【2023夏号】第四回戦 突貫 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

7/1

6/17に終えた闘いから、およそ半月と言う長い長い時間が過ぎた。

その日は、変則的に駒込に集合し、広場の椅子に座ってのデュエルである。

コンビニの缶ビールで乾杯。

今月のUncommonガール

【七月一回戦第一試合】

先攻はその日もShoだった、少年の日には思いもしなかったが、つくづくこのゲームは先攻有利だと思われる。

Junは一度マリガンするものの手札が弱い、Shoは二度目のマリガンをするか否か長考の末一度で決断。

黒緑の二色土地をアンタップインし、《ファイレクシア病の甲虫》を召喚、コイツは攻撃が通るほどにデッキ全体の毒性持ち昆虫の感染力が増加して行く。

Shoはまたも毒デッキである。

土地もクリーチャーも伸び悩むJun、Shoが展開する《ファイレクシア病の甲虫》二体と《バルターズゲートのクライドル》へ《ナヒリの怒り》を打ち込むがハンドアドバンテージは大きく損失。

Shoはその後もクリーチャーを引き込み、《グリッサ・サンスレイヤー》、《敬慕される腐敗僧》、《頭蓋穿ちの虻》と順調に召喚、虻は甲虫の能力により既に毒性3にまで増加されている。

これにJun、毒性無しのグリッサを除く二体に再度《ナヒリの怒り》を打ち込む。

しかしながら、その後もSho、立て続けに《頭蓋穿ちの虻》を二体召喚、飛行を持つ毒性3を止め切れずにJun敗北。

《バルターズゲートのクライドル》も《頭蓋穿ちの虻》も緑青のクリーチャーだ、Shoは黒緑青の三色毒デッキを組んで来ていた。

【七月一回戦第二試合】

Sho《頭蓋穿ちの虻》二体、Jun《嵐蓄積の斬鬼》《激情の罠破り》で双方ノーガードの殴り合い。

Junは赤緑の人狼デッキを持ち込んでいる、早くて重いクリーチャーを揃えてあるし、五月の赤緑デッキの不備は解消してある。

Shoライフ残り6、Jun毒カウンター五の状態。

Junからの二体をSho、《敬慕される腐敗僧》と一体の《頭蓋穿ちの虻》でチャンプブロック。

返すターンで《荒廃のドラゴン、スキジリクス》に速攻を付与して虻と共にアタック、一度に毒カウンターを五つ与えてShoが奇襲的勝利。

「『アンクル・リファイアー』ジジイ再失業って意味だ、《牙持ち、フィン》のジジイもいねえぜ。」

満を持して人狼部族で揃えたデッキが完敗を喫し、Junは苦々しい感情と同時に、自分自身はやり切ったのだと言う、憑き物でも落ちたかのような気分だった。

毒デッキはやはり下らないとも思っていたのだが。

「今月、まさか双方がリメイクデッキでぶつかるってのがウケるな」

勝者のSho、余裕の発言である。

【七月二回戦第一試合】

勝ち筋を見出したいJunと、この週で決着させたいSho。

いつもの錦糸町82エールハウスにて、ビールとハイボールで乾杯。

この日、Shoは間違いなく現在の手持ちで最強と言える、先週持参した『アンクル・リファイアー』こと黒緑青毒デッキで連勝を狙ってくるはずだった。

それに対抗できる手持ちはJunに何がある?

初戦の白青黒の三色デッキは三色の捻出に難があるのと、毒の速攻に追いつけないかもしれないと言う懸念があった…。

先攻Sho《敬慕される腐敗僧》、後攻Jun《執拗な仔狼》それぞれ召喚。

二ターン目Sho《バルターズゲートのクライドル》を召喚、腐敗僧でのアタックは仔狼でブロック。

「え、オイオイオイ」狼狽するSho、《バルターズゲートのクライドル》は攻撃クリーチャー一体がブロックされなくなると言う、毒デッキにとっては嬉しい能力を持っていたのだが、この能力に2マナ必要になっていたらしいのである。

滅多に無い事だが、野良試合と二人のバトルとで仕様が異なるという事が、あるにはある。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚、仔狼の効果で+1、警戒、トランプルカウンターが追加され、二ターン目に出るクリーチャーとしては過剰なスペックとなって場に出る。

三ターン目、Shoは土地を出し、クライドルの能力で2マナ支払って、腐敗僧の攻撃を通すが、残す土地一枚で出来ることは無かったのか呪文が唱えられる事なく、戦場は夜に。

ここからJunのギミックが始動、《液鋼の塗膜》を場に出し、Shoの土地《マナの合流点》をアーティファクトに指定、夜となり裏面に変身した《激情の罠破り》が攻撃し《マナの合流点》は破壊される。

五月の赤緑デッキにも搭載されていたギミックである、その時は最速でギミックが回転しても一歩及ばなかったが。

ターンもらってSho、手札から《マナの合流点》を出し、既存の土地二枚から《頭蓋穿ちの虻》を召喚、軽量クリーチャーで固めた速攻デッキの強みである。

だが、夜が明けるためには自分のターンで二つの呪文を唱える必要がある、土地を破壊してマナ基盤を拘束していくのは有効だった。

毒カウンターを十貯めさせるかその前に殴り切られるか、Shoのクリーチャーは軽量なのだがパワーが貧弱、一方で《激情の罠破り》は今や4/4、警戒、トランプル、攻撃するたびにアーティファクト破壊と言う、殴るも壊すも傍若無人のクリーチャーに仕上がっていた。

ここでJun、《深夜の災い魔、トヴォラー》を召喚して罠壊しでアタック、Sho側に立っている《マナの合流点》がアーティファクト化されてまたも破壊、さらにクライドルにチャンプブロックされたもののトランプルにより一点のダメージがSho本体に通ってトヴォラーの能力が誘発し一枚ドロー。

強固なロックが完成してしまった、トヴォラーは自陣に狼が三体居れば自動的に夜を迎えることが出来るので、Junが展開するクリーチャーは毎ターン軒並み強力な裏面に変身する事となる。

ターンもらってSho、森を出し《伝染させる吸血者》を召喚、飛行を持つ《頭蓋穿ちの虻》が攻撃し毒カウンターをJunに貯める。

ターンもらってJun、土地を出し《嵐蓄積の斬鬼》を召喚、能力により自身に速攻付与して5/4トランプルとなる、人狼三体でアタック。

Shoはトランプルを持たないトヴォラーを腐敗僧でチャンプブロックするも、応じてトヴォラーの能力起動、自身にトランプルを付与して、Shoに合計12点ダメージ、さらにJunの手札へ三枚ドロー。

この時点でSho残りライフ2で手札二枚、Jun残りライフ14と毒カウンター二つで手札六枚、土地はShoの二枚に対してJun五枚で差は歴然だった。

このままJun勝利。

【七月二回戦第二試合】

Sho先攻、《ファイレクシア病の甲虫》召喚。

このクリーチャーは攻撃が通るたびに、全領域の昆虫クリーチャーの毒性を増やして行くと言うものだ。

Junは土地を場に出して一ターン目を終えるが、以降召喚していく人狼たちはことごとくShoの除去呪文により破壊され続けて行く。

ブロッカーが居ないままに甲虫の攻撃が何度も通り、Shoの四ターン目には、毒性4になった甲虫に加え、《頭蓋穿ちの虻》も毒性4で召喚されてJun封殺。

Shoのデッキに対して有効に立ち回るためにどうすべきか示唆する貴重な資料となった。

つまり、先攻一ターン目に一マナクリーチャーを召喚しておかねばならないと言うことである。

【七月二回戦第三試合】

先週に続き、Shoのデッキの爆発力に苦戦必至のJun、慎重な展望で仕掛ける必要がある。

Jun先攻、土地を出して終わり。

Sho後攻、《敬慕される腐敗僧》召喚。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、腐敗僧アタックで毒カウンター付与。

三ターン目Jun、三枚目の土地を出し再度《辺境地の罠外し》を召喚。

ターンもらってSho、除去呪文は手持ちに無いのか《頭蓋穿ちの虻》召喚。

ターンもらってJun、ドローエンジンとなる《不吉な首領、トヴォラー》召喚、罠外し一体で強気のアタックがブロックされず一枚ドロー。

四ターン目Sho、《頭蓋穿ちの虻》二体目を召喚、さらに地上クリーチャーは最早不要と言わんばかりに腐敗僧を追加コストの生贄にして《新生化》を唱える。

これは生贄にささげたクリーチャーのマナコストより一つ大きなクリーチャーを探し、+1カウンターを置いた状態で戦場に出すという呪文だ。

場に出てきたのは、三枚目の《頭蓋穿ちの虻》、これらの攻撃が飛行によって素通りし続けるならば残り三ターンでJunの毒カウンターが十を超えてしまう。

ターンもらってJun、《ナヒリの怒り》をShoの虻三体を対象にして一斉除去、そのために消費した手札は合計四枚なのだが、続けて人狼二体でアタックしトヴォラーの能力により手札二枚を補填、結果的に二対三交換でJun側のアドバンテージ、いや《新生化》のコスト込みなら二対五交換か。

ターンもらってSho、トヴォラーを《胆液まみれ》で除去。

ターンもらってJun、他に何も無い戦場を《辺境地の罠外し》でアタック、呪文を唱えなかったため夜になる。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、これにより夜の戦場に土地以外は何も無くなり、新たな局面に突入か。

ターンもらってJun《嵐蓄積の斬鬼》を召喚し、速攻付与でアタック。

この時点でSho残りライフ6で手札一枚、Jun残りライフ18と毒カウンター3で手札四枚。

ターンもらってSho、土地を出すのみでエンド。

ターンもらってJun、《残忍な無法者、ラヒルダ》を召喚、速攻を付与して二体でアタック。

先の読めない攻防が渾然としていたものの、最後の最後にはハンドアドバンテージを大きく保持したJunが危なげなく勝利した。

「君、今日の靴、洒落てるね。おろしたて?」

「ほ、君よく気付くね。こないだネットで安売りしてたからすぐさま買ったのよ」

Shoの足元は黒と赤の皮を組みわせた靴に包まれていた。

「デッキカラーの黒緑じゃなくて、黒赤を履いて来ちゃったから負けたのかぁ〜」

「君、どうせ来週もその毒デッキで来るんでしょ」

【七月三回戦第一試合】

新生赤緑デッキで何とか連敗を防いだJun、目論見としては最終の三回戦こそ同デッキで激突し雌雄を決する事になるはずだった。

先攻Sho、山から《僧院の速槍》で速攻アタック、六月の赤単で殴り込んできたのだ。

序盤は双方一ダメージずつの殴り合いから、Junの《大いなる創造者、カーン》に対し、Shoの《ウラブラスク》が睨み合うも、これはターンもらってJunがすぐに《液鋼の塗膜》から《古の遺恨》の万能除去で対処。

Sho負けじと《焦熱の交渉人、ヤヤ》から果敢持ちトークン一体生成、ターンもらってJun《根導線の融合体》召喚、これをターンもらってSho《静電気の放電》と《火遊び》で除去して果敢持ち二体から合計6点分のアタック。

体力差はSho14対Jun5、Sho側には《僧院の速槍》と《焦熱の交渉人、ヤヤ》が生成した果敢持ちトークン二体で合わせて三体。

瀕死のJunは《古の遺恨》を用いたギミックで《焦熱の交渉人、ヤヤ》を除去、さらに《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》と《辺境地の罠外し》を召喚しもとからの《執拗な仔狼》と合わせて三体のブロッカーを準備、そして《大いなる創造者、カーン》の忠誠度カウンターを使い切り《ファイレクシアの肉体喰らい》を手札に加えてターンエンド。

Shoは《僧院の速槍》とプレインズウォーカー《勝負服纏い、チャンドラ》を召喚、場に出ている果敢持ちクリーチャー四体がパワー2で総攻撃、Junは展開済みの三体中二体を潰されるも何とかブロックで凌ぐ、残りライフ2、《火遊び》一発でゲームが終わる。

ターンもらってJun、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》は攻撃させずブロッカーとして立たせておき、カーンの能力で引っ張ってきた《ファイレクシアの肉体喰らい》を召喚してエンド、7/5絆魂持ち、一ターン何も起きなければ体力的には逆転できる。

Shoは《勝負服纏い、チャンドラ》の+1能力を起動し、ライブラリーの上を公開し呪文を唱えたが、Junに直接ダメージを与えられる火力ではなく《ウラブラスク》を場に出してエンド。

「グッ、これじゃねぇっ!」

《ウラブラスク》は《辺境地の罠外し》を召喚後即生贄に捧げて除去、肉体喰らいでアタックし双方のライフはSho7対Jun9となり、そのままJunの逆転勝利。

十六分を超える長丁場となった。

【七月三回戦第二試合】

Sho先攻、山から《僧院の速槍》が速攻でアタックしてエンド。

Jun後攻、二色土地をアンタップインし《執拗な仔狼》を召喚。

双方、理想的な一ターン目。

三ターン目の盤面は、

Sho、《僧院の速槍》、《勝負服纏い、チャンドラ》

Jun、二体目に召喚され警戒・トランプル持ちになった《執拗な仔狼》、さらに警戒・トランプル持ちの《無謀な嵐探し》。

直後にSho、かなり早い段階で《ウラブラスク》を召喚したものの、ターンもらってJun《大いなる創造者、カーン》を追加コストで捨てた《ナヒリの怒り》を撃ち込んで除去、さらに二体による攻撃でチャンドラも撤退。

頼みの綱のプレインズウォーカーがテンポ良く出ないとShoの展開は辛く、二体目の《僧院の速槍》や単体火力だけでは手札が息切れしてしまう。

身動きが取れないShoに対し、Junは《大いなる創造者、カーン》から《液鋼の塗膜》を交えた土地破壊ギミックも作動し始める頃に辺りは夜となり、そのまま快勝。

今月のUncommonガール