【2023春号】序 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

玄き腐敗の言語術師-ロゴスマンサー-Jun、彼の怒りは頂点に達した。

一年間というのは短いようで長い、いわば半永久の極限とも言える期間だ。

Junは、自分自身をバラバラの切れ端(それこそ木の葉一枚々々)に刻んで情報の薄っぺらな束また束へと刻み込むという、時の牢獄からいよいよ抜け出す事ができた。

それは果てしないように思える、真っ暗で決して平坦ではない道のりを当て所なく旅するのに似ていた。

それで得られたものは、ちっぽけな、まるで棒切れのような勇気。

つまり、道を征く者に『物は来る』のだという危うい実感だけである。

そんな彼が、とある些細な事件により、身に余る黒マナを怒涛のように放出したのだ。

堕ちたる蒼き量子術師-クォンタマンサー-Sho、彼もまた怒りを沸々と堪える日々を過ごしていた。

しかし、それは只々、日々の生活のためにしていた、やむを得ない罪なき事だったのかもしれない。

それを、ある人ならば徒然なるままにと表現するかもしれないし、別のある人ならば川の流れの如くと見るかもしれない。

だが、Shoと近しい人々の眼には、彼の寡黙な無表情や冷淡な沈黙が、攻撃的な消極として捉えられていたのだった。

すなわち、彼はこの一年間をただただ無為に、仮想量子空間における性奴隷の調教だとか新たな女商品の調達であるとかに浪費するのみだったのだ。

「貴様、すぐにその薄汚いその手を地面にへばり付けて、命乞いして見せろ!さもなければ、永遠に貴様の両目を潰して、男も女も無い暗黒へ叩き落としてやる!」

「へっへっへ!生活から逃避して高みにいた気になっていただけで、結局その生き様に飽いただけの自惚れ屋がこの俺とやり合おうとは呆れたぜ!!」

今ここにUncommon Low Skirmish、戦いの火蓋は切って落とされた。

玄と蒼、二人の吽己者がその全存在を賭けて衝突する。