 根縛りの岩山 (XLN) 256

1 隠れた茂み (AKR) 330

1 踏み鳴らされる地 (RNA) 259

1 奔放の神殿 (THB) 244

3 タミヨウの保管 (NEO) 211

4 無謀な嵐探し (MID) 157

2 冠雪の山 (KHM) 283

3 ナヒリの怒り (SIR) 171

サイドボード

1 液鋼の塗膜 (BRR) 28

1 街並みの地ならし屋 (BRO) 233

1 ワームとぐろエンジン (BRR) 63

1 瞬足光線の大隊 (BRO) 165

1 影槍 (THB) 236

1 ファイレクシアの肉体喰らい (BRO) 121

1 根導線の融合体 (BRO) 203

【2023夏号】第四回戦 突貫 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

7/1

6/17に終えた闘いから、およそ半月と言う長い長い時間が過ぎた。

その日は、変則的に駒込に集合し、広場の椅子に座ってのデュエルである。

コンビニの缶ビールで乾杯。

今月のUncommonガール

【七月一回戦第一試合】

先攻はその日もShoだった、少年の日には思いもしなかったが、つくづくこのゲームは先攻有利だと思われる。

Junは一度マリガンするものの手札が弱い、Shoは二度目のマリガンをするか否か長考の末一度で決断。

黒緑の二色土地をアンタップインし、《ファイレクシア病の甲虫》を召喚、コイツは攻撃が通るほどにデッキ全体の毒性持ち昆虫の感染力が増加して行く。

Shoはまたも毒デッキである。

土地もクリーチャーも伸び悩むJun、Shoが展開する《ファイレクシア病の甲虫》二体と《バルターズゲートのクライドル》へ《ナヒリの怒り》を打ち込むがハンドアドバンテージは大きく損失。

Shoはその後もクリーチャーを引き込み、《グリッサ・サンスレイヤー》、《敬慕される腐敗僧》、《頭蓋穿ちの虻》と順調に召喚、虻は甲虫の能力により既に毒性3にまで増加されている。

これにJun、毒性無しのグリッサを除く二体に再度《ナヒリの怒り》を打ち込む。

しかしながら、その後もSho、立て続けに《頭蓋穿ちの虻》を二体召喚、飛行を持つ毒性3を止め切れずにJun敗北。

《バルターズゲートのクライドル》も《頭蓋穿ちの虻》も緑青のクリーチャーだ、Shoは黒緑青の三色毒デッキを組んで来ていた。

【七月一回戦第二試合】

Sho《頭蓋穿ちの虻》二体、Jun《嵐蓄積の斬鬼》《激情の罠破り》で双方ノーガードの殴り合い。

Junは赤緑の人狼デッキを持ち込んでいる、早くて重いクリーチャーを揃えてあるし、五月の赤緑デッキの不備は解消してある。

Shoライフ残り6、Jun毒カウンター五の状態。

Junからの二体をSho、《敬慕される腐敗僧》と一体の《頭蓋穿ちの虻》でチャンプブロック。

返すターンで《荒廃のドラゴン、スキジリクス》に速攻を付与して虻と共にアタック、一度に毒カウンターを五つ与えてShoが奇襲的勝利。

「『アンクル・リファイアー』ジジイ再失業って意味だ、《牙持ち、フィン》のジジイもいねえぜ。」

満を持して人狼部族で揃えたデッキが完敗を喫し、Junは苦々しい感情と同時に、自分自身はやり切ったのだと言う、憑き物でも落ちたかのような気分だった。

毒デッキはやはり下らないとも思っていたのだが。

「今月、まさか双方がリメイクデッキでぶつかるってのがウケるな」

勝者のSho、余裕の発言である。

【七月二回戦第一試合】

勝ち筋を見出したいJunと、この週で決着させたいSho。

いつもの錦糸町82エールハウスにて、ビールとハイボールで乾杯。

この日、Shoは間違いなく現在の手持ちで最強と言える、先週持参した『アンクル・リファイアー』こと黒緑青毒デッキで連勝を狙ってくるはずだった。

それに対抗できる手持ちはJunに何がある?

初戦の白青黒の三色デッキは三色の捻出に難があるのと、毒の速攻に追いつけないかもしれないと言う懸念があった…。

先攻Sho《敬慕される腐敗僧》、後攻Jun《執拗な仔狼》それぞれ召喚。

二ターン目Sho《バルターズゲートのクライドル》を召喚、腐敗僧でのアタックは仔狼でブロック。

「え、オイオイオイ」狼狽するSho、《バルターズゲートのクライドル》は攻撃クリーチャー一体がブロックされなくなると言う、毒デッキにとっては嬉しい能力を持っていたのだが、この能力に2マナ必要になっていたらしいのである。

滅多に無い事だが、野良試合と二人のバトルとで仕様が異なるという事が、あるにはある。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚、仔狼の効果で+1、警戒、トランプルカウンターが追加され、二ターン目に出るクリーチャーとしては過剰なスペックとなって場に出る。

三ターン目、Shoは土地を出し、クライドルの能力で2マナ支払って、腐敗僧の攻撃を通すが、残す土地一枚で出来ることは無かったのか呪文が唱えられる事なく、戦場は夜に。

ここからJunのギミックが始動、《液鋼の塗膜》を場に出し、Shoの土地《マナの合流点》をアーティファクトに指定、夜となり裏面に変身した《激情の罠破り》が攻撃し《マナの合流点》は破壊される。

五月の赤緑デッキにも搭載されていたギミックである、その時は最速でギミックが回転しても一歩及ばなかったが。

ターンもらってSho、手札から《マナの合流点》を出し、既存の土地二枚から《頭蓋穿ちの虻》を召喚、軽量クリーチャーで固めた速攻デッキの強みである。

だが、夜が明けるためには自分のターンで二つの呪文を唱える必要がある、土地を破壊してマナ基盤を拘束していくのは有効だった。

毒カウンターを十貯めさせるかその前に殴り切られるか、Shoのクリーチャーは軽量なのだがパワーが貧弱、一方で《激情の罠破り》は今や4/4、警戒、トランプル、攻撃するたびにアーティファクト破壊と言う、殴るも壊すも傍若無人のクリーチャーに仕上がっていた。

ここでJun、《深夜の災い魔、トヴォラー》を召喚して罠壊しでアタック、Sho側に立っている《マナの合流点》がアーティファクト化されてまたも破壊、さらにクライドルにチャンプブロックされたもののトランプルにより一点のダメージがSho本体に通ってトヴォラーの能力が誘発し一枚ドロー。

強固なロックが完成してしまった、トヴォラーは自陣に狼が三体居れば自動的に夜を迎えることが出来るので、Junが展開するクリーチャーは毎ターン軒並み強力な裏面に変身する事となる。

ターンもらってSho、森を出し《伝染させる吸血者》を召喚、飛行を持つ《頭蓋穿ちの虻》が攻撃し毒カウンターをJunに貯める。

ターンもらってJun、土地を出し《嵐蓄積の斬鬼》を召喚、能力により自身に速攻付与して5/4トランプルとなる、人狼三体でアタック。

Shoはトランプルを持たないトヴォラーを腐敗僧でチャンプブロックするも、応じてトヴォラーの能力起動、自身にトランプルを付与して、Shoに合計12点ダメージ、さらにJunの手札へ三枚ドロー。

この時点でSho残りライフ2で手札二枚、Jun残りライフ14と毒カウンター二つで手札六枚、土地はShoの二枚に対してJun五枚で差は歴然だった。

このままJun勝利。

【七月二回戦第二試合】

Sho先攻、《ファイレクシア病の甲虫》召喚。

このクリーチャーは攻撃が通るたびに、全領域の昆虫クリーチャーの毒性を増やして行くと言うものだ。

Junは土地を場に出して一ターン目を終えるが、以降召喚していく人狼たちはことごとくShoの除去呪文により破壊され続けて行く。

ブロッカーが居ないままに甲虫の攻撃が何度も通り、Shoの四ターン目には、毒性4になった甲虫に加え、《頭蓋穿ちの虻》も毒性4で召喚されてJun封殺。

Shoのデッキに対して有効に立ち回るためにどうすべきか示唆する貴重な資料となった。

つまり、先攻一ターン目に一マナクリーチャーを召喚しておかねばならないと言うことである。

【七月二回戦第三試合】

先週に続き、Shoのデッキの爆発力に苦戦必至のJun、慎重な展望で仕掛ける必要がある。

Jun先攻、土地を出して終わり。

Sho後攻、《敬慕される腐敗僧》召喚。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、腐敗僧アタックで毒カウンター付与。

三ターン目Jun、三枚目の土地を出し再度《辺境地の罠外し》を召喚。

ターンもらってSho、除去呪文は手持ちに無いのか《頭蓋穿ちの虻》召喚。

ターンもらってJun、ドローエンジンとなる《不吉な首領、トヴォラー》召喚、罠外し一体で強気のアタックがブロックされず一枚ドロー。

四ターン目Sho、《頭蓋穿ちの虻》二体目を召喚、さらに地上クリーチャーは最早不要と言わんばかりに腐敗僧を追加コストの生贄にして《新生化》を唱える。

これは生贄にささげたクリーチャーのマナコストより一つ大きなクリーチャーを探し、+1カウンターを置いた状態で戦場に出すという呪文だ。

場に出てきたのは、三枚目の《頭蓋穿ちの虻》、これらの攻撃が飛行によって素通りし続けるならば残り三ターンでJunの毒カウンターが十を超えてしまう。

ターンもらってJun、《ナヒリの怒り》をShoの虻三体を対象にして一斉除去、そのために消費した手札は合計四枚なのだが、続けて人狼二体でアタックしトヴォラーの能力により手札二枚を補填、結果的に二対三交換でJun側のアドバンテージ、いや《新生化》のコスト込みなら二対五交換か。

ターンもらってSho、トヴォラーを《胆液まみれ》で除去。

ターンもらってJun、他に何も無い戦場を《辺境地の罠外し》でアタック、呪文を唱えなかったため夜になる。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、これにより夜の戦場に土地以外は何も無くなり、新たな局面に突入か。

ターンもらってJun《嵐蓄積の斬鬼》を召喚し、速攻付与でアタック。

この時点でSho残りライフ6で手札一枚、Jun残りライフ18と毒カウンター3で手札四枚。

ターンもらってSho、土地を出すのみでエンド。

ターンもらってJun、《残忍な無法者、ラヒルダ》を召喚、速攻を付与して二体でアタック。

先の読めない攻防が渾然としていたものの、最後の最後にはハンドアドバンテージを大きく保持したJunが危なげなく勝利した。

「君、今日の靴、洒落てるね。おろしたて?」

「ほ、君よく気付くね。こないだネットで安売りしてたからすぐさま買ったのよ」

Shoの足元は黒と赤の皮を組みわせた靴に包まれていた。

「デッキカラーの黒緑じゃなくて、黒赤を履いて来ちゃったから負けたのかぁ〜」

「君、どうせ来週もその毒デッキで来るんでしょ」

【七月三回戦第一試合】

新生赤緑デッキで何とか連敗を防いだJun、目論見としては最終の三回戦こそ同デッキで激突し雌雄を決する事になるはずだった。

先攻Sho、山から《僧院の速槍》で速攻アタック、六月の赤単で殴り込んできたのだ。

序盤は双方一ダメージずつの殴り合いから、Junの《大いなる創造者、カーン》に対し、Shoの《ウラブラスク》が睨み合うも、これはターンもらってJunがすぐに《液鋼の塗膜》から《古の遺恨》の万能除去で対処。

Sho負けじと《焦熱の交渉人、ヤヤ》から果敢持ちトークン一体生成、ターンもらってJun《根導線の融合体》召喚、これをターンもらってSho《静電気の放電》と《火遊び》で除去して果敢持ち二体から合計6点分のアタック。

体力差はSho14対Jun5、Sho側には《僧院の速槍》と《焦熱の交渉人、ヤヤ》が生成した果敢持ちトークン二体で合わせて三体。

瀕死のJunは《古の遺恨》を用いたギミックで《焦熱の交渉人、ヤヤ》を除去、さらに《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》と《辺境地の罠外し》を召喚しもとからの《執拗な仔狼》と合わせて三体のブロッカーを準備、そして《大いなる創造者、カーン》の忠誠度カウンターを使い切り《ファイレクシアの肉体喰らい》を手札に加えてターンエンド。

Shoは《僧院の速槍》とプレインズウォーカー《勝負服纏い、チャンドラ》を召喚、場に出ている果敢持ちクリーチャー四体がパワー2で総攻撃、Junは展開済みの三体中二体を潰されるも何とかブロックで凌ぐ、残りライフ2、《火遊び》一発でゲームが終わる。

ターンもらってJun、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》は攻撃させずブロッカーとして立たせておき、カーンの能力で引っ張ってきた《ファイレクシアの肉体喰らい》を召喚してエンド、7/5絆魂持ち、一ターン何も起きなければ体力的には逆転できる。

Shoは《勝負服纏い、チャンドラ》の+1能力を起動し、ライブラリーの上を公開し呪文を唱えたが、Junに直接ダメージを与えられる火力ではなく《ウラブラスク》を場に出してエンド。

「グッ、これじゃねぇっ!」

《ウラブラスク》は《辺境地の罠外し》を召喚後即生贄に捧げて除去、肉体喰らいでアタックし双方のライフはSho7対Jun9となり、そのままJunの逆転勝利。

十六分を超える長丁場となった。

【七月三回戦第二試合】

Sho先攻、山から《僧院の速槍》が速攻でアタックしてエンド。

Jun後攻、二色土地をアンタップインし《執拗な仔狼》を召喚。

双方、理想的な一ターン目。

三ターン目の盤面は、

Sho、《僧院の速槍》、《勝負服纏い、チャンドラ》

Jun、二体目に召喚され警戒・トランプル持ちになった《執拗な仔狼》、さらに警戒・トランプル持ちの《無謀な嵐探し》。

直後にSho、かなり早い段階で《ウラブラスク》を召喚したものの、ターンもらってJun《大いなる創造者、カーン》を追加コストで捨てた《ナヒリの怒り》を撃ち込んで除去、さらに二体による攻撃でチャンドラも撤退。

頼みの綱のプレインズウォーカーがテンポ良く出ないとShoの展開は辛く、二体目の《僧院の速槍》や単体火力だけでは手札が息切れしてしまう。

身動きが取れないShoに対し、Junは《大いなる創造者、カーン》から《液鋼の塗膜》を交えた土地破壊ギミックも作動し始める頃に辺りは夜となり、そのまま快勝。

今月のUncommonガール

【2023夏号】第三回戦 波乱 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

6/3

嵐の翌日、錦糸町82はテラス席が閉鎖されていた。

先に店舗入りしていたJunは82エールで喉を潤していたが、後から来たShoとは乾杯だけして早々にゲーム起動。

何せ、一日千秋の思いで迎えた決戦の初戦だからだ。

今月のUncommonガール

【六月一回戦第一試合】

先攻Sho、山から《僧院の速槍》を召喚し速攻アタック。

この瞬間、白単低速コントロールのJunは敗北を覚悟、前回のゴルガリ・ジジイに続いて又してもアグロなデッキを組んで来たと言う事に腹立たしさすら感じていた、勝負を放棄して安易な戦術を取りやがる、とも。

Shoは順調に《勝負服纏い、チャンドラ》が三ターン目に場に出るが、Junサイドには《永岩城の修繕》くらいで展開が遅すぎる。

さらにSho、四ターン目には《焦熱の交渉人、ヤヤ》を召喚しプレインズウォーカーが並ぶ、Junは投了ムードでなるべく手の内は明かさずに敵の展開を見極めておきたい、《ドゥーム・スカール》を予顕してしまうのもバレバレで無意味だった。

果敢持ちクリーチャーを並べたShoが終始余裕で勝利。

【六月一回戦第二試合】

Jun先攻、マリガンで開始。

四ターン目、後攻のShoが仕掛けた召喚は《ウラブラスク》、ファイレクシアの赤の法務官。

Junの盤面は《エスパーの歩哨》一体に《永岩城の修繕》を二枚張っている、Sho側は《ウラブラスク》と早くから召喚してあった《僧院の速槍》、ライフは15対20。

応じてJun、先ずは《永岩城の修繕》の伝承カウンター三つ目の効果により3/4トークン一体生成、次いで二枚目の永岩城の二つ目の効果により《エスパーの歩哨》を手札から捨てた上で場に出す、そして召喚《エリシュ・ノーン》。

「うぉぉ、法務官対決かよ、熱ちい!」

一本先取のShoは余裕があるのか勝負を楽しんでいる。

ウラブラスクが第二面に変身できる算段があるのがShoの余裕の根拠だった。

無謀なる衝動》ウラブラスクの能力が誘発しJunに1点、《静電気の放電》はJunに4点と誘発1点、《稲妻の一撃》これは《エリシュ・ノーン》に3点とJunに誘発1点、これらによりJunの残りライフは8。

しかしながら、《エリシュ・ノーン》も負けてはいない、何らかの発生源がダメージを与える度に1マナか2点ライフを要求する、Shoは《ウラブラスク》変身のためにマナの支払いは拒否し続けたため、五回の支払い要求で合計10点のライフを失い残り10。

《ウラブラスク》第二面の英雄譚《大いなる業》に変身、Junとコントロールする各クリーチャーに3点のダメージ、Junが展開していた永岩城の3/4トークン以外全て焼き払われる。

しかし、《エリシュ・ノーン》の断末魔でクリーチャー四体とJun本体、再度五回の支払い要求が誘発。

Sho、残す山一つからの支払い以外、8点のライフを失って残り2。

これでJun残りライフ5対Sho残りライフ2。

しかし、このゲームは先に相手のライフを0にした方が勝つ、この程度は安い支払いなのである、双方にとって。

Sho、一時的に4/5に膨れた《僧院の速槍》でアタック。

「あっ!違う!!待った、間違えた!!」即座にShoが悲鳴を上げる。

その通り、Junはこの攻撃をブロックせずとも残りライフ1、返すターンにブロッカーのいない状態で永岩城トークンで殴れば勝ちなのだ。

法務官同士の意外な友情コンボ、勝因は手癖。

【五月一回戦第三試合】

もつれ込んだ最終戦、理想通りの展開で応酬すればまだJun側にも望みはありそうだが。

先攻Sho、四ターン目に《焦熱の交渉人、ヤヤ》、前のターンにJunは《婚礼の発表》をエンチャントした程度なので分が悪い。

さらに《ウラブラスク》が召喚される、理想的な展開はSho側にあった。

Jun、手札は悪くないのだが、低速コントロールとしての展開の理想であってやはり相手側が手に負えなくなりつつある。

手札にある《ドゥーム・スカール》をいまだに予顕せずにいるのは祈りとも諦めとも言えるのだが、生憎Shoが次ターンからインスタントを連続で唱えて《ウラブラスク》の変身が間に合い、状況を覆せないままJun敗北。

「因みに、今回のデッキ名は『フォーマー・ワークプレイス』、前の職場って意味だ」

Shoが嬉々として言い放つ。

Junのデッキ名は『赦し』、先月の負けを雪辱するために憎悪を込めた黒単を組んできたが、急遽白単に変更したためである。

【五月二回戦第一試合】

後がないJun対今週で決めたいSho。

Junには確信があった、前週の一回戦を終えて飲んでいる際、Shoがデッキのシステムを明かしたのだ、表面上は速攻デッキだが実質的な勝ち手段は《ウラブラスク》頼みなのだと。

何故手の内を明かすのか、それはSho自身が自分のデッキはイマイチだと認めているからではあるまいか。

間違いなく、この戦いにShoは先月の黒緑毒デッキのゴルガリ・ジジイこと『アンクル・ハイアー』で来るはずだ。

その読みは当たって、しかしあのアグロデッキに勝てるのか。

牙持ち、フィン》、《敬慕される腐敗僧》、《チーム結成》とShoのテンポはこれ以上ない良い動き。

一方、Junは《エスパーの歩哨》をフィンのチャンプブロックに当てざるを得ない。

Sho、MVP級クリーチャー《グリッサ・サンスレイヤー》を召喚し、盤上のクリーチャー数は三対零。

Junは何とか《ドゥーム・スカール》で一掃するも、返すターンでSho《死住まいの呼び声》を唱えフィンと腐敗僧を戦場に戻してそのまま勝利。

【五月二回戦第二試合】

Jun先攻、《エスパーの歩哨》、《獅子の飾緒》、《放浪皇》と順調に展開。

一方のSho、土地は問題なく伸びるのだが、クリーチャーの展開が無い、何とか《ミレックス》から毒性トークンを生み出す程度。

土地ばかり引く事故の続くShoをそのまま殴り続けてJunが勝利。

【五月二回戦第三試合】

混迷の二回戦、最終試合。

Jun、三ターン目に預顕した《ドゥーム・スカール》で二体除去。

Sho、返すターンで《グリッサ・サンスレイヤー》を再度召喚。

さらに次ターン《敬慕される腐敗僧》の召喚に対応してJun《行進》でグリッサを追放、Sho追加の《敬慕される腐敗僧》二体目も召喚。

この後、Sho長考。

Junの盤面には《エスパーの歩哨》とアンタップ状態の平地が四、Shoが腐敗僧二体でアタックすれば《放浪皇》による追放の可能性がある、長考の末一体の犠牲はやむなしと判断してアタック。

だがこの一体を、《放浪皇》の+1カウンターと先制攻撃を付与された歩哨で討ち取り、次のターンで残る一体を追放、Shoとしては二体を失う最悪の展開である。

Shoはミレックスからダニトークン生成、現在Junに毒カウンター三つ。

この後は、ミレックスからのダニトークン達との攻防で、《屍気の拝領》がエンチャントされたトークンからのアタックにより危うく八つまでの毒がJunに与えられたが、《エリシュ・ノーン》が即変身して何とか競り勝った。

【五月三回戦第一試合】

この日、Shoは今月初お披露目の『フォーマーワークプレイス』こと赤単ウラブラスクデッキ。

対するJunは、今月のコンセプト『赦し』こと白単ジャンクでは無く、先月完敗を喫したデッキ名未詳の赤緑で挑んだ。

双方土地を五枚並べて、プレインズウォーカー同士の勝負となったが、クリーチャーと除去のバランスが良いShoが終始押し気味で勝利。

群れの希望、アーリン》が5/5トランプルと化し、《勝負服纏い、チャンドラ》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》などに何度も突撃を敢行したものの、テンポ面での遅れを取り、状況を覆す事が出来ずJun敗北。

二ターン目にJunが出したキーカードの《辺境地の罠外し》が、取り敢えずの感覚で《火遊び》により除去されてしまったのには警戒しておくべきだったか。

さらに、《大いなる創造者、カーン》によりサイドボードから引き寄せた《先駆のゴーレム》三体が火力一発で連鎖的な除去を許してしまったことも、対戦相手のデッキを全く考えていない悪手であり、勝敗の分かれ目だったと言える。

【五月三回戦第二試合】

正体不明だったJunのデッキがブン回った。

あらかじめ出しておいた《液鋼の塗膜》で対戦相手の土地をアーティファクト化し、四ターン目に召喚したプレインズウォーカー《大いなる創造者、カーン》の+1能力により0/0のクリーチャーにして自滅させる。

このデッキのコンセプトは土地破壊が主軸、カーンをShoに見立てた『Shoの精神支配』デッキである。

Shoが戦場に出した四枚目の山がこのギミックで潰され、以降毎ターン土地が破壊されてゆく。

はずだった。

返すターンでShoの《ウラブラスク》が間に合い、呪文を三つ唱えて第二面へ変身。

一歩及ばずJun惜敗。

ブン回ったのはShoのデッキも同様だったのだ。

「もし今日のデッキが、今月の白のデッキだったら墓地が消されるから不安だったけど」

などと言って、さも良い勝負が演じられたかのような口振りで、上機嫌に言っていたShoだった。

Junは危うく、次月に携えて行く予定のデッキを取り下げて、別のデッキで参戦しかねないほどに怒り心頭だったが、五月に作成した赤緑何でも破壊デッキが接戦を制することが出来なかったのもまた事実。

敗因は様々にあるのだ。

今月のUncommonガール

【2023春号】第二回戦 圧倒 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

5/6

四月は二週で決着したため間が空いたが、待ちに待ったUncommon Low Skirmish第二回戦。

会場はお馴染み錦糸町82エールハウス、この日も十五時ぴったりに到着である。

Today’sのKOEDOビール青碧とハイボールで乾杯し、早々にゲーム起動。

今月のUncommonガール

【五月一回戦第一試合】

先行Sho、Jun赤と緑のバランスが良い土地四枚で手札キープ。

悶絶しているSho、マリガンを連発してまさかの手札三枚スタート。

「そのリスクは俺も負っている」冷淡に言い放つJun。

Shoランドセット、黒緑がアンタップイン。《多汁質の頭蓋住まい》を召喚。

『毒デッキか、読みが外れた…』Junはアグロ系デッキとの相性が最悪だった。

二ターン目、《屍気の拝領》をエンチャントした頭蓋住まいがアタック、Junは毒カウンターを一気に三つも与えられてしまう。

毒カウンターが十溜まると敗北だ。

Junは二ターン目に《辺境地の罠外し》を召喚、Shoからの二度目のアタックを通し毒カウンターは六つとなるが、場は夜になる。

三ターン目に《不吉な首領、トヴォラー》も召喚し、罠外しの攻撃によりワン・ドロー。

理想的な展開である。

Shoが召喚した二体目の頭蓋住まいは、Jun《削剝》で除去し人狼二体がアタック。

Sho残ライフ10で手札無し、Jun残ライフ18かつ毒カウンター七で手札七枚。

どちらかに決着がつく、その目前だ。

Sho、《敬慕される腐敗僧》召喚、頭蓋住まいがアタックして毒カウンター八。

ターンもらってJun、人狼二体でアタック。

だが、未熟過ぎるプレイングミス、トヴォラーの攻撃力を上げていればライフを丁度ゼロに出来たのだった。

しかも、返しのターン用にブロッカーを召喚せず、一体だけ除去しようとしても腐敗僧の能力で毒カウンターを得てしまう事になるため、このターンをShoに渡した時点でJunは詰み。

直前までデッキ調整をしていたため、柔軟なプレイングに慣れることができなかった痛恨の未熟さ。

【五月一回戦第二試合】

Jun先攻、マリガン。

巨竜戦争》でShoの毒性クリーチャー二体を除去するも、《グリッサ・サンスレイヤー》は殺し切れず、エンチャント破壊により巨竜戦争も早々に葬られる。

さらに、二体の《敬慕される腐敗僧》を連続で召喚された直後に《屍気の拝領》がグリッサにエンチャントされた事による誘発で八個目の毒カウンターを与えられてしまう。

そのまま毒性2を得たグリッサがアタックし、敗北。

無謀なる衝動》で引っ張って来た《辺境地の罠外し》を召喚せずに追放してしまうという未熟な失態が今回もあった。

やりたい事が出来ぬまま押し切られた形である。

Junの存在を賭けたデッキは封殺された。

Shoは意気揚々とデッキ名を明かす。

「《牙持ち、フィン》のアンクル・ハイアー、ジジイ採用って意味だ。四枚挿しなのに《チーム結成》でも引っ掛からなかったのはジジイに問題ありそうだがな」

「ゴルガリ・ジジイかよ」

Junの口元が苦々しく歪んだ。

【五月二回戦第一試合】

デッキ相性の悪すぎるJunはこの週、先月の三色デッキで参戦(勝ったとしても、別デッキの色の連続重複は禁じられているので、赤緑に戻す必要がある)。

対するShoはアンクル・ハイアーを引っ提げて参戦。

Jun、マリガン一回で土地三色揃う。

だがShoの様子がおかしい。

「ぐっ、ぐぬっ…」

先攻Sho、なんとマリガン連発の手札四枚スタートで黒緑の土地をタップイン。

だが、先週は似た様な状況で別デッキのJunに勝っている。

Junも土地を出してエンド。

二ターン目、Shoは満を持して先週不発の《牙持ち、フィン》を召喚。

ターンもらってJun、悪さをしそうなジジイに《不憫な悲哀の行進》で3点ダメージ(追加コストは《しつこい負け犬》)。

「ジジイッ!(by Sho)」

三ターン目にJun、《策謀の予見者、ラフィーン》を順調に召喚するが、Sho未起動の土地を動員し《シェオルドレッドの勅令》を唱える。

盤面には双方三つずつの土地のみ。

四ターン目もトップデッキしたラフィーンを召喚するが次ターンに《胆液まみれ》により除去される。

結果的に、かなり順調な土地の運びから召喚された《永遠の放浪者》が二段攻撃のトークンを生成し、ハンドアドバンテージの分が悪かったShoのクリーチャー展開が防衛しきれず決着。

【五月二回戦第二試合】

Jun、今回もマリガン一回で土地三色揃う。

先攻Shoはマリガン二回で手札五枚スタート。

Sho六ターン目には、たった今Junがトップデッキした《策謀の予見者、ラフィーン》を《シェオルドレッドの勅令》で撃墜するファインプレーからのアタックで合計七つの毒カウンターをJunに与えている。

テンポの良いアグレッシヴな展開でShoの押しが強い。

盤面はShoの《敬慕される腐敗僧》とジジイこと《牙持ち、フィン》、Junは招待カウンターが一つだけ乗った《婚礼の発表》のみ、チャンプブロック用のトークンは生成できるのが幸いか。

その後二ターン目に動き、Junがプレインズウォーカー《踊る影、魁渡》をトップデッキして召喚、+1能力で悪さしそうなフィンを一時的に無力化してからラフィーンが空中からアタック、さらに誘発する魁渡の能力でラフィーンを手札に戻して能力を追加使用、Shoの腐敗僧も一次的に無力化。

しかし、Shoの盤面には《グリッサ・サンスレイヤー》が駆けつける。

クリーチャー数だけで見ればShoが三に対し、Junは零。

Junは手札からラフィーンと、トップデッキした《しつこい負け犬》を召喚、最も厄介なグリッサを魁渡で無力化。

明くるターンにShoは焦れ、攻撃できないグリッサ以外でアタック。

接死持ちのフィンは負け犬で相討ち、腐敗僧はラフィーンが討ち取った。

これで双方のクリーチャーは一体ずつだが、Jun側にはプレインズウォーカーの魁渡がクリーチャーを無力化すべく立ち続けている。

この後はJunが《婚礼の発表》を計三枚もエンチャントし、魁渡による巧妙な無力化で場をコントロールし、まさかの逆転。

長丁場となったが、その場その場での引きが常にShoの先を行くJunの勝ちとなった。

【五月三回戦第一試合】

二回戦はJunの三色デッキ、テクノブレイクが安定感のある展開で勝利したが、同色の連続使用は強い制限があるため赤緑に戻す。

Shoは黒緑のアンクル・ハイアーで三度目の参戦。

三回戦にもつれ込んだ五月期、いよいよ決着。

先攻Sho、《敬慕される腐敗僧》、《牙持ち、フィン》、《グリッサ・サンスレイヤー》と三ターンで順に展開。

Junは三ターン目までは土地しか場に出せず、ようやく《不吉な首領、トヴォラー》を召喚。

返すShoのターンでグリッサ以外のクリーチャーによる攻撃、Junはトヴォラーでフィンと相打ちせざるを得ないのだが、直後の第二メインフェイズで二枚目のフィンが召喚されてターンエンド。

この時点での盤面は、Shoのクリーチャー三体に対して、Junのクリーチャーは無し。

Jun、四ターン目にプレインズウォーカーの《群れの希望、アーリン》召喚。

大マイナス能力で狼トークンを二体生成。

だが、次ターンのShoからの総攻撃では、二体のトークンは無駄死にさせるしかない。

この時点でJunの毒カウンターは七。

ターン貰ってJun、アーリンの能力起動後に二枚目のアーリン召喚。

強化された狼トークン二体を生成。

しかしながら、Shoのターンでは《敬慕される腐敗僧》二体目から、自陣の《牙持ち、フィン》へ《胆液まみれ》を唱えることで、腐敗僧の能力による毒カウンター二つと《胆液まみれの》増殖効果により十個目の毒カウンターがJunに渡りゲームエンド。

【五月三回戦第二試合】

Sho、《多汁質の頭蓋住まい》、《牙持ち、フィン》と順に展開し、《胆液まみれ》によるブロッカー除去と三ターンのうちにJunに毒カウンターを九つ与えるこれ以上ないほど理想的な流れ。

Jun、全体除去は手札に三枚もあるのだが、土地が一ターン間に合わず投了。

二分強で封殺と言う格好である。

コントロール色が強めでミッドレンジのJunの赤緑に対し、Shoのゴルガリジジイもとい「アンクル・ハイアー」の速攻毒カウンターデッキの完封である。

Shoはデッキの勝利に向けてプレイングミスは許されないという緊張に手を震えさせていた。

Junはデッキ名すら秘めたまま屈辱の怒りに震えていた、もうこうなればあの色で構築するしかないと決めて。

今月のUncommonガール

【2023春号】第一回戦 激突 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

4/1

二月の「ファイレクシア・完全なる統一」実装からちょうど二ヵ月。

いよいよ、Uncommon Low Skirmish第一回戦が始まった。

会場は錦糸町82エールハウス、大の大人が十五時の開店前に並んでいた。

キリンの生とブラウンエールで乾杯し、二杯目のジェムソンハイボールを購入してゲーム起動。


今月のUncommonガール

【四月一回戦第一試合】

Junマリガン、これが功を奏する。

Shoは早速、赤青の土地をタップイン。

「お前、イゼットジジイだろそれ!ww」

(イゼットジジイとは、Shoが開始初期の二月から愛用していた《静電式歩兵》を中核としたデッキ。赤の軽量火力や青のドローで、ジジイこと《静電式歩兵》や《くすぶる卵》を育てる。)

返しの二ターン目、順調に《くすぶる卵》を召喚。

一方で、Junの展開は

平地→黒の伝説の土地→青黒の土地をアンタップイン

と、まさかの三色デッキでShoを驚愕させる。

ここで《婚礼の発表》を貼り、以降三ターンに渡ってトークン生成路線へ。

その後は、Shoのババァこと《気まぐれな呪文踊り》や人間トークンなどを双方が除去し合うが、五ターン目にJun《策謀の予見者、ラフィーン》をトップデッキ、六ターン目に手札から《永遠の放浪者》へとつなげて快勝。

「ジジイ出されてたらどうなってたか分からんわ~」

「ここで俺のデッキ名、『ジジイ・ファイアー』だ。ファイアーには火力って意味と、解雇って意味をかけてるぜ」

「は?」

「このデッキ、もうジジイ居ねえぜ!」

まさかの《静電式歩兵》失業、Shoのデッキに勝ち目はあるのか・・・?


【四月一回戦第二試合】

序盤は丁々発止の除去合戦。

ターンをもらってJunが《漆月魁渡》を召喚、トークンを生成し毎ターンドローの方針が固まるが、フェイズイン後に即《稲妻の一撃》で魁渡が退場。

「アイツはな、Sho、お前に見立てて採用したプレインズウォーカーさ。そして」

まだ三枚しか出ていない土地から

「コイツはShunに見立てたPWだぜ!」

時を解す者、テフェリー》召喚、Junは前に見かけた際よりもコストが1減っていた事を二度見したが。

そう、Junのデッキ名はエスパーフレンズこと「ザ・テクノブレイク」本人に見立てた《放浪皇》は四枚積みだ。

その後の見どころは、Shoの《ゼロ除算》によるShunことテフェリーをバウンスしてから《マスコット展示会》という王道コンボ、この時点で土地の開きがShoの7枚に対しJunは4枚である。

つまり、手札を保持しているのは圧倒的にJunが多く、Shoは逆事故気味とも見れる。

3体のマスコットはテフェリーのバウンス、《放浪皇》のトークンと相打ちして残りは飛行2/1の一体。

そして「ジジイ・ファイアー」の大本命がShoの「ジジイ!」と言う掛け声と共に召喚される…《傲慢なジン》何でも彼はこの炭鉱採掘企業の二代目という設定のようであるが、5/4で登場した彼は早々に《冥途灯りの行進》により退場、「ジジイッ!(by Sho)」

潤沢な土地を活かし、トップデッキした《ミシュラの命令》により飛行2/1トークンが10/1になってワンパンチ、《放浪皇》も除去される。

しかしながらSho既に手札は尽きJunは手札6枚、ここから2枚目の《放浪皇》で飛行トークンを除去するも、今度はShoが今引きしてきたこれまた2枚目の《ミシュラの命令》により魁渡のトークン(居たの忘れてたでしょ)と共に《放浪皇》が除去される。

一瞬まっさらになった盤面だが、Junが《しつこい負け犬》&《策謀の予見者、ラフィーン》、次ターン《華やいだエルズペス》と一転攻勢。

「何か来い!」という断末魔の《選択》から2枚目のジジイこと《傲慢なジン》が8/4で登場するも、《虚空裂き》により丁寧に対処された、「ジジイッ!(by Sho)」

四月第一回戦はJunが難なく勝利。

Shoのデッキが不調というよりは、プレインズウォーカーのアドバンテージが強いと言う事か。

自分自身の存在意義を超え、バンドの在り方をデッキに体現させたJunは負けられない。


【四月二回戦第一試合】

4/8

翌週はShunメンバーの企画により、まだ明かされていない都内某所へロケがあるため、今日中にケリをつけたいJun。

そして、もう後がないSho。

定例の錦糸町82エールハウス。

Junのハンドは、《策謀の予見者、ラフィーン》以外全て土地でゴー。

双方順調に土地が並び、盤面上の展開に乏しくコントロールの色彩を強く帯びた試合、延びれば延びるだけデッキの勝ち筋を狙える算段が現実的になる。

事実、この試合には二十分費やされている(記事の分量も非常に多いです)。

開始七分で動き。

Shoはババァこと《気まぐれな呪文踊り》、土地は5枚。

Junのラフィーンは退場したが、Shunに見立てた《時を解す者、テフェリー》忠誠度4、《華やいだエルズペス》忠誠度6、《しつこい負け犬》が二体で片方が4/3警戒カウンター付与、土地七枚。

Sho、X=4全力の《ミシュラの命令》がテフェリーを直撃、そして6/1になったババァがブロックされる事無くエルズペスを粉砕、ソーサリー一枚でプレインズウォーカー2体を屠るナイスプレーに思わず「やるな!」。

返すJunのターン、トップデッキされた《放浪皇》で黙っていられぬとばかりに-2能力を発動し、Shoのババァこと《気まぐれな呪文踊り》を追放。

さらに2体の負け犬で計7点ダメージ、このクロックが続けばShoの命はあと2ターン。

だが、二回戦第一試合は未だ残り十分弱続く。

Sho、《くすぶる卵》召喚からX=3の《ミシュラの命令》で《放浪皇》と警戒持ちの《しつこい負け犬》を除去し、再びのダブルプレー。

しかし、そこは負け犬のしつこさで墓地からアタック、Junは今後ライフ2を支払う必要があるものの卵でブロックしきれない方の三点クロックとワンドローは保証されている。

この時点でライフはSho10対Jun18。

続くターンでSho《無謀なる衝動》により卵の燃えさしカウンターが六、さらに上手く引き込んだ《選択》を唱え《灰口のドラゴン》が孵化。

イゼットカラーの強みを見せつけた。

このドラゴンは放置すると二点火力を好き勝手に撒き散らすので、使いたくなかったが即除去で《虚空裂き》、するとShoは対応してなんと《ゼロ除算》でドラゴンを手札に回収、誘発した二点火力を負け犬ではなくドラゴン自身に撃つという致命的プレイングミスが脱力ポイントだがこういうのはよくある(忠誠度が低く残したくない方のプレインズウォーカーを選んでしまうとか)。

サイドボードから履修してきた講義カードはもちろん《マスコット展示会》、Shoは現在土地が7枚並んでいるため、卵を出した次のターンで即時孵化が可能だ。

盤面はJunの《しつこい負け犬》のみ、双方マナ基盤である土地は潤沢。

そこへもう一体の負け犬が奇襲し、Sho残りライフ4、Junは16。

さらにShoに見立てた《漆月魁渡》も召喚し、ブロックされない1/1トークン生成。

これでShoはブロッカーを二体立てなければ敗北する事となった。

だが翌ターン、Sho《くすぶる卵》を二体召喚、《無謀なる衝動》で燃えさしカウンター二つの状態でターンエンド、ブロッカーが間に合って起死回生か、次のターンで《マスコット展示会》を唱えればドラゴン二体が誕生する。

Junドロー《婚礼の発表》をトップデッキし場に出す(ドローに利用)、負け犬はブロックされると分かっているがドロー効果のために奇襲、《漆月魁渡》の+1能力も起動し計3枚の追加ドローは《否定の契約》、土地、《永遠の放浪者》。

良い流れだが、Shoもまたワンパンチ圏内である、どちらが先に決めるか…。

ターンもらってSho長考、見えているハンドは《ミシュラの命令》、《発見への渇望》、《マスコット展示会》、それと伏せられているのが一枚。

…X=4で《ミシュラの命令》!これでドラゴン二体孵化!

それを受けてJunも長考、《ミシュラの命令》は対象をプレインズウォーカーの《漆月魁渡》とブロックされない1/1トークンに取っているが…ここは様子見で優先権をShoに渡し直す(+4修正のモードをShoが選択せず、8/4にしたドラゴンからのワンパンチが無かったのが不可解だが、盤面の整理に慎重だったのだろう)。

《発見への渇望》で誘発されたドラゴンの火力により負け犬退場、さらにJunにも2点

Sho が引き込んだのが《ショック》ならば一発で、ショック2点+ドラゴンの誘発火力2×2点+本体への攻撃2×4点と、Junのライフ14を奪い切るが…!それはならず、Shoまだ土地が1つアンタップ状態である。

負け犬が素通りしてしまうため、ドラゴンは攻撃せずにそのままターン終了。

Jun、満を持して《永遠の放浪者》召喚、+1能力でドラゴン一体を一時追放、さらにトップデッキした《冥途灯りの行進》により2体目のドラゴンも追放。

「えっ、何で居なくなったの??」状況を把握しきれないSho。

しかしターンもらってSho、ずらりと並んだ土地からなんと3枚目の《くすぶる卵》召喚、さらに《マスコット展示会》で即時孵化させるのだが、応じてJun一枚刺し虎の子の《否定の契約》で展示会を打ち消してボードアドバンテージは握らせずに済ませる。

ターンもらってJun、《永遠の放浪者》の+1能力で孵化したばかりのドラゴン一体を再度一時追放。

ライフ4のShoに1/1トークンと負け犬の二体でアタックし、卵で防ぎきれない1点を与えつつ、《婚礼の発表》と負け犬の効果で2枚ドローしてターンエンド。

試合の残り時間は二分を切っているが、この時点での盤面。

非アクティブプレイヤー、Jun。

《永遠の放浪者》、《婚礼の祭典》、2/2人間クリーチャー・トークン、土地12枚、ライフ12。

ロー団アクティブプレイヤ―、Sho、ライフ3。

《くすぶる卵》、土地10枚と殺風景だがここで一気に展開。

先ずはババア!そして、ジジイ!この《傲慢なジン》は自身の能力で今や16/4飛行というフィニッシャーとして育っている、これがジジイ・フレンズこと「ジジイ・ファイアー」だ!ファイアーには解雇という意味も含ませてある!

ジジイが飛んで殴ってゲーム・エンド目前。

Junターンをもらって、《永遠の放浪者》の−4能力起動。

2/2の人間クリーチャー・トークンとShoの卵を一つずつ残して全てのクリーチャーを破壊!

《しつこい負け犬》二体で奇襲をかけ、Shoのブロッカーは飽和、押し切っての勝利であった。

コントロール色の強い長い戦いだったが、双方のデッキがゆっくりと着実に戦略に乗れていた結果と言えよう。


【四月二回戦第二試合】

先攻Sho手札キープ、王手のJunは軽快にマリガンスタート。

試合時間は十分であったが、ここで双方の土地が四枚ずつ並んだ際の盤面を見てみよう。

Shoは《くすぶる卵》に《気まぐれな呪文踊り》二体ずつ、卵とババァがニコニコで攻守共に非常な硬さ、ライフは22。

一方Junは《婚礼の発表》にカウンターが二つ乗りトークン二体と貧弱だが次のターンで2/2が三体に転ずるだろう、辛うじて《踊る月、魁渡》がアタッカーの足止めをしている、今ババァに殴られてライフは16。

Jun、《華やいだエルズペス》召喚、トークン一つに+1/+1カウンター並びに飛行カウンター付与。

Sho「華やぐね〜」実際厄介である。

ターンを渡し、強化されたトークンが三体にプレインズウォーカー二体の硬い盤面。

Sho、信じられない引きの《メフィットの熱狂》二発でエルズペスを撃破、自陣の各クリーチャーにカウンターが複数乗る。

Shoは土地4枚からマナを引き出し切ったので、ターン・エンド。

Jun、《策謀の予見者、ラフィーン》をトップデッキして召喚、魁渡の能力で孵化寸前の卵を攻防不可指定。

飛んでるトークンがラフィーンの能力で6/6になってアタックし、計8点ダメージ、Sho12対Jun14でそろそろ双方平等に勝機が訪れそうである。

その後Shoはババァの能力でコピーした《ゼロ除算》により、魁渡とラフィーンをバウンスしつつドラゴンを孵化させるものの、4枚の土地からマナを引き出し切ってしまう。

ターンもらってJun、満を持して《永遠の放浪者》、ドラゴン一体を一時追放、またもこの展開でShoとしては分が悪い。

飛行6/6トークンのアタック、ドラゴンではチャンプブロックせずに通す。

エンド。

運命の最終ターン。

ブロックされない《気まぐれな呪文踊り》2/1、飛行ブロッカーの居ない《灰口のドラゴン》4/4がそれぞれ通って、Jun残りライフ6。《稲妻の一撃》による3点ダメージ、ドラゴンの誘発能力で追加の2点ダメージ、Jun残りライフ1。マナを使い切って《無謀なる衝動》、ドラゴンの火力誘発で最後の2点ダメージを削り切り。

とはならなかった。慎重派のSho、プレインズウォーカーやトークンを丁寧に対処し、Junの陣地には6/6飛行トークンとエンチャントを一つの状態にしてターン・エンド。卵が追放領域から帰還、残りライフ6。

応じてJun、《踊る影、魁渡》召喚、+1能力でドラゴンをブロック不可指定。

Sho「エッ?」

飛行トークンの6点が勝負を決めた直後の断末魔であった。


Uncommon Low Skirmish四月期、決着!

堕ちたる奴隷商人Shoに、目覚めた義の言語術師Junの鉄鎚が下った!

だが、Shoのイゼットジジイこと、「ジジイ・ファイアー」はデッキのポテンシャルは十分であり、振り返ってみてもShoの勝機は、特に二回戦に於いて十分だった。

それでもJunは負けられない、バンドの想いを一身に背負った覚悟は、数多のワイルドカードがデッキのキーカードへと姿を変えて顕現しているのだから。

…二ヶ月同じカラーでデッキを持ち込むと、そのカラーは使用禁止となる。

次回、五月期のデッキは、Jun赤か緑か、どちらも本人が好きなカラーでは無い。

Sho、大好きな黒でリベンジに来るか、Junのメタなデッキ構築が冴えるか否か。

乞う、ご期待。

今月のUncommonガール

【2023春号】序 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

玄き腐敗の言語術師-ロゴスマンサー-Jun、彼の怒りは頂点に達した。

一年間というのは短いようで長い、いわば半永久の極限とも言える期間だ。

Junは、自分自身をバラバラの切れ端(それこそ木の葉一枚々々)に刻んで情報の薄っぺらな束また束へと刻み込むという、時の牢獄からいよいよ抜け出す事ができた。

それは果てしないように思える、真っ暗で決して平坦ではない道のりを当て所なく旅するのに似ていた。

それで得られたものは、ちっぽけな、まるで棒切れのような勇気。

つまり、道を征く者に『物は来る』のだという危うい実感だけである。

そんな彼が、とある些細な事件により、身に余る黒マナを怒涛のように放出したのだ。

堕ちたる蒼き量子術師-クォンタマンサー-Sho、彼もまた怒りを沸々と堪える日々を過ごしていた。

しかし、それは只々、日々の生活のためにしていた、やむを得ない罪なき事だったのかもしれない。

それを、ある人ならば徒然なるままにと表現するかもしれないし、別のある人ならば川の流れの如くと見るかもしれない。

だが、Shoと近しい人々の眼には、彼の寡黙な無表情や冷淡な沈黙が、攻撃的な消極として捉えられていたのだった。

すなわち、彼はこの一年間をただただ無為に、仮想量子空間における性奴隷の調教だとか新たな女商品の調達であるとかに浪費するのみだったのだ。

「貴様、すぐにその薄汚いその手を地面にへばり付けて、命乞いして見せろ!さもなければ、永遠に貴様の両目を潰して、男も女も無い暗黒へ叩き落としてやる!」

「へっへっへ!生活から逃避して高みにいた気になっていただけで、結局その生き様に飽いただけの自惚れ屋がこの俺とやり合おうとは呆れたぜ!!」

今ここにUncommon Low Skirmish、戦いの火蓋は切って落とされた。

玄と蒼、二人の吽己者がその全存在を賭けて衝突する。

【三月号】特集 黒と青と白-MTGアリーナ雑感-【キ刊TechnoBreakマガジン】

沼が象徴するのは屍臭と渇望。

変化の静と動を端的に表している。

私、TechnoBreak Junは死の黒マナを欲する。

湖が象徴するのは知識と停滞。

水面は浮かぶものだが、水深は図り知れぬものだ。

彼、TechnoBreak Shoが智の青マナを求める。

平地の白には猫がたくさんいる。

TechnoBreak Shunにぴったりだ。

白と言ったらサバンナ・ライオン!

そんなわけで、Shoメンバーに勧められ、MTGアリーナを開始してからひと月経った。

懐かしい神河やイニストラードは健在らしく、驚いたことに先月はファイレクシアが隆盛していた。

環境の変化、サイクルの流転はめまぐるしいようだ。

今や、人物を主軸に物語を描くのではなく、次元と次元がひしめき合うような共鳴が響き渡っているのか。

ギャザ世界の今を把握するにはプレイを重ね続けるしか今できる事は無い、随想は過去へ遡る。

小平市にある祖母の家へ週に一、二度遊びに連れて行ってもらっていた頃。

今調べたら、あった。

あぁ、懐かしい、ホビーショップFUJIと言うお店だ。

マジック・ザ・ギャザリングとの出会いはそこでだった。

ホビーショップと言うと、憧れの念と共にホビーショップに通っていた事があるなら誰もが、あの雑多な感じにピンと来るはずだ。

あそこは、きっと店長の純粋な遊び心を詰め込めるだけ詰め込んだ結果、全国各地で必然的に顕れる意匠なのだろう。

店内の息苦しさは、そこが聖域である事の証か。

ひっくり返った図書館ように積まれたプラモデルの箱、フィギュアは当時アメコミのが多かった(あれで海外文化の一端を垣間見ることができた)、ショーケースのエアガンやナイフ、塗料、モーター、レジの脇にカード類。

重々しいオーラを放つ、アンティークの木箱。

のような紙箱に入った、たしかポップに「世界最古のトレーディングカード」と書かれていた気がする。

十歳に私には、英語を見るのも無知を思い知らされるようで嫌だったから、日本語版のケースを手に取った。

第四版、恐る恐る手にとって、勇気を出して会計した。

千五百円と言う値段は、桁が違うのだ。

三枚封入されているレアの中から飛び出したシヴ山のドラゴンは、たまたま夕方の情報番組で見知っていたので嬉しかった。

ドラゴンが嬉しくない子供はいないだろうが、有名なカードが出たのには畏怖すら覚えた。

次に停滞、まろやかな筆致の抽象画に眼が向くが、カードの効果は理解が及ばなくて眼を剥く。

アンタップ・ステップを飛ばす?

まず、ルールなぞ全く知らずに買っている訳だから、小さな文字がびっしり書かれた説明書きを読むことになる。

読書に慣れていない子供には酷だった。

父に傍にいてもらいながら試験遊戯をしてみるも、色々カードが出てくるものの、現在理解している仕組みで考えればこんな多色デッキ機能するわけが無い。

そもそも対戦相手が居ないのだから、スターターデッキ一箱ではスタートできないではないか、今思えば失笑を禁じ得ない。

そして、ネビニラルの円盤。

「アーティファクトとクリーチャーとエンチャントをすべて破壊する。」

単純で純粋で馬鹿だった自分は、こんなの弱いと思っていた。

せっかく展開した自陣まで巻き込んで何も残らないだなんて。

そうではなく、数ターン先のリセットを見据えて展開しておくのだ。

数ターン先を見据える、そんな事ができる頭になったのもMTGのお陰だ。

アンタップの訳語が「曲げる」で、カードを横向きに寝かせるのではなく、折り曲げる事だとしか思えなかった自分にとって、このカードは触れ得ざる物に早変わりし、引き出しの奥に仕舞われた。

それから数年後、中三になってようやく、学年内の一部愛好家たちが水面下でプレイしているのを受け、本格的なプレイに参じた。

対抗呪文を打たせる前に暗黒の儀式、ファイレクシアの抹殺者なんて持ってはいない、何を展開していたか覚えていない。

ただ、黒使いでありたいがためだけに沼をタップしていたのだろう。

黒で6マナくらいのレアカードが出れば即デッキ投入、他の色のカードは見向きもしなかった。

確率的には五分の四以上でハズレを買う事になる、視野の狭さが良く言えばあどけないが、悪く言えば人として小さい。

稲妻も怨恨も嫌いだった、使わない色、ゴブリンにエルフ、何もかも。

好きなのは手札破壊、タッチ青で打ち消し。

私の歪んだ少年時代をモロに反映しているみたいだ。

ネメシスのパックを開封して、墜ちたる者ヴォルラスが出てきた時は歓喜した。

Kev Walker氏の美麗イラストに見惚れたものだ。

使ってみると断然弱い、このカードで勝ちたいのに。

だけど六十枚のデッキに一枚きり、そもそも引けない。

ヴォルラスで勝負を決めたい、お前のヴォルラスつえーよって言われたい。

回避能力の付与とか、エンチャントとか、そういうアタマは全然無かった。

消散カウンターは、カウンターの概念がわからず忌避していたので、ブラストダームも弾ける子嚢も理解できなかった。

緑だし。

時は経ち、社会人になって小遣いが増えてからもしばらく再開していた。

都合が付くなら昔のゲーム仲間も誘って秋葉原へ、フライデーナイトマジックに息せき切って馳せ参じた。

ゴシックホラーの色彩が強いイニストラードへ“帰還”したような気がした。

日本を舞台とした神河は学生時代直撃でプレイしていたから知っていたが、MTGを離れていた際の時のらせんブロックというのを知った瞬間は、現役でいたかったと強い衝撃を受けたものだ。

私はラヴニカからゼンディカーまでを知らない。

だからプレインズウォーカーカードも知らなかった。

そしてまた、ラヴニカへの回帰からストリクスヘイブンまでも知らない。

因果なものではあるまいか。

マジック・ザ・ギャザリング三十年の歴史の中で、私がプレイしていた期間はのべ五年程度なものだが、この一ヶ月MTGアリーナで黒マナに浸りながら実感した事がある。

中学生の頃の自分は典型的なティミーだったのだ。

黒のレアカードで勝つことが快感だった。

大人になった私は、今、ジョニーに変わりつつある。

自分らしさをデッキのコンセプトに据えたい、欲を言えば自分らしくなさも。

そして好敵手のShoメンバーと、在りし日のドミナリアや迫り征くファイレクシアなどに思いを馳せながらプレイを重ねる事により、スパイクになるのだろう。

そんなトーナメントが待っている。

最後に、1995年の第四版まで赤の呪文の顔役だった稲妻が再録されなくなってから久しい2010年、五年ぶりに基本セットに再録された際のフレイバーテキストで、私の雑感を終えたい。

火花魔道士は叫び、彼が若かった頃の嵐の怒りを呼び起こそうとした。驚いたことに、空はもう再び見られないと思った恐るべき力で応えた。