【2023冬号】第八回戦 反抗 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnnoBreakマガジン】

日曜の業務、比較的ラクな部類ではあったが人前に出るので多少はピリピリして準備していた。それ以上の準備を前回からの二週間をかけて行っていた。勝ったり負けたり、負けたり調整したり、負けたり構築したデッキを放棄してみたり。色々とストレスの溜まる日々だったと言える。だが、負けられないのだ。いつものパブで小麦香るヴァイツェン、Shoはハイボール。

先に書いておくが、Shoは記事なぞ読んでいないらしい。これは《見捨てられた碑》なのだ。奴は一ミリもバンドの事をしていない。だから書いておくが、彼奴の構築はトーナメントを意識していない、徹底的に俺対策で来ている。ならば、だ。

今月のUncommonガール

【十一月一回戦第一試合】

先攻は三連敗中のJunが選択、土地が無いためマリガン後《目玉の暴君の住処》、とうとう黒いデッキで参戦だ。

Sho、山を出してエンド、イゼット・ウィザードが懸念される。

二ターン目、Jun黒赤の二色土地から《望み無き悪夢》をエンチャント、Shoが捨てた手札は二マナ四点火力の《抹消する稲妻》。

Sho、Junのエンド前に《火遊び》を撃ち込んでターンをもらう、《ラムナプの遺跡》を場に出し《無謀なる衝動》、追放されたのは山と《稲妻の一撃》。

三ターン目、Junは両面土地を黒側で出し満を持して《ヴェールのリリアナ》、+1能力を起動し双方手札を一枚捨てる、Junは今引きの黒い土地《見捨てられたぬかるみ、竹沼》、Shoは一マナ二点火力《火遊び》。

ターンもらってSho、山を出して「しまった」のエモート、《稲妻の一撃》を《ヴェールのリリアナ》に打ち込むも、さっき捨ててしまった《火遊び》を追加で撃ち込むことが無いため除去しきれない。

四ターン目、Junは沼を出して《鏡に願いを》を唱える、協約コストは《望み無き悪夢》、山札からバーンに対して無敵の《ファイレクシアの抹消者》をサーチして来て戦場に出す。リリアナを起動して双方手札を捨てる、Junこれで手札ゼロ、Shoは《焦熱の交渉人、ヤヤ》をディスカードして残り手札三枚。この四ターンの展開は完璧な理想形だ。

ターンもらってSho、二マナ火力の《静電気の放電》を唱えリリアナに三点ダメージで除去、残り二マナは《無謀なる衝動》の同型再版《レンの決意》による衝動的ドロー。

この後、Shoは《勝負服纏い、チャンドラ》を召喚するも、抹消者のワンパンチであしらわれ、劣勢を挽回できない。

Junは《鏡に願いを》から《不笑のソリン》をサーチし次のターンに召喚、《鏡割りの寓話》を唱えるなどで盤面を確実にして押し切った。

【十一月一回戦第二試合】

Jun慢心の初手土地二枚スタート、これが完全に裏目となり三枚目の土地が来ない。

Shoはマリガン一回で先攻、山から《僧院の速槍》で速攻アタック。

ターンもらってJun、《思考囲い》でハンデスを仕掛け、Shoの手札から大物《ウラブラスク》を捨てさせる。しかしながら「あの時に《レンの決意》を捨てさせておけば後続のカードを引かれる事はなかった」と後になって指摘を受けた。

二ターン目Sho、山を出し《レンの決意》で衝動的ドロー、果敢により2/3になった《僧院の速槍》でアタック。Junの残りライフ14。

ターンもらってJun、《棘平原の危険》を土地の面でタップイン、《望み無き悪夢》を唱える。

三ターン目Sho、クリーチャー化できる土地《バグベアの居住地》をタップイン、《棘平原の危険》を唱えてJunに一点ダメージ、速槍アタックで二点。

ターンもらってJun、土地を引けず身動きが取れ無いままターンエンド。

四ターン目Sho、青赤キャノピーランド《焦熱島嶼域》から引いて来た《ウラブラスク》召喚、《僧院の速槍》はJunが《シェオルドレッドの勅令》により除去。

ターンもらってJun、《棘平原の危険》を引く、土地の面でタップイン、展開が遅すぎる上に手札には除去も無い。

五ターン目Sho、《僧院の速槍》召喚、《静電気の放電》でJunに三点ダメージ、フルアタックで合計十ダメージで勝利。

双方怒涛の応酬合戦で第三試合へ。

【十一月一回戦第三試合】

先攻Jun、赤黒破壊不能のアーティファクト・土地をタップイン。

ターンもらってSho、青赤土地から《僧院の速槍》アタックで一点。

ターンもらってJun、同じ土地を再度タップイン、一マナのカードは手札に無くエンド。

ターンもらってSho、《棘平原の危険》を土地の面でタップイン、速槍でアタック。

三ターン目Jun、土地を出して英雄譚《鏡割りの寓話》をエンチャント、2/2クリーチャーが場に出る。

ターンもらってSho、《無謀なる衝動》から引いて来た《絞殺》をJunが出したクリーチャーに撃ち込んで除去、速槍が殴って二点。

四ターン目Jun、《鏡割りの寓話》第二章が発動し手札交換一枚、引き込んだ《ヴェールのリリアナ》を召喚、−2能力を起動してShoの《僧院の速槍》を除去。

ターンもらってSho、《無謀なる衝動》から引き込んだ《棘平原の危険》による一点ダメージで《ヴェールのリリアナ》を除去。

五ターン目Jun、《鏡割りの寓話》第三章が発動しエンチャント裏面のクリーチャーに変身、万能土地《マナの合流点》を出して四マナ費やして《鏡に願いを》、アーティファクト・土地を協約コストに充ててサーチしたのは勿論《ファイレクシアの抹消者》、対応してSho《火遊び》で変身したクリーチャーを除去。

ターンもらってSho、五枚目の土地を出して四マナから大物《ウラブラスク》を召喚。

「君の衝動的ドローには相性悪いんで《黙示録、シェオルドレッド》はサイドインで、法務官対決は辞退させていただきました!」

六ターン目Jun、《ファイレクシアの抹消者》でアタック、ペナルティがあるため当然《ウラブラスク》ではブロックせず、Sho残りライフ9。

続いて《ヴェールのリリアナ》を再度召喚、−2能力で《ウラブラスク》を除去。

ターンもらってSho、《僧院の速槍》を召喚の後、《静電気の放電》、さらに《稲妻の一撃》、パワー修正された速槍が速攻で殴ってJunのライフを13から4まで九点も削り取る爆発的な奇襲。

これでJun、次ターンに火力呪文二枚も撃ち込まれて仕舞えば敗北。

七ターン目Jun、《ファイレクシアの抹消者》でアタック、Shoは土地からマナを引き出す際のダメージが蓄積しており残りライフ1。

さらにリリアナの+1能力起動、双方手札を捨て、Junの手札は四枚、Shoはプレイヤーに撃てない火力の《絞殺》を捨てて手札一枚。

そして戦場の《僧院の速槍》へ《一巻の終わり》を唱えて追放、この効果で墓地と手札とライブラリーから同名カードを探して追放できるのだが、その手順をうっかり飛ばしてしまう。

ターンもらってSho、先ほどの手札に保持していた《稲妻の一撃》をJunに撃ち込み残りライフ1対1、今引きは有効な一枚ではなさそうなのだが《焦熱島嶼域》を生贄に捧げて一枚ドロー、Junは火力が引かれないように祈るのみ。

長い沈黙、Junは焦れている、Shoは動かない、それが競り勝った勝利への歓喜のためなのか、はたまた接戦を征しきれなかった深い悲しみのためなのか、その沈黙がJunにはたまらなく長い。

そして、かすかな声で短く

「クッソ…」

Shoが唱えた呪文は《火遊び》、Junに二点ダメージ、なのだがSho残り唯一だった土地からマナを引き出すのにライフ1点を失う!

手に汗握る白熱の激戦、勝ちをもぎ取ったのはJun。

【十一月二回戦第一試合】

先攻Sho、白黒二色土地から《魂の管理人》召喚、前回の試合後に飲みながら言っていた、対Jun黒赤に最有力の白黒トークンデッキを引っ提げて参戦。

後攻Jun、敢えて今週も赤黒デッキから変更せず、たった二枚挿しの《思考囲い》がShoの手札を直撃、《ポータブルホール》、《夢の巣のルールス》、《太陽冠のヘリオッド》を確認し、ヘリオッドを捨てさせる。

三ターン目Sho、引いて来た《苦花》をエンチャント、先ほどの手札に在ったならばヘリオッドより優先して捨てさせていたかもしれないが、後にしてみればやはりヘリオッドで良かった。

《苦花》は毎ターン1ライフ失って1/1の飛行クリーチャートークンを生成するが、《魂の管理人》はクリーチャーが場に出ると1ライフ得られるので、このシナジーにより毎ターン飛行クリーチャーがリスクなしに得られる強固な場が整う。

しかしJun、《ヴェールのリリアナ》、《鏡割りの寓話》、《ファイレクシアの抹消者》、今引きの《鏡に願いを》経由で《不笑のソリン》と立て続けに展開する理想形を披露。

対するShoは白黒デッキお得意の万能パーマネント除去が引けない、さらにライフ回復シナジーに絶大な効果を有する《太陽冠のヘリオッド》や《祝福されし者の声》なども引けない。

フィニッシュは《ファイレクシアの抹消者》を《キキジキの鏡像》でコピーした後、《鏡に願いを》経由で撃ち込んだ《衰滅》で、Shoが大量に展開したトークン群を一掃し殴り勝ち。

【十一月二回戦第二試合】

序盤はJunが土地を出すのみ。

Sho、四ターン目には《魂の管理人》、《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》、《アジャニの歓迎》、《苦花》と堅実な盤面を構築、これらのシナジーで毎ターン2ライフ回復しながら飛行クリーチャーが一体ずつ生成される。

ようやくJunが英雄譚《鏡割りの寓話》を唱え、翌ターンには手札から捨てた《台所のインプ》をマッドネスコストで召喚、エラスに除去を撃ち込むなど遅れを取り戻そうとしていく。

六ターン目、Shoの総攻撃に焦れたJun、虎の子である《一巻の終わり》を《魂の管理人》に撃ち込む、どうせならもっと早くすべきだったが一枚挿しであるためShoの主要クリーチャーに使いたい所だった。

副次的な効果で、Shoは手札にクリーチャー除去を温存していることが分かったので、Junは豊富な宝物トークンにより《鏡に願いを》経由でプレインズウォーカー《不笑のソリン》、同様にして《ヴェールのリリアナ》とダブル召喚。

そこから二ターンほど後、Shoはライフ回復シナジーを頼みに防御無用の大胆な戦闘を仕掛けており、またJun側は《不笑のソリン》から生成された絆魂トークンでライフ減を立て直しており、Sho残りライフ6対Jun残りライフ16。

現在Shoの展開は《アジャニの歓迎》二枚、《苦花》二枚で2ライフ得ながら飛行トークン2体が生成される勝利秒読みの盤面、1/1とは言え飛行トークンが毎ターン二つと言うのは決定的である。

ここからは長引くほどにSho有利、だがJun《危難の道》で戦場のクリーチャーを一掃してからトップデッキ《黙示録、シェオルドレッド》満を持して召喚。

ターンもらってSho、トークン一体目生成でライフロス一点、《アジャニの歓迎》で回復二点、トークン二体目生成でライフロス一点、《アジャニの歓迎》で回復二点、その後ドローで《黙示録、シェオルドレッド》の能力が誘発しライフロス二点、ライフは目まぐるしく変動したがプラスマイナスゼロで残り4。

ここでShoもトップデッキ、《祝福されし者の声》召喚、ライフ1×2回復し誘発して《祝福されし者の声》に+1カウンターが二つ乗り4/4に。

召喚する際に土地からダメージもらって、Sho残りライフ5。

ターンもらってJun、後が無いので動く、《ヴェールのリリアナ》の-2能力起動でShoは飛行トークン一体を生け贄に捧げる、さらに《目玉の暴君の住処》をクリーチャー化して《黙示録、シェオルドレッド》と共に攻撃。

防御Sho側は残りライフ5、1/1飛行トークン一体、4/4《祝福されし者の声》。

攻撃Jun側は残りライフ19、4/5接死のシェオルドレッド、3/3威迫の目玉の暴君。

このターンを生存するためにShoは、二体のクリーチャーで接死クリーチャーと相討ちせざるを得ず、暴君の三点を受けて残りライフ2。

ターンもらってSho、《苦花》から飛行トークン二体、ライフ回復して残り4、ドローは土地、それを戦場に出してエンド。

ターンもらってJun、《ヴェールのリリアナ》の-2能力起動でShoは飛行トークン一体を生け贄に捧げる、さらに手札からリリアナを召喚し同様の動きでShoはブロッカー不在、そこをクリーチャー化した目玉の暴君が攻撃して三点、Sho残りライフ1。

ターンもらってSho、《苦花》のトークン生成にライフが自動で1支払われて試合終了。

ULS史上二番目に長い、泥沼の十八分間をJunのコントロールデッキが終始押し切った。

三ヶ月ぶりの勝利、三ヶ月ぶりの敗北。

俺は平静を装ったが、Shoの落胆はひときわだった。

内心笑いが止まらなかったが、気の毒なのでしないでおいた。

今月のUncommonガール