【人生5.0】Junの一食一飯 #009 やよい軒【ONLIFE】

考えろ、考えろ。

俺たち人間て奴ばらにできるのはせいぜい考えることだ。

悩む前に考えろ、そしたら迷わず行動せよ。

時間が無ければ行動しながら考えたって良い。

土曜の昼食が毎週ラーメンではいけない、さりとてその隣にあるカレーというのも芸がない。

両方行くのはもう通用しない。

 

そんな中で、ちょうど思い当たったのがやよい軒さんだ。

身体はCoCo壱番屋さんとその隣にある家系ラーメン店さんの前まで来ていたのだが、考える力が、意志の力が勝利した。

流石アライアンスを代表するシステム、ピッチスペルである。

急いで身体を右へ九十度旋回し、少し先にあるそのお店へと向かった。

 

考えろ、考えろ。

相手はあのやよい軒さん、手強い定食メニューが勢揃い。

鯖か、唐揚げか、カットステーキも捨てがたい。

考えろ、考えろ。

悩む前に考えろ、そしたら迷わず行動せよ。

 

やよい軒さんはご飯おかわり自由だ。

そして、私はお腹がペコペコだ。

今日は濃い目の味付けで、ご飯をたくさん食べさせてくれる一皿にしよう。

鯖味噌か、生姜焼きか、茄子と豚肉の味噌炒めなぞはあるだろうか。

しかし、あれもこれも食べたい私の変態食欲を満たしてくれるのは、やよい御膳これも捨てがたい。

考えろ、考えろ。

今日の一食一飯、私個人対外食産業の決戦の様相を呈している。

 

そして行き着いた店頭に大きなポスター、カキフライミックス定食。

これだ!

外食産業から見舞われた強力なストレート。

季節のメニューに1ラウンドK.O.を喫した。

悔しくなったので、お茶漬け用のミニサバ小鉢を追加した。

塩焼きだ、照り焼きだ、手間暇かかったサバ味噌だ。

だから今日ならミニサバだ。

ご飯おかわり自由なのに、別定食追加なぞする必要がない。

 

食べたかった唐揚げも、ミニ唐揚げで追加しよう。

小鉢で彩りを添えるという、今までになかった選択肢に心が躍る。

大皿定食のお店はこうして私の食欲を満足させてくれるのか。

カキフライ三つと、エビフライ、アジフライ。

これらにはたっぷりタルタルソースを付けて食べたいから、も一つ追加して。

 

お味噌汁変更、貝汁か豚汁か。

いや、今回はやめておこう。

特に豚汁は、毎回変更しているとそういう人になってしまう。

変更しないという選択もアリなのだ。

いや、しかし、納豆汁にするのに納豆を買おう。

この提案は良し、群を抜いている。

 

あ、それとあと、〆にはササっと卵かけご飯にしよう。

ご飯おかわり自由を徹底的に逆手に取るのだ。

卵購入、追加はこれくらいで良いか。

食券の束が腸詰めみたいになってぞろぞろと出て来た。

こういう事ってあるのか、なんだか笑える。

結局、やよい軒さんは色々と食べる分にはイイ感じ感じ検定準一級だ。

これはかなりイイ感じ。

今回は注文しなかったが、牛肉のすき焼き小皿や、天ぷら小皿もある。

席に案内されてから改めてメニューを眺めていて吹き出してしまいそうになった。

定食メニューには「なす味噌と焼き魚の定食」という欲張りセットがあったのだ。

もちろん焼き魚はサバの塩焼きである。

あんなに考えていたんだから、総合的に判断して正解はこちらである。

 

考えていたにもかかわらずカキフライに飛びつくあたりが、人間の愚かしさ。

しかしながら、エビ&アジフライの助太刀があっては敵わなかった。

よくよく考えれば、単品でカキフライ二粒から追加できるのでそれでも良かった。

去年の雪、今いずこ。

されど、反省があるのは考えていた証拠だ。

 

さて、本日のランチがLaunch、榴弾みたいなカキフライ。

定食とミニ唐揚げについているキャベツを先ずそれぞれ食べる。

甘いお豆とか生野菜は先に食べ、メインばっかりでご飯を食べたい。

やよい軒さんのキャベツにかけられているゴマドレッシングは大好きだ。

これでご飯を食べたくなるような絶妙な味付けである。

 

解き放たれた獣のようにカキフライをタルタルソースで食べる。

もう三個全て無くなってしまった。

今やテーブルの上には、エビ&アジフライ定食が置かれているばかり。

山椒魚で有名な井伏鱒二はユーモアとペーソスの作家と言われるが、訳せば諧謔と哀愁という事になるから少し可笑しい。

エビ&アジフライ定食には諧謔と哀愁があった、確かに。

タルタルソースは予備がまだ一皿ある、これは頼もしい。

 

心を落ち着かせるために納豆でもかき混ぜようか。

お味噌汁の中に入れて、よし、これで落ち着いてご飯のおかわりに行けるな。

接触厳禁の今を生きている我々に、文明の利器が優しく微笑んでくれる。

「ごはんおかわりロボ」である。

粘っこく青々した若葉のような優しさを、このロボットは文字通り振り撒く。

これで型式番号がED-209とかだったら苦笑しかしないが。

 

並盛にした二杯目のご飯を、ミニサバで掻っ込む。

もうなくなってしまった。

ミニサバはサバの半身の五分の一程度の大きさだからだ。

本来なら、出汁茶漬けにしてサバをほぐしてたっぷり楽しむためのものを、パッと食べてしまった。

呆けて納豆汁をすする、美味しい。

食べてしまったサバを嘆いても仕方ないので、唐揚げをパクつく、美味しい。

 

しまった、テーブルの上が閑散としている。

エビ&アジフライ定食になってしまった。

注文しすぎたものはことごとく眼の前に無いので、元々何だったかも判然とせぬ。

判然とせぬままに残されたものも食べた。

最後に卵かけご飯だけが残ったが、それも食べてしまった。

人生の縮図であろうか。