10年の節目と思えば感慨深い。
社会人1年目から毎年、夏期研修で長野県戸隠へ赴いた。
今回、現地の蕎麦に関する報告を、【決定版】と銘打ってお届けする。
早速総論から。
まずは、筆者が現地でお気に入り登録している地図をご覧いただきたい。
戸隠蕎麦は2店押さえておけば十分。
奥社参道入り口「なおすけ」と、中社正面の路地「しなの屋」だ。
この二店を推薦する基準は以下の通り。
① 戸隠参りで絶対に外すわけにいかない社の傍に位置し、
② 特殊性において他店より優位にあると認められ、
③ 筆者の限られた守備範囲で来店可能であること。
ハッキリ言って、こんな観光地の客商売にハズレがあるはず無い。
一生に一度の戸隠参拝ならば、目についた蕎麦屋に入って何ら問題ない。
奮発して天ざるにでもすれば良い、どこだって満足させてくれる。
だったら、何故こんな記事を残すのか。
分からぬままに書き始めたのである。
以下各論、先ずは「なおすけ」から。
Google Mapsは、せいぜい縮尺が正確な程度なので、併せてこの地図もご覧頂ければ現地の様子を想像する一助になるかと思う。
昨年訪れた際に、中社向かいにある観光情報センターにあったものだ。
戸隠は大きく2つの地域に分けることができ、ここは奥社周辺エリアの地図。
奥社とは、戸隠に伝わる岩戸伝説にまつわる、天手力雄命を祭神とする社だ。
さて、県道36号(信濃信州新線)を折れ、随神門へ向かう途中に「なおすけ」はある(随神門から先は樹齢400年の杉並木がおよそ2キロと、数えたことはないが一説には270段の石段の上に九頭竜社と奥社)。
参拝者に向けて熊笹ソフトクリームを出しているから、アコギな商売をしている印象だと早合点してはならない。
新しい木造りで落ち着いた店内は、満席でも窮屈に感じる事は無い。
突き出しは、歯触りの良い山菜の漬物、さほど大げさではない。
この店が出す蕎麦が異形。
激辛鴨ざるそば(¥1,650)+追加10ぼっち(¥120×10)
有り体に言えば、韓国ラーメンの一番辛いののつけ蕎麦版だ。
「ぼっち」とは、戸隠蕎麦に特有の一口分に盛られた束の事。
1人で16ぼっち注文したので、最早ぼっちで盛られてすらいないが。
この店のおススメは、鴨ざるそば(¥1,550)なのだが、その激辛版。
まあ、辛いです。
初めて入る焼き肉屋の辛いスープは
「今まで店で出た一番辛い奴の一つ上で。」と注文する筆者でも辛く感じた。
こういう変わり蕎麦は都内でもそうそう無い、だから良い。
さらに言えば、県道36号に用意された参拝者用の駐車場隣にある「奥社の茶屋」が、観光客ホイホイとして機能しており、「なおすけ」の評価がさらに高まる。
そう、観光客ホイホイと言えば、江原〇啓之が10年以上前に戸隠を絶賛したそうで、そういう二度と戸隠に来る気も無いような連中がクリボーレベルの初見殺しの餌食になるのは、霊験あらたかの極みで思わずありがたや~と口から発してしまうレベルなのだ。
知り合いの宮司の家系の60手前のおじさんは
「そういう人たちが伊勢神宮に行かずに戸隠に来るのは不思議だ。」と身も蓋も無いが真実に相違ない事を言っていたのが印象深い。
「なおすけ」の天盛り(¥1,030)+ヱビス中瓶(¥620)
天ぷらはどこの店でも美味いだろうが、ラッキーヱビスとは景気が良い。
筆者はこれで、嬉しい再会に恵まれた。
さて、奥社周辺エリアから、ついでにあと2軒。
県道36号をさらに奥へキャンプ場まで行った先、戸隠牧場。
戸隠蕎麦の北限がここにある。
狛犬のように向かい合った2軒の蕎麦屋。
そのうち向かって左側、「岳」。
キャンプ場を拠点としているなら、他所まで足を延ばさず是非ここにすべきだ。
人気店だが、五月蠅さが無い。
他店は暗いが、ここは半テラス状で明るく涼しく快適である。
突き出しはたしか、さわやかな大根のお新香。
夏野菜の天ぷらは、ズッキーニ、さやえんどう、茄子、大葉、トウモロコシなどなど。
スタンプ10個で天盛りorざるそばサービス。
ちなみに、ここの向いの「白樺食堂」はなんと、突き出しが天ぷら。
ははは、悪い冗談だ、早まっちゃいけない。
奥社周辺エリアから最後に、県道36号沿い「そばの実」。
車で移動していれば嫌でも目に付く店である。
流して走っていれば「駐車場広いな、後で来よう」と誰もが思うはずだ。
だから混む。
30台停められるという駐車場が満杯というのはよくある。
口コミ上位の常連だが、前述の2店舗でいいだろう。
必ずしもここでなければならないという理由はないのだ。
突き出しはかりんと。
土産に買っていけと言わんばかりのこれが個人的に一番嬉しくない。
ここからは後半、中社周辺エリアの紹介。
中社の祭神は岩戸参謀で有名な天八意思兼命。
合格祈願はここで(奥社は必勝祈願なので注意)。
この中社の目の前にある「うずら家」。
このエリアの観光客ホイホイはここだ。
荘厳で険しい奥社と変わって、中社は土産物店や宿坊、飲食店が多く軒を連ねている。
そんな中社の正面、いわば戸隠の商業のど真ん中にある「うずら家」は他の口コミサイトでも筆頭に挙げられるほどだ。
だからここでは食ったことが無いし、食わなくても分かる。
誰もが口コミをあてに来店し、他店と大して変わり映えしない蕎麦に満足して帰っていくのだと。
混んでる店と並んでる店で入っていいのは、パチ屋か焼肉屋ぐらいだ。
「しなの屋」は、そんな中社から県道36号を渡った先の路地にある。
大ざるそば(¥950)、7ぼっち。
言ってしまえば、普通の戸隠蕎麦だ。
前述の「そばの実」だってこれとさほど変わらない。
店の雰囲気が違うくらいだ。
「しなの屋」は2階にある座敷のみで、そこに差し込む柔らかな陽光が心地良い。
ここを紹介する理由は、突き出しのそば饅頭。
あんこが入ってカリッと揚げ焼きになったもちもちの饅頭に、ぺっとりとしょっぱいタレが付いており、散策で汗をかいた後の塩分補給として身体が喜ぶ。
これが水分補給のビールにも合う。
写真は、食後に全員で一つずつ追加したもの。
持ち帰ってその日の夜のツマミにしても良し。
日持ちする土産は、最早土産と呼ばないのだとすら思われる。
日持ちする土産が欲しければ、どうせ同じ長野県だから真澄でも。
県道36号に戻って坂を下っていくすぐ途中にある酒屋、越後屋商店で。
ぺーぺーの頃でも食い意地は汚かったので、女将さんに一番うまい酒はどれかと聞くと、真澄の蔵元がその名を冠して造っている「みやさか」を勧められた。
保冷手段が無い場合はクール便で送ってもらうことになるが、美味。
店内入って左に冷蔵庫が3つあり、真ん中下段にいつも置いてある。
年に一度、一瞬の訪問なのだが、その酒を手に取って会計へ行くと女将さんは嬉しそうに
「それは美味い酒ですよ。」とか「酒の味、知ってるね。」なんて言ってくれる。
のだが、昨夏はそれが見当たらず、聞いてみると「みやさか」は名前を変えたんだという。
今後はただ「真澄 出荷年」とだけ。
さて、上記の店舗を一覧にすると(増税で値上げの可能性があるのは御容赦)
店名 |
ざるそばスペック |
突き出し |
備考 |
なおすけ |
6ぼっち¥900 |
山菜漬物 |
激辛鴨ざるそば |
しなの屋 |
5ぼっち¥800 |
そば饅頭 |
そば饅頭 |
奥社の茶屋 |
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観光客ホイホイ |
うずら家 |
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観光客ホイホイ |
岳 |
5ぼっち¥800 |
お新香 |
夏野菜の天ぷら |
白樺食堂 |
5ぼっち¥800 |
天ぷら |
戸隠北限 |
そばの実 |
5ぼっち¥860 |
かりんと |
駐車場30台 |
どこも良い商売をしてるなと思わずにいられないから腹が立ってきた。
まず、ぼっちという盛り方が、観光客に媚びているようで気に入らない。
そもそも俺は蕎麦を食って美味いと思ったことが無い。
別物だ、とは思うが。
だいたい、蕎麦なんてものは痩せた土地の名産品なのだ。
痩せた土地だから蔵は立たずに修行の地となるのだ。
なるほど、粉ものを扱っているのは的屋さながらというわけか。
俺が書きたいのは戸隠礼賛ではない。
蕎麦と言う商品の皮肉な料金設定についてさらに踏み込もう。
どこも大抵は、大ざるとなると150円増しで2ぼっち追加が相場だ。
七口で千円、マカロンの次に高い。
腹一杯14ぼっち食うためには、大ざる×2=2000円の出費を覚悟する必要があるかもしれない。
しかし、「なおすけ」には特ざるそばが用意されており、10ぼっち1300円で頂くことができる。
さらに、量を選べないとろろざるそばや、辛み大根おろしざるそばのような商品のために1ぼっち120円で追加が可能。
なんかもう、まとめていたら他店を選ぶ理由が無くなってきた。
我が半生をかけた報告は以上、以下補足。
戸隠神社について。
戸隠山のふもとを戸隠と呼ぶが、ここ一帯に五つの社が点在しており、まとめて戸隠神社と呼ばれている。誰が言い出したか知らないが、こじ開けられた天岩戸がこの山に刺さったことから戸隠と命名されたそうだ。よって、社には、岩戸伝説に由来する神々が祭られており、修験道の霊場としても名高い。蕎麦巡りに合わせて、五社巡りもすれば知食共々満たされるだろう。モデルコースをここに提案する。
まず、坂の一番下に位置する宝光社からスタート。いきなりで恐れ入るが300段弱の石段に出鼻をくじかれそうになる。ここに祭られているのは天表春命。参拝してすぐ近所に火之御子社。御存知、天地開闢以来最初のストリッパー、天鈿女命を祭っており、芸能に関してはこちらに参るのが大原則。この後、坂道を登りながら商店を行き過ぎ「越後屋商店」で真澄を注文。「しなの屋」で食事。付近の土産物店を物色したら、中社で合格祈願。ここには天八意思兼命が祭られており、樹齢900年の三本杉は天然記念物に指定されている。
中社から奥社までの距離が開いているので、県道36号を登っていき「そばの実」のすぐ手前を鏡池に向けて折れる。鏡池の景色は大河ドラマ真田丸のOP冒頭で使われている。ここの「どんぐりハウス」でガレットというのも、蕎麦の違った楽しみ方だ。この先は自然散策道の表示に従って、まっすぐ随神門へと進む。随神門から2キロの杉並木、200段を越す石段。まず、地元で信仰されている九頭龍を祭る九頭龍社があり、その少し上に奥社がある。奥社に祭られているのは、天手力雄命。ここで必勝祈願を行う。帰り道は下りなので助かる。「なおすけ」でもう一度蕎麦を楽しみ、県道に出ればすぐ目の前にバス停がある。
ん?蕎麦に飽きた?なら「小鳥の森」が良い。一日限定五食と聞くと焼きカレーを選びたくなるが、ここは岩魚のパスタで。