【2023冬号】糞Jun 今月のHustleデッキ #005【キ刊TechnoBreakマガジン】

糞Jun(10/7執筆)

 何かから逃げている時って、どうしてあんなに夢中になれるんだろう。俺もShoも学業から逃げていた時期があった。俺は小林秀雄の文章を読み漁り、Shoは早稲田松竹で名画を観賞していた。奇しくも新宿区の徒歩圏内で二人は邂逅していた可能性もある訳だな。アイツの場合、幸か不幸かそのまま大学を中退する羽目になってしまったと言う事だが。

 確か五月頃、旧型赤緑デッキのイマイチ感にがっくり来ていた俺は、気分転換に青単パーミッションを作ってみたんだ。一ターン目に《秘密を掘り下げる者》を召喚して後は打ち消し呪文で守りに徹する、『デルバー』と総称されるクロック・パーミッションをね。で、プレイしていると勝率は半々未満でも楽しいんだよね、これが。ぜひ仕上げたいって思ったよ。いつか、青単デッキをULSにぶつけるんだ、ってね。その刻が、満を持して来た。月々の色調整の都合で、どうしても十月にぶつけなきゃいけなかったってのもあるんだけど(笑)

 初期型は凄いHustleな青単だったんだ。瞬速持ちの《オークの弓使い》を相手のターンエンドに召喚してみたり、アドバンテージの塊である《鏡割りの寓話》をとりあえず出してみたり、フィニッシャーにはこれまた瞬速持ちでパーマネントのマナコストを2も増やしてしまう妨害能力が地味に嫌らしい《ナイトクラブの用心棒》を据えて、さらにソイツを明滅させてETB能力を使い回すための《一瞬の瞬き》を入れて…青単なのにパワーカードを黒、赤、白から四枚挿しっていう『歪んだ三位一体』の名に恥じないHustleなデッキを仕上げていたんだよね!最初期には《夜群の伏兵》の採用まで検討していたし、レア土地には今回もだいぶワイルドカードを割いたよ。

 で、これが勝率イマイチで泣いちゃいそうなんだな。封殺or《ナイトクラブの用心棒》が間に合わずに惜敗で、後者の割合が多くて負け越しちゃったんだよね。相手は現在二連勝中のShoだから、絶対に十月は負けられない。そんなわけで、調整と微調整とを重ね続けた挙句、上記のジャンク型パーミッションは、すっきりシンプルな形へと大幅な路線変更したのが前日夜。当日は土地とサイドボード調整をザックリやって、実戦はほぼ無いままにULS十月一回戦へ挑んだんだ。

デッキ名『青単報復者』

 上手くいけば2ターン目から3/2飛行で殴っていける《秘密を掘り下げる者》に《執着的探訪》をエンチャントして、4/3飛行に加えて一枚ドローし続けて妨害カードを切り続けるのが理想。これが除去されると投了なんだけど、そこを《復讐に燃えた犠牲者、ドロテア》の高マナレシオカードで補填しようとしてある。このクリーチャー、なんと2マナ4/4飛行っていうHustleカード。攻撃かブロックに一度でも参加してしまうと生贄に捧げなければいけないんだけど、その後は墓地からの降霊によりオーラとして復活!エンチャントしたクリーチャーが攻撃するたびに、飛行を持つ4/4トークンがスタープラチナばりにブン殴りに来てくれる(このトークンも戦闘後に生贄に捧げられる)。

 となると、相手のターンエンドに《瞬唱の魔道士》を2マナで素出しして、ターンを貰ったら3マナの《ドロテアの報復》(降霊カード裏面)をエンチャントして殴りに行く。手札破壊相手に対して動くすごく極端な理想形だけど、3ターン目から6点以上のクロックを刻めるのはHustleアグロだよな。アグロデッキの勝敗の分かれ目はおおむね5ターンって言われているから、それまでに殴り切るのがこのデッキの信条ってわけ。青単なのにアグロ、この取り合わせの妙がHustleポイント激推し如何でしょう。

 上記クリーチャーをあっさり除去されて「投了」宣言とならないようにするため、中期戦を見越して採用してあるのが《帳簿裂き》。2マナ1/3飛行持ち、使われて初めて厄介さに気付く悪いヤツ。そのターンにプレイヤーが二番目の呪文を唱えるたびに謀議する(カード一枚を引き、その後カード一枚を捨てる。あなたが土地でないカードを捨てたなら、このクリーチャーの上に+1/+1カウンター一個を置く)。つまり、サイズアップを期待しつつ、手札の不要カードを今欲しいカードへの摺り替えも期待できるんだ。ゲーム中盤で召喚し、続けて《消えゆく希望》で対戦相手の邪魔なブロッカーを手札に戻す、たったこれだけのムーヴで謀議ができるのはHustle通り越してチョットオカシイ。対戦相手のターン中に《瞬唱の魔道士》を召喚して、再度《消えゆく希望》をフラッシュバックしても謀議。この能動的な効果に加えて、対戦相手が二つ呪文を唱えたら謀議できる攻撃的受動性も強い、4/7飛行になって殴りかかれるのも十分あり得る。

 《瞬唱の魔道士》は2マナ2/1瞬速持ちなんだけど、戦場に出たターンに墓地のインスタントかソーサリー一枚を対象にして使いまわせる能力があるんだ。正規のマナコストを支払う必要はあるけれど、単純に手札が増えてるようなもので、《旋風のごとき否定》のようなカウンター呪文でも《ゼロ除算》のようなバウンス呪文でも必要なものを引っ張ってきて対応できるのが中盤戦に活きるね。前者はスタック上にある対戦相手の呪文やら能力やら全てに4マナも支払い要求をするから、果敢や魔技みたいな誘発型能力もすっきり打ち消し。後者はサイドボードから講義カードを履修できるから、ハンドアドバンテージを失わずに妨害できる。採用している講義カードは、終盤にもつれこんでまで使いたく無いけど《マスコット展示会》、使わずに決めたいけど大事なドローの《アルカイックの教え》、短時間の調整でよくこれに目をつけたなって自分を褒めたい《謹慎補講》。《謹慎補講》は五枚目の《消えゆく希望》相当で、こちらのクリーチャーの攻撃をゴリ押しで通すのに役立つよね。

 初期型の構えて守るジャンクなタイプのパーミッションから、毎ターンガンガン殴る明快アグロなパーミッションへガラッと様相を変じた十月の青単デッキ。終始頭を悩ませたのはクリーチャーとそれ以外の呪文の枚数の割合だった。極端な話、《傲慢なジン》と《トレイリアの恐怖》をそれぞれ四枚挿しクリーチャー八体型で行くか、《隆盛するスピリット》や《怪しげな密航者》のような軽量優秀クリーチャー二十体前後型で行くか。結局は、白黒赤と各色の軽量パワーカードをジャンクに詰め込んだ後者型にするはずだったんだけど、その構築当時に色々なパターンを考えていたお陰で最終型にパッとメタモルフォーゼすることが出来たよ。さながら《秘密を掘り下げる者》みたいにね。彼は対ミッドレンジ用に、サイドボードの《傲慢なジン》との交換も考えてあるよ。

 さて、1マナの《秘密を掘り下げる者》、2マナの《瞬唱の魔道士》、《帳簿裂き》、《復習に燃えた犠牲者、ドロテア》低コスト高打点のクリーチャーたちを抑えて、『今月の裏Hustle』をご紹介しよう。二枚採用の《迫撃鞘》だ!これはULS十月一回戦第二試合を劇的に締めくくった生体武器の飛び道具。十月一回戦は二試合ともJunのデッキがShoを封殺、俺以外の全ての人が、Shoすらもその展開に感嘆したに違いない名勝負だったな。俺が勝つ試合はどれも名勝負に認定するんだけどさ(笑)一方で、肝心の俺は綱渡りの連続、トップデッキにも何度も助けられる上に、対戦相手のクリーチャーにブロック制限があったから攻撃が通ったっていう相性もあって非常に精神的にはしんどかったんだよね。おっと、本題の《迫撃鞘》を忘れちゃいけない。コイツの能力で、Shoの残りライフ一点をきっちりもぎ取ることが出来て、本当に心からグッドゲームだった。

 それじゃ、歪んだ三位一体ことJunお得意の、調整を重ねたデッキを直前で大幅改変はまだまだ続きそうな予感がする。来月のデッキお披露目までKeep hustle!四枚交換しちゃった《鏡割りの寓話》どうしよう!

デッキ

4 瞬唱の魔道士 (SIS) 23

2 ゼロ除算 (STX) 41

4 A-復讐に燃えた犠牲者、ドロテア (VOW) 235

1 皇国の地、永岩城 (NEO) 268

2 アーテイの嘲笑 (DMU) 48

2 旋風のごとき否定 (STA) 23

4 ジュワー島の撹乱 (ZNR) 64

4 秘密を掘り下げる者 (MID) 47

3 かき消し (SNC) 49

4 消えゆく希望 (MID) 51

4 帳簿裂き (SNC) 46

1 天上都市、大田原 (NEO) 271

4 アダーカー荒原 (DMU) 243

1 金属海の沿岸 (ONE) 258

4 連門の小道 (KHM) 260

4 マナの合流点 (JOU) 163

2 冠雪の島 (KHM) 279

3 冠雪の平地 (KHM) 277

2 迫撃鞘 (MBS) 115

4 執着的探訪 (JMP) 148

1 送還 (ANB) 36

サイドボード

1 アルカイックの教え (STX) 57

4 本質の把捉 (NEO) 52

1 マスコット展示会 (STX) 5

1 謹慎補講 (STX) 7

4 傲慢なジン (DMU) 52

4 本質の散乱 (DMU) 49