【人生5.0】境界性と観るSociety5.0【ONLIFE】

糞CIETYじゃねーか!

Jun「急にどうした?」

Jun「まぁ、読んでくれ」

真っ黒なサングラスをしたキッズ(成人済み)がエキサイトしている。

自動車後部座席で、眼鏡一体型HMDを使用してサッカー観戦をしていたようだ。

運転席には誰も居ない、自動運転でハンドルが左右に動いている。

シアターモードを解除すると、少々残念な素顔が顕になった。

TSUMUGU FCが先制、薄膜型仮想ディスプレイに表示される。

ここでタイトル「Connect future〜5Gでつながる世界〜」

庭先から見上げた空が映し出され、ドローンが向こうへ飛んでいく。

 

Jun「ねえ、ここまで20秒、あと3分以上あるんだけど」

Jun「いいじゃねーか、読めって言ったのお前だろ」

Jun「でももう書くのメンドくさくなってきた」

Jun「書くのが担当だろ!!」

ここでお爺さんお婆さんが登場、淹れたお茶を飲んでいる。

お爺さんは手元の端末で先ほどのドローンに進路変更の指示を出した。

お婆さんは和室の姿見鏡越しに医師から検診を受けている。

「すぐに良くなると思いますので、安心してください」

深々と頭を下げるお婆さん、そばには2人の孫たちと撮った写真。

 

Jun「それほど遠くない未来。あるところにお爺さんとお婆さんがいました」

Jun「お爺さんは家の端末を操作しドローンに指示出し」

Jun「お婆さんは家の鏡越しに検診に行きました」

Jun「なんかいい話じゃない、近未来おとぎ話」

Jun「まあ、最後まで読めって(苦笑)」

「この景色に合う曲に変えて〜」

後部座席のバカっぽいキッズが変な声を出す。

「分かりました」

イヤフォンからオペレーティングシステムの無機質な音声が返事をする。

不具合を装って山道から転落させられるのに、バカに対しても敬語だ。

何故か感じるAIの悲哀。

 

Jun「オイ、主観入れるのヤメろ!」

Jun「全4分あるうちまだギリ1分経ってねえからさ…」

田舎道の途中、自動運転車から降りて寄ったのは朝日屋商店。

いわゆる田舎のコンビニである。

キッズだがこんにちわの一言くらいは言えるようだ。

しかし、返事は無い。

店番は留守にしているのであろうか、あるいは…。

キッズお構いなしに小袋の菓子、板チョコレート、ペットボトルの麦茶を取って店を出る。

既視感満載の演出で、キッズの腕時計に会計処理が伝達された。

¥482円

 

Jun「おい待て、物価どうなってる」

Jun「うるせえな、先書けよ!」

Jun「でもこの頃の消費税は42%くらいになってるから嘘…」

Jun「また主観じゃねーか!続けろ!!」

店を出てぶらぶら始めたキッズ。

外国人バックパッカーが話しかけてくる。

どうやら道に迷って困っているようだ。

「ちょっと待って」

カナダ人相手に日本語でこれである。

近未来キッズは語彙にWait a second.も非搭載で効率が良い。

代わりに先ほどの腕時計が聞き取り、イヤフォンが翻訳を伝える。

これだけ見せれば後は十分。

道案内の様子は後ろ姿だけを写して終わる。

 

「すぐ準備するから、大丈夫だって」

ここでトラブルか、誰かと通話が始まった。

「大丈夫じゃないってば」

「もうすぐ着くから」

「昼過ぎに着くって言ったじゃん」

相手は写真にも居た姉だろう。

こちらは近未来芦田愛菜とでも例えようか。

都内アパートの一室、全身無印用品といった風情の部屋にいる。

田舎道は夕焼け空だが、一方で都内の天気は雲行きが怪しい。

「わかってるって」

にへら面でチンタラ歩くキッズ、お前さっきまで乗ってた車どうした。

反省している様子が一切感じられず、視聴者の怒りは沸点へと着実に上昇を始めている。

「てか今どこにいんのよ」

「ねえ、ちょっと」

芦田愛菜が視聴者の代弁者だ。

キッズの意図、というよりこの動画のコンセプトがイマイチ分からない。

近未来ガジェット満載なのは良いとしても…。

「ちょっと待ってて」

キッズ、さっきからこんなのばかりである。

だが…。

垂直浮遊型360°レンズ搭載カメラを投げ上げ、周囲の風景を芦田愛菜に送信。

受像は腕時計型端末を経由して、芦田愛菜の網膜一体ディスプレイに投影。

分裂症収容所のような一面真っ白の部屋の中でも同じ景色を見る事ができる。

 

姉の苛立ちをカネと技術で解決したキッズ。

辺りはもうほとんど夜だ。

お婆ちゃんが呼ぶ声が聞こえる。

こうたと言う名前らしい。

「遅かったねえ」

「ごめんごめん、色々あってさ」

「どうしたの急に」

「えぇ?てかさ腹減ったよ婆ちゃん何か作ってよ」

Society5.0に於いて、遅刻という観念は最早ない。

なぜなら、そこは理想郷だから。

換言すれば、新しい価値やサービスが次々と創出されているから。

 

Jun「オイ」

Jun「何?淡々と書いてるのに」

Jun「Society5.0の揶揄がしたいだけだろ」

Jun「違う違う違う違う、揶揄はただの芸風!先行こう」

縁側に祖父母の二人を呼び出し、座らせたキッズ。

周辺には電球を吊るし、特別な夜の空間を演出している。

「これかけて」

眼鏡一体型HMDを両者に手渡す。

「何にも見えないよ?」

「まだ何にも見えないよ」

 

Jun「オイ、ここ」

Jun「うるせーよw俺らの芸風なわけねえだろww」

キッズが芦田愛菜をホログラムで呼び出す。

「お爺ちゃん、お婆ちゃん、元気?」

「おぉ〜、なんだよ」

お爺ちゃんは近未来技術の洗礼を受けてたまげている。

「今日は仕事で行けなくてごめんね」

ここで、近未来にも仕事はあるという現実が知らされる。

だが、彼女は一日中、待っているばかりで労働をしていたようには思えない。

サナトリウム染みた真っ白の部屋に居ただけ。

嘘も方便ということだろうか。

 

「今日は何の日か覚えてる?」

「何の日?」

お爺ちゃんお婆ちゃん、お互いに向き合うもいまひとつピンときていない。

「じゃあ、バンドもカモン」

キッズがホログラムをさらに呼び出す。

ドラム、サックス、ベース、ギターの四名だ。

全員揃って、金婚式おめでとうの掛け声。

キッズはトランペット、芦田愛菜はキーボード。

ここはレイテンシー問題の一切が解決された未来だ。

賑やかなスカの演奏とともに老夫婦の笑顔が映し出される。

5Gのコンセプトロゴ、画面暗転。

総務省ロゴ。

Jun「で、このストーリーをどう読み取れと」

Jun「まぁ、聞けよ…
これはお爺ちゃんお婆ちゃんが施設で見させられてるヴィジョンだから!」

Jun「全身からチューブ出てる?」

Jun「オイ!俺を超えるな!」

Jun「貴方に脳内物質届けます、だからYou Tube」

Jun「悔しいからこれ以上巧いこと言うの止めてくれ!」

Jun「by糞務省」

Jun「その心は?」

Jun「スカが流れた」

 

では、ご覧ください。