夕闇の訪れが少しだけ遠のいた二月末。
地下鉄東西線の高田馬場駅を地上に出て、一駅歩いた。
恐ろしく寒いというわけでなく、飲み歩きには助かる。
十七時五分、出発の乾杯だ。
山手線外側は高架下の向こう、そちらへ進む。
前回の飲み屋街はすぐそこのさかえ通りにある。
学生の頃は毎晩この辺りで飲み歩いていた、というわけでは無い。
当時は我慢のきく貧乏学生だったから、遊び歩く事は無かった。
人生を損した気になるが、無為に過ごせる時間を持つのは若さの現れといったところか。
すぐ現れる路地を左折。
ここのミカドには行ったことがない。
覗いているケバブも前からあるが、食べたことはない。
野郎ラーメンはよく行く。
今回はここを真っ直ぐ行くだけで良いらしい。
すぐに駅前感がなくなり、道に変じる。
飛行機雲が、たまたま撮れた。
ここは一応、新宿区である。
空が狭い理由をそこに押し付けておこう。
モード学園コクーンタワーがそびえているのが見える。
あの偉容を遠くに眺めやるのにうってつけの路地だと感心した。
環状赴くまま、初の落書き。
これは新宿区の所為というよりは、まだ夕日が明るいために発見できたという事だろう。
ハイスコアガールのポスターも貼られていた。
私は、学生時代はアーケードゲームから大分距離を置いてしまっていた。
何をやっていたのかと悔やまれるが、思い返せば金がなかったのだろう。
良心的大衆酒場と銘打たれている。
その割には小綺麗で洒落ている。
好みが割れそうな店舗である。
北の早稲田口から南の戸山口へ来た。
そういえば普段、駅の北口ゴールで次回は南口スタートのようなことをしていたから、今回見てきたような街並みを観察していた事は無かったな。
馴染みのあった街を、つい知りたくなったのかもしれない。
ここまでに十分かかったが、改めて新大久保に向けて出発。
大通りではないから、ひなびた道が続く。
環状内側はこんな事は決してない、真逆だ。
駅前感はあまり無いが、店舗はあるにはあった。
が、預言CAFEというのが出てきて絶句した。
預言とは、そういう時に授かるものなのだろうか。
ここを歩道橋でまたぐ。
この地点から右を向いた様子が以下の写真。
アパートが邪魔だが、夕焼け時だ。
無機的な景観に囲まれた歩道橋を渡る。
すると、驚いた事があった。
以下、突き当たりまで道なりに歩いた写真で続ける。
落ち着いた良い道じゃないか。
遠くのビルに気を取られなければ、とても東京にいるとは感じさせない。
西戸山公園があったためだろうか、環状赴くままにおいてはじめての道という気がした。
木枯らしという風は秋から冬にかけて吹くのを指すようだが、それを連想させる陽気になってきたのは春への兆しということか。
なお、ここの突き当たりの少し前の右手には、
東京グローブ座があり、ひそやかながらも大きく堂々とした建造を誇っていた。
突き当たりからほんの少しだけ右に行ってから、そこを左折。
街の結界はそこに引かれていたのだろう。
ここから先が、新大久保エリアだ。
案の定、すぐさま韓国料理屋さん。
百人町文化通りと言うのか。
新大久保の観光ガチガチの本街には遠く及ばないが、進むほどに活気付いてくる。
文化通りの果ては、ゲームセンターとマツキヨ、飲み屋、パチ屋。
この街に来るみんなの目当ては、そこの向こう側にある。
本街のある山手線内回りではなく、次回も外回りだから、もしかすると次回は新大久保の裏の顔を垣間見れるかもしれない。
高田馬場戸山口から再出発し、比較的足速に移動したため、現在十七時三十五分。
駅舎沿いに十分、街の間は早歩きで二十分かかったと言う事だ。
駅前から踵を返し、今夜の飲み屋さんへ。
もちろん韓国料理屋さんに目をつけてきた。
こちら「味っちゃん」と書いて、まっちゃんと読む。
ダウンタウン松本さんのイントネーションだ。
職場の知り合いが十年以上前に紹介してくれたお店だ。
何号店かあるため、こちらにははじめて這入る。
サムギョプサルは二人前からで、一人で食べても良いのだが、カルビとハラミとを楽しんだ。
この手のお店のサービスとして小鉢が数点つくのだが(一枚目の写真)、たくあんとカッパが出てきて、キムチは有料というのがなんだか笑えた。
それでも、新大久保に来たら、朝っぱらから飲むのでも無い限り、また味っちゃんを選択するだろう。
編集後記
二月号もなんとか刊行できた。エージェントYシリーズ(もうタレ、ヨモツヘグリ)は次号で完結、するらしいがどういう風に仕舞いになるか。四月からの事を考えたりしてしまうのが煩わしくもあるが、兎も角一年を締めくくることはできそうである。禍原一屰の酒客笑売については、四月からリニューアルしてメインコンテンツに躍り出る予定だ。環状赴くままは、四周するまで終わらないはずである。(総力特集は中途半端になるので落とすことにした、申し訳ないが次号にある程度の総括と展望の報告ができるはずだ)