【2023秋号九月分】環状赴くまま #023 目黒ー五反田【キ刊TechnoBreakマガジン】

不快な蒸し暑さから解放されつつある九月下旬の土曜。

18:30、前回解散した目黒駅前から出発。

我々の背面には、客入りが悪そうでありながら地の利を活かしてしぶとく存続しそうなパチ屋があるのは前回の通り。

駅に向かって右手のビル。

ここの右に路地あり。

今回進んで行く道はそちら。

どうだろうか。

出発して秒で、もうすでに駅前感が失われてしまったのに気付いただろうか?

衝撃である、ここが目黒だと答えられる者もそうあるまい。

路地這入ってすぐに洒落たバー、こういうのがあると目黒にいるんだと安心する。

洒落たバーなぞ何処ででも営業しているだろうが、目黒に在って欲しい一軒。

右上に十字架が見えるが、カトリックの施設が複数寄り合っているようだ。

いつもの線路沿いは渋谷区からあまり変化が無いように見える。

陽が出ていれば印象は異なるのだろうが。

季節感の無い私はハロウィンイベントかとトチ狂ったことを思ったが。

何らかのパーティ会場のようだ。

出入りする男女が散見された。

この日は9/30だった。

Shoに覗いてみるかと言ってはみたが、我々はすでにエビスの缶を飲み歩いていることだし、わざわざ割高なクラフトビールを、カップルたちに混じってまで飲むことは無いと結論した。

大通り、都道418号に出た。

左手は山手線の高架下。

頭上には首都高速2号目黒線。

目黒ー五反田間の境界と言えるか。

横断歩道渡って、さらに進む。

路地の寂しさは変わらない。

が、すぐに雰囲気は様変わりして駅前が現出。

ホテルが軒を連ねている、これが五反田だ。

五反田に対する先入観のほとんど全部がこの景色に詰まっている。

西五反田だからNISHIGO。

カジュアルスナックとあるが、比較的廉価なキャバクラの類と言えよう。

この界隈は高くつくのだろうね。

こういう所の「大衆」にはつい良心を期待してしまう。

餃子と唐揚げ、贅沢を言わない労働者には十分すぎる優しさだ。

路地から再度、大通りに出た。

今調べて驚いたが、これは国道1号なんだそうな。

国道1号はこの向こうずっと行って日本橋から始まり、大阪府大阪市梅田で終わるのだという。

ちょっと吃驚、五反田が国道1号の経絡となっているというのはヒストリックで感慨深い。

裏通りの印象を全く感じさせない味気ない駅ファサード、恵比寿も目黒も、何なら大塚駅前もこんな感じにJRナイズされていると言える。

秋田料理わったりぼうずさんにお邪魔した。

どこも値が張りそうな中、こちらにお邪魔してもそう損な感じはさせなかったためだ。

豚肉と玉ねぎをジンギスカン鍋ですき焼き風にする「十和田バラ焼き」をメインに。

一人前丁度千円、これなら悪く無いだろう。

かさごの唐揚げ、これなんか雰囲気を食う料理な感じがするが。

気軽に注文する物では無いが、まあ美味いは美味い。

それと刺身盛り合わせ。

まぁこういうのもどこでも食べられそうな気はするが、鮮度は良く感じた。

他にお客も少ない中で、よくもてなしてくれたように思う。

次回は大崎。

行ったことの無い土地が続くが、地図を見るとすごく短距離である。

【2023秋号】第六回戦 鬼謀 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

8/12に決した前回の戦いから、丸三週間が空いた。

その間に何をしていたのか記憶が定かでないのは忙殺されていたからか。

一回戦は駒込駅前の広場で幕を開けた。

コンビニの缶ビールで乾杯し、一口飲むなり対戦の準備を始める。

今月のUncommonガール

【九月一回戦第一試合】

先攻Jun、手札には土地が豊富で赤緑二色土地をアンタップインし《執拗な仔狼》。

Shoは渋い顔だが、青赤の二色土地をアンタップインし《対称の賢者》。

「チッ、イゼットウィザードか」

「ずっと組みたいと思ってたデッキだったんや」

これで、四月にShoが持ち込んだイゼットジジィこと『アンクルファイアー』はデッキとしても解雇がほぼ決定した(最終戦では同色デッキの使用を禁じているため)。

Jun《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》を召喚、《仔狼》の強化をパワーカードに手渡してエンド。

Sho《損魂魔道士》を召喚してエンド。

Jun3/3の《ラヒルダ》で攻撃するも、Shoが手札から《火遊び》を放つ。

見落としていた《損魂魔道士》の効果により、2点のダメージが−1カウンター二つに置換され、《ラヒルダ》は1/1サイズになってしまう。

さらに、《対称の賢者》は3/3にサイズアップして《ラヒルダ》を迎撃。

これ以降、運悪くJunは土地以外のカードを引き込むことができず、Shoはクリーチャーを毎ターン展開し続け六分かからず快勝。

【九月一回戦第二試合】

先攻Jun、手札に土地が一枚でマリガン、その後もクリーチャーは《結ばれた者、ハラナとアレイナ》一体しかないのだがやむなくマリガンせず。

Sho《対称の賢者》、《戦慄衆の秘儀術師》の相互作用で速攻ビートダウン。

土地四枚から《静電気の放電》を《結ばれた者》に打ち込んで排除、唱えられた呪文に誘発した《対称の賢者》の能力で《秘儀術師》が3/3にサイズアップ、Sho《魔術師の稲妻》を唱えJun本体に3点、唱えられた呪文で再度誘発した《対称の賢者》の能力で今度は自身を3/3にサイズアップ、二体の攻撃から《秘儀術師》の能力が誘発し墓地の《静電気の放電》が唱えられJunに4点、攻撃が素通りして6点、合計13点を一挙に奪ってゲーム終了。

Jun、《ドゥームスカール》による全体除去をなぜか渋って墓穴を掘る形。

五分かからずShoの快勝。これで二連覇に王手。

【九月二回戦第一試合】

後攻Junの手札が最上の揃い具合。

青黒二色の土地三枚、一ターン目《よろめく怪異》、Shoの二ターン目終わり際に《命取りの論争》、三ターン目に二つの宝物トークンも使用して《碑出告と開璃》を召喚。

だがここで肝心のキーカード《爆発的特異性》までもは二枚挿しのため引き込む事は出来ず、《オークの弓遣い》が三枚全部引き込めたのはせめてもの救いか。

この間Shoは《対称の賢者》、《損魂魔導士》、《戦慄衆の秘儀術師》と展開。

《魔術士の稲妻》を《碑出告と開璃》に打ち込むと−1カウンター三つ分として置かれ、果敢持ちの《損魂魔導士》は2/3、《秘儀術師》は《対称の賢者》の魔技の誘発で3/3に。

続いて《導師の導き》はドローがコピーされ、誘発された魔技は《損魂魔導士》を対象に取りコピーされた分の果敢も含めて5/4、コピーされた魔技は最後に《対称の賢者》を対象にして3/3。

これら三体のクリーチャーで総攻撃、《戦慄衆の秘儀術師》の能力が誘発して《魔術士の稲妻》が再度《碑出告と開璃》に撃ち込まれて撃墜。

3/3、6/5、3/3により12点ダメージを与えてJunは一発で残りライフ8。

細々と書いたが、双方三ターンでブン回りしたものの、Junの引きが一歩及ばず窮地。

Sho土地三つ、クリーチャー三体、手札三枚、ライフ20。

Jun土地三つ、クリーチャーなし、手札ドローして八枚、ライフ8。

この劣勢を覆せず、《無謀なる突進》で強化された二体のクリーチャーたちの攻撃で敗北。

遂にSho二連覇にチェックメイト。

【九月二回戦第二試合】

Jun先攻、しばし沈黙の後に初手でゴーを決心したShoへ《コジレックの審問》、これによりSho手札に唯一のクリーチャー《戦闘魔道士の隊長、バルモア》を落とされてしまう。

Shoは四ターン目までクリーチャーを引き込むことができない。

その間Junは、《真っ白》による二枚ハンデス、《よろめく怪異》、Shoのキャノピーランド起動に対応した《オークの弓使い》と展開し盤面を固める。

雌雄を決した瞬間は、Shoが《ドラゴンの怒りの媒介者》に加えて《バルモア》を召喚した後に《魔術師の稲妻》をJunに撃ち込んだ返しのターン。

Jun土地五枚フルタップにして渾身の《絶望招来》、Sho手札一枚でライフ7、Jun手札四枚でライフ12。

Junのクリーチャー二体に対し、どちらでも止められるように立っているShoの《バルモア》に向けて、Jun《しつこい負け犬》を奇襲コストで召喚して三体でアタックが最後の一撃であった。

【九月二回戦第三試合】

先攻Sho、Junはマリガンでこれだけでも幸先が悪い。

三ターン目、Shoの盤面には《損魂魔道士》二体と《対称の賢者》、Junは先ターンに《命取りの論争》で追加コストに《よろめく怪異》を生け贄に捧げたため宝物トークン二つのみ。

四ターン目にShoが総攻撃を仕掛ける、《よろめく怪異》に《絞殺》を撃ち込むと魔技が誘発して《対称の賢者》が3/3、さらに《損魂魔道士》の果敢が誘発し二体とも2/3に、そして極め付けのJun本体への《魔術師の稲妻》二連発により魔技二回と果敢二回が誘発、最終的にライフ12のJunに向かって6/5、6/5、3/3のクリーチャーがアタック。

しかしながら豊富な宝物トークンの内から一つを使用し、Jun《オークの弓使い》を瞬速で召喚、二体の《損魂魔道士》をオークトークンと共にチャンプブロックで凌ぐ、ライフはSho17対Jun9。

ターンもらってJun、ここぞとばかりに《ギックスの命令》を唱える、Shoのクリーチャーたちは一掃され、墓地から二体のクリーチャーが手札に収まる。

Shoはその後《レンの決意》で引き込んだ三枚目の《損魂魔道士》や《戦闘魔道士の隊長、バルモア》二体、それぞれ《絶望招来》、《ヴェールのリリアナ》の−2能力、《ギックスの命令》などにより次々に捌かれロック状態から抜け出せない。

最後は《ファイレクシアの抹消者》が殴ってグッドゲーム。

展開が噛み合ったことに助けられ、Jun辛くもShoの連勝を食い止めた。

【九月三回戦第一試合】

先攻Sho、マリガンして青赤の二色土地をアンタップイン、《損魂魔道士》を召喚。

今月は余程の自信があるのか、一貫してイゼット・ウィザードを使っている。

後攻Jun、赤緑の占術土地をタップイン。

今月は白赤緑→青黒→赤緑の流れで現状最強のデッキへと繋げるということを二ヶ月前から画策していたのだった。

Sho《戦慄衆の秘技術師》、ターン貰ってJun《辺境地の罠外し》。

これを除去したいShoは三ターン目《棘平原の危険》を《罠外し》に撃って1点ダメージ、さらに《秘儀術師》の攻撃に際して能力が誘発、再度《棘平原の危険》が撃ち込まれ《罠外し》死亡。

ターン貰ってJun《不吉な首領、トヴォラー》を召喚するも、次ターンに《静電気の放電》が撃ち込まれ《トヴォラー》死亡。

さらに《無謀なる突撃》を《秘儀術師》に唱えることにより、《静電気の放電》を墓地から唱え直す条件が満たされる、《損魂魔道士》と《戦慄衆の秘技術師》が4/5と4/3になってアタック、誘発した能力による《静電気の放電》はJunへと撃ち込まれ残りライフ3、投了して終了。

【九月三回戦第二試合】

Shoが三体展開したクリーチャーたちを、Junの《ナヒリの怒り》が一掃するものの、この時点で残りライフ8。

Sho《対称の賢者》の召喚に成功し《無謀なる突撃》で《賢者》に速攻を付与、さらに魔技が誘発し6/3で攻撃、第二メインで《魔術師の稲妻》をJunに撃ち込んで終了。

鬼謀は潰えた。

Jun二連敗、今月はShoのイゼット・ウィザード連打にやられてしまった。

レシピのあるデッキに負けるのは非常な不愉快で、さらなる連敗を止めたいJunは、次月のデッキ構成を大幅に変更することを決めた。

歪んだ三位一体の汚名挽回だ。

ちなみに、Shoのイゼット・ウィザードは『イゼット・ウィザード』という名らしい。

『アンクル・』なんちゃらじゃねーのかよ、ダメだろもう(笑)

今月のUncommonガール

【2023秋号】糞Jun 今月のHustleデッキ #002【キ刊TechnoBreakマガジン】

糞Jun

 ただクリーチャーで殴るのが気に食わないから、手札を破壊したくなる。相手の呪文を打ち消したくなる。それを一緒にしたくなる。だから、青黒デッキには夢がある!まぁ、相手からすれば悪夢かもしれないな。そんなわけで、前回紹介した赤緑人狼コントロールの翌月は、青黒ディミーアカラーのデッキでULSのバトルに殴り込んだぜ。戦果はこちら側の敗北で、悪夢を見たのは俺の方だったんだけどね!

デッキ名『ディミーア・ハイブリッド』

 先ず黒い方から見ていこう。手札破壊の担当は序盤に強い《コジレックの審問》が4枚、1対2交換が可能で墓地対策まで付いて破格の《真っ白》これは2枚、以上だ。オイオイ《思考囲い》も4枚挿しHustleしろよって声が聞こえてきそうだけど、このデッキのキーコンセプトを盛り込むために泣く泣く枠を譲ってもらったんだ。ワイルドカード4枚使って交換してあるから、黒単デッキには絶対入れたいよ。

 さて、《思考囲い》の分まで働いてもらうのが《ヴェールのリリアナ》だ。プレインズウォーカーなのに3マナで召喚できちゃうんだから、おっそろしい女の子(?)だよね。+1能力で、相手も自分も手札を捨てる、これがメインの使い方。自分も手札を捨てるデメリットがあるんだけど、そんなの関係ねぇ!って気持ちでブッ放してるよ。−2能力の布告系除去は、単純に3マナの除去のオマケにパーマネントが付くって、こんなの認められ無いでしょレベルのパワーカード(体言止め)。

 そして−6能力が、対戦相手が展開したパーマネントをこちらが半々に分けて選ばせるというHustle極まりない奥義だ。3ターン目に順調に召喚できた《ヴェールのリリアナ》が無事ここまでゴール出来ると、大概は相手の手札がゼロで、土地が戦場に2〜3枚しか残らないことになるんだよね。この能力を起動して対戦相手のパーマネントを選別している時間って、めっちゃ気の毒で時間が過ぎるのをとても遅く感じるよ。ほら、視点を変えるのに慣れてるからさ!もちろん、砂時計一本分は時間をかけて選別してるからっていうのもあるケド。

 肝心の殴り役は、《ファイレクシアの抹消者》君に決めた!黒4マナのクアドラプルシンボルってのが尖っててHustleだけど、5/5トランプルの基本性能に加えて対戦相手がこのクリーチャー自身にダメージを与えちゃったらその点数の分だけパーマネントを生贄に捧げなければならないって、どんだけ優遇されちゃってるのよコイツ。俺はデッキ構築を細々考えるタイプなんだけど、ゲームの展開と回鍋肉は大味なのが好きです。他にはお馴染み《しつこい負け犬》。コイツは墓地から唱えてもそのターンだけは仕事が出来るから、《リリアナ》の能力で手札から捨ててしまってもあんまり罪悪感が無い、深夜に食べるおでんのこんにゃくみたいな存在だ。

 1マナ枠に《よろめく怪異》が4枚。殴り役では無いけれど、死亡時の誘発能力が−1/−1修正or宝物トークン1つ生成か選べて小回りが効くニクい奴だ。2ターン目に《命取りの論争》を唱えるコストに充てて宝物トークン合計2つから、3ターン目の《ファイレクシアの抹消者》召喚に上手く繋がれば理想だね。しかしながら、召喚したい本命クリーチャーは別にいるので後で紹介する事にしたい。

 それじゃあ、お次は青のカード紹介。なんだけど、青の枠は完全に打ち消しに割いている。3枚ずつ《かき消し》と《旋風のごとき否定》だ。《かき消し》は序盤に頼れる不確定カウンターで、呪文を唱えるために追加の2マナを要求し、支払えなければ打ち消すもの。《旋風のごとき否定》も不確定カウンターだが、要求するマナは4マナと増えており、スタック上の呪文や能力全てに対して支払いを要求する。ガンガンスタック上に誘発して行くヘリオッドカンパニーに対して打ち込みたいキャンセル呪文だね。ULSでは《リリアナ》の効果で打ち消し呪文をバンバン捨ててたから、ホントに黒単デッキみたいな動きだったけどな!

 このデッキの涙ぐましい努力の一旦は、切り詰めた土地を《ジュワー島の撹乱》1枚でやりくりしている点に確認できる。これは青の土地として戦場にタップインするか、2マナの不確定カウンターとして使用するか選べる柔軟性のある両面カードだ。柔軟性ゆえに支払い要求が1マナのみと最小限だから、お守り程度の1枚挿し。さらに別の土地兼用両面カードが《ゾフの消耗》、これはデッキに2枚。

 どうしてこの、6マナの4点ドレインを2枚採用したかの理由を紹介しよう。それが『ディミーア・ハイブリッド』のキーカード《碑出告と開璃》だ。このクリーチャーは、戦場に出た際にカードを3枚引いた上で手札の2枚を選んで山札の上に戻せる。そして、死亡した際に山札の一番上のカードを追放し、そのマナ総量に等しいライフを対戦相手から失わせ、さらにそのカードがインスタントかソーサリーならタダで唱えられるというもの。つまり《ゾフの消耗》を追放してやれば、マナ総量の6点+呪文の効果で4点で合計10点のライフロスを発生させつつ、自分は4点回復という高パフォーマンスを発揮するぞ。

 このムーヴを最大限に悪用するため、さらに2枚《爆発的特異性》を採用しているのがHustleの真髄だ!《爆発的特異性》は10マナの10点火力だから、Hustleラッキーが決まれば一発で20点致死量のダメージを叩き出せるぜ!この瞬間がたまらねぇんだ!(蒼天2)このデッキが『ディミーア・ハイブリッド』の名を冠しているのは手札破壊と打ち消しのみならず、このギミックを無理矢理組み込んであるからってワケ。

 全てはこのために、4枚挿したい《リリアナ》や《抹消者》を泣く泣く3枚に減らし、手札破壊や打ち消しも10枚以下の採用にせざるを得なかった。そしてULSの勝負に負けてマジ泣きするって言うね。俺はHustleに殉じるんだ!構築に悩んでプレイングは大味な糞Junと、試合中もうんうん唸って決断するShoとが対照的です。しかし、この青黒ディミーアカラーの強みはデッキ自体のポテンシャル以上に、この前後に使用可能になるデッキ展開との総合力で勝負しているという事に刮目していただきたい。(Shoに二本先取された八月の一回戦や激闘の九月の展開を参照)

 『今月の裏Hustle』このデッキは61枚目のカードを擁している。《否定の契約》だ。何と0マナで唱えられる打ち消し呪文で、格安メリットの代償に次のターンで5マナ支払えないとゲームに敗北してしまう。お守り程度に入れてはいるが、終盤のマストカウンターを土地フルタップの状態から奇襲的に無効化できるのはとても心強い。土地を引く確率が下がるのは《致命的御愛嬌》という事で。

デッキ

1 否定の契約 (AKR) 73

1 天上都市、大田原 (NEO) 271

4 コジレックの審問 (STA) 31

4 よろめく怪異 (HBG) 167

3 命取りの論争 (HBG) 150

1 ジュワー島の撹乱 (ZNR) 64

1 ストーム・ジャイアントの聖堂 (AFR) 257

3 かき消し (SNC) 49

3 旋風のごとき否定 (STA) 23

3 ヴェールのリリアナ (DMU) 97

3 しつこい負け犬 (SNC) 97

2 真っ白 (STX) 72

3 碑出告と開璃 (MOM) 228

3 ファイレクシアの抹消者 (ONE) 105

2 爆発的特異性 (NEO) 140

1 目玉の暴君の住処 (AFR) 258

1 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278

4 清水の小道 (ZNR) 260

4 闇滑りの岸 (ONE) 250

3 難破船の湿地 (MID) 267

3 マナの合流点 (JOU) 163

2 冠雪の沼 (KHM) 281

1 ボジューカの沼 (WWK) 132

2 ゾフの消耗 (ZNR) 132

3 オークの弓使い (LTR) 103

サイドボード

3 覆いを割く者、ナーセット (WAR) 61

1 絶望招来 (NEO) 101

2 巻き込み (SIR) 57

1 思考囲い (AKR) 127

2 不憫な悲哀の行進 (NEO) 111

1 覆いを割く者、ナーセット (WAR) 61

2 絶望招来 (NEO) 101

3 ギックスの命令 (BRO) 97

【2023秋号八月分】環状赴くまま #022 恵比寿ー目黒【キ刊TechnoBreakマガジン】

蒸し暑さも耐えきれない程ではなくなった晩夏。

恵比寿駅前の広場にて、盆踊りの光景が記憶を逆照射した。

18:40、乾杯してスタートする我々を幼児が眺めていた。

先月はステージが置かれていたこの場所を向こうへ進む。

小洒落たお店、いかにも恵比寿って感じだ。

思わず成城石井が正常に感じられてしまう。

路地入ってすぐ、先月のゴールだった居酒屋のたつやさん。

やきとんをやきとりと称している(詳細は先月の記事を参照してほしい)。

ここは右手に折れず、左方向へ。

前進方向の右手は坂道になっている。

早くも駅前感が希薄になってしまった。

坂を上がる。

やけに主張する。

魚まみれ眞吉さん、メニューは値が張る方。

ここいら右手のビルにスターダストプロモーションさんがあるらしい、名前くらいは知っていた。

まるで誘蛾灯である。

調べてみると、マーサーカフェ・ダンロさんというらしい、イタリアンのお店だ。

いつもの光景。

最近はこういう道を真空地帯と呼ぶようになった。

真空地帯と真空地帯とで、中古屋さんを挟んでみた。

店舗の違和感というか、目を引く感じが伝わってかと思う。

中古屋さんを左折して、線路沿いに出ることができた。

ABCアメリカ橋ビルという建築物。

左手にかかっているのがアメリカ橋。

その橋から向こうに見えるのは、恵比寿ガーデンプレイスか。

この光景には見覚えあり。

近所にShunメンバーが勤めていた時、ここまで押しかけて誕生日を祝ったのだ。

近くのファミマでエロ本を買って、その綴じ込みのオマケが、スマホでVRを楽しむためのキットだった。

すたみなばし、焼肉屋みたいな読み間違え。

アメリカ橋というのは愛称のようだ。

フェンスの目を縫って線路の光景。

この周囲は見晴らしがよく、恵比寿スカイウォークといいレンガ様に統一された一連の建築物群が小気味良い。

Shunメンバーの所へ押しかけた時には、この公園でShoと時間を潰していた。

今ならMTGアリーナでいくらでも時間を潰せるが、当時はストロングゼロくらいしか頼れるものがなかったし、それは飲みすぎると後に悪影響が出るし、難儀だった。

金が無かったのである。

タワマン?オフィスビル?

いずれにせよ、恵比寿恵比寿している。

俺はこういうのは社会人になる前から放棄してしまったのだ。

二十代の頃はそう判断した自分が恨めしかった。

前を向いて進む。

ここでShoが色めき立った。

「恵比寿の住人は地下シェルター完備か、結構な事ですな。マザー3でポーキーが乗ってた絶対安全カプセルに見える」

「おい、アレ見ろよ!巨大コンセントで大型メカの充電でもするんじゃねえか?」

ここの先を一度右折して迂回する。

さて、ここはどこだろうか。

目黒三田通りに出た。

出発からすでに三十分が過ぎている。

左へ向いて目黒駅方面へ。

「俺、水素って見るとドギマギするんだよ」

Shoの父親が引退前最後の仕事にしていたのが、水素水発生装置の製作と販売だったのだ。

仲間内では『詐欺まがい』と揶揄したものである。

モン・サン・ミシェルと言えばオムレツだが、ここのお店では良く見るとムール貝と書かれている。

調べてみれば、モン・サン・ミシェルはムール貝の産地としても名高いのだそうだ。

へぇぇ、狭かった視野が広がったのは嬉しい。

ここを通りかかったときには、やはり「詐欺まがい」と二人して声にしていたのではあるが。

道沿いが賑やかになってきた。

次の街の予感がする。

街と街とを、道がつないでいる。

左手はすぐ駅前だ。

創業月だからと言って出玉が良いとは限るまい。

詐欺まがい。

ゴール、19時20分。

この日の支払いはJunなので、お店の選択も私が行ったのだが、事前に四つほど目星をつけておいた所はどれも閉まっていた。

そのため、彷徨うことさらに二十分。

我々にとって、今や目黒は恨めしい街となりつつあった。

だが、こちらの居酒屋たつみやさんとの出会いで、万事解決した。

とくにこの鯛カマ、四百円。

安い、二皿目も注文した。

目黒価格の予想を下回る良店で満足し、夜は更けた。

【2023秋号八月分】第五回戦 恐慌 Uncommon Low Skirmish -珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

熱狂の七月三回戦から二十一日が過ぎた。

それは、あまりに途方もない、次のSkirmishに十分すぎる時間だった。

その日、Junは業務で出張のため、錦糸町のいつものパブに十七時過ぎに集合した。

先に入店していたShoはこの日は暑いからとビールを、Junも同じ理由でシードルと黒ビールのハーフ&ハーフを買って着席。

【八月一回戦第一試合】

先攻Junは初手キープ、後攻Shoもキープ。

黒の両面土地から《よろめく怪異》、Shoもこのクリーチャーの厄介さを知っていた。

死亡誘発能力で、対象のクリーチャーに-1か、宝物トークンの生成かを選べるのだ。

ターンもらってSho、部族指定をクレリックにして土地を出し、《月皇の古参兵》召喚。

他クリーチャーの召喚で1点ライフ回復、死亡しても墓地から再度召喚し直せるという、こちらも厄介な一マナクリーチャーである。

Jun、三ターン目に《ヴェールのリリアナ》、四ターン目に《ファイレクシアの抹消者》とお手本の様な展開。

しかしながらShoも四ターン目の返し、《月皇の古参兵》が二体いる状態で《祝福されし者の声》を召喚、+1カウンターが2つ乗って4/4のパワー・タフネスとなっている。

さらに、Junの抹消者に《次元の撹乱》をエンチャントし、これを完全に無力化してしまう。

そのままJun、為す術なく敗北。

Shoは《太陽冠のヘリオッド》までも戦場に出していた。

これでも双方、デッキぶん回りの結果である。

【八月一回戦第二試合】

先攻Jun、《コジレックの審問》による手札破壊を初手から二ターン連続で決め、さらに《オークの弓使い》を三連打、《ファイレクシアの抹消者》も戦場に出すなど大攻勢。

しかしながら、Shoの《太陽冠のヘリオッド》により絆魂の支援を受けた《光明の幻影》がしぶとくライフ回復を繰り返し、逆転負け。

白単ヘリオッドの強烈さが光った。

二試合連続、デッキぶん回り。

そのどちらともJunが一歩及ばなかったという結果である。

【八月二回戦第一試合】

先攻Sho、平地セットから《魂の管理人》、《月皇の古参兵》、《太陽冠のヘリオッド》、《婚礼の発表》と毎ターン展開していく。

後攻Junは先月の赤緑デッキ、初期手札はビートダウンもコントロールも狙えるのだがクリーチャーを展開していく流れに判断(ここで土地破壊路線に舵を切っておくべきだった)、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》から《無謀な嵐探し》と殴りつつ、《古えの遺恨》二枚を捨てて《ナヒリの怒り》を《魂の管理人》と人間トークンに撃ち込む(これも早計な判断だったと思われる)。

Shoはこの後、《スクレルヴの巣》や《セラの模範》などを召喚し、自陣にクリーチャーを呼び込むことで「ライフ回復→ヘリオッドの能力誘発」を計り+1/+1カウンターを増殖する盤面を強固にしていく。

Junは粘るのだが、Sho陣営にクリーチャートークンたちが大量生産され、十五分を越す長丁場を押し切られてしまう。

双方理想的な初期手札の様だったがJunの判断ミスで今月のULSにShoが王手をかけた。

【八月二回戦第二試合】

先攻Jun、《辺境地の罠外し》、《不吉な首領、トヴォラー》、《大いなる創造者、カーン》と毎ターン展開。

後攻Sho、《月皇の古参兵》、《スクレルヴの巣》、《祝福されし者の声》と展開。

ここはJun、《トヴォラー》で強気に殴りに行き、《祝福されし者の声》をチャンプブロックさせることに成功、《カーン》からは-2能力で《液鋼の塗膜》をサーチ。

ターンもらってSho、《次元の撹乱》を《カーン》にエンチャントすることで能力を封じる。

中盤に差し掛かった盤面は夜

Jun、《激情の罠破り》、二体の《執拗な仔狼》のうち二体目は強化されている、《液鋼の塗膜》、無力化された《大いなる創造者、カーン》はこのターンに二体目を召喚する事で交換されている。

Sho、《スクレルヴの巣》とそれにより生み出されたファイレクシアン・ダニトークンが四体、《月皇の古参兵》、《魂の管理人》。

双方手札は一枚ずつ。

ここでJunが仕掛ける、《液鋼の塗膜》で《スクレルヴの巣》をアーティファクトに変えて《激情の罠破り》が単独で攻撃、これにより《スクレルブの巣》は破壊される、《カーン》の能力で《ワームとぐろエンジン》を手札に。

Sho、この展開を打開できるカードを引き込めず、次第々々にリソースが尽きていく。

この試合は十五分弱となったが、Junが勝利。

【八月二回戦第三試合】

Jun、マリガンを忌避した反動で土地ばかりの逆事故、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》以外にクリーチャー展開出来ず。

一方でShoは理想的な流れでどんどん盤面に布陣していく。

五分かからずShoの勝利。

「心の安定を早くに与えてくれてありがとう!」

とは勝者の言。

だが、Junの心も晴れていた、真正面からぶつかった、ならば結果はどうでも良いのだ。

次月のデッキは決まっているのだった。

【2023夏号】糞Jun 今月のHustleデッキ#01【キ刊TechnoBreakマガジン】

糞Jun

 みんなHustleしてるかい?糞Junだ。

 このコーナーでは、俺たちがMtGアリーナでバトルする『Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-』で活躍した各月のデッキを詳しく紹介していくぞ。

 食物連鎖の頂点に位置したと勘違いしがちな俺たち人類は、全般的に環境破壊を趣味の中心に据えて日々の生活を一喜一憂エンジョイライフしているよな!そんなわけで、俺は土地破壊を軸にしつつ優良クリーチャーで殴りに行く、ビートダウンとコントロールの良いとこ取りみたいな赤緑デッキを組んだ。七月の勝負では全週で一貫して使用して、Shoの最強デッキたちに辛くも勝利をおさめることができたのは記憶に新しいんじゃないだろうか。

 デッキ名『完成化されたSho』

 まずこのデッキに無くてはならないのはこれ、《液鋼の塗膜》だ。こいつはタップするだけで、パーマネントを何でもアーティファクトに変えてしまう2マナのアーティファクト。2ターン目に出して、3ターン目に《古えの遺恨》をアーティファクト化した対戦相手の土地に打ち込めば《石の雨》と同じムーヴが可能だ。さらに、4ターン目にもフラッシュバックで土地破壊ができるから、相手からすれば非常にイヤらしい展開だよな。

 この裏パターンとして、2ターン目に《辺境地の罠外し》を召喚するってやり方も見逃せない。返しのターンに対戦相手が何も動かなければ、3ターン目に戦場が夜になって《激情の罠破り》に変身!第一メインフェイズに《液鋼の塗膜》を出して即起動すれば、3/3が殴りに行くオマケでアーティファクト化されたパーマネントが破壊されていく。

 夜が昼になるためには、自分のターン中に2つ呪文を唱える必要があるから、序盤から土地が止まるともう手の施しようが無くなるのはULS七月二回戦第一試合で展開された通りだよな。実はこのデッキ、赤緑はクリーチャーの除去手段がダメージに頼りがちになるから、対戦相手の《ファイレクシアの抹消者》対策も兼ねてこの構成にしてあるのがHustleポイント高めと言えよう。

 ここでデッキ名の『完成化されたSho』に対応するプレインズウォーカーを紹介しよう。《大いなる創造者、カーン》だ。コイツは、+1能力でアーティファクトをクリーチャーに出来るんだが、その際のパワー/タフネスはそのアーティファクトのマナ総量に等しい。つまり、0マナの土地を《液鋼の塗膜》でアーティファクトにして、Shoことカーンの能力を起動すれば、毎ターン対戦相手の土地を破壊し続けることが出来るってわけ!野良試合でこれをかまされた時には戦慄したと同時に垂涎だったね、「俺も使うんだ!」ってさ。

 コイツの-2能力には、なんとサイドボードから好きなアーティファクトを手札に加えられるというものがあるので、メインに《液鋼の塗膜》3枚、サイドに1枚、さらに《大いなる創造者、カーン》をメインに4枚投入することで、キーカードの《液鋼の塗膜》を実質7枚体制で構成してあるぞ。さらに、メインクリーチャーは3マナ域までの軽量なのしかいないので、フィニッシャ―として《根導線の融合体》、《ワームとぐろエンジン》、《ファイレクシアの肉体喰らい》、《街並みの地ならし屋》、《瞬足光線の大隊》といったアーティファクトクリーチャーを各1枚ずつサイドボードに控えさせ、都度状況に応じて手札に持ってくることができるから、長期戦も視野に入れられてHustleだぜ。

 Shoに見立てたカーンを、俺の意のままに操って、対戦相手に土地破壊で嫌がらせしたりブン殴ったり、重量級パーマネントも簡単に除去したり・・・まさに槍対砲台だよな!

 それじゃあ、メインクリーチャーを見ていこう。種族は狼で5種類、どれも4枚差しだ。

 まずは唯一の1マナ枠、と言ったらもうだいたいコレしか無いかな、《執拗な仔狼》。後続のクリーチャーに+1/+1、トランプル、警戒を一挙に与えてしまう頼もしい、相手にとっては嫌らしいヤツだ。視点を変えるって重要だよな!環境問題とかね!

 後続の2マナクリーチャーには先ほども紹介した《辺境地の罠外し》。1マナと自身の生贄でアーティファクトかエンチャントを破壊できるのも、状況次第で即戦力だ。序盤から戦場が夜になるってことは、相手がパーミッションか事故ってでもない限りは難しいんだけど、手札初手の様子を見て3ターン目から積極的に土地破壊につなげたい。

 もう一体の2マナクリーチャー、強化するならこっちが本命だなってのが《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》!2/2先制攻撃持ちだが、攻撃が通れば対戦相手の山札からカードをランダムで一枚引っ張ってこられるのがHustle!夜になって変身すれば、パワー・タフネスこそ2/2のままながら、先制攻撃が二段攻撃になるから、引っ張ってこられるカード枚数も二枚になってHustle!Hustle!!《執拗な仔狼》から付与されるトランプルも、対戦相手へのダメージを通しやすくしてくれるから実に良い。得られたカードは、限定的とは言え実質的に自分の手札に加わるようなものだから戦術面に幅が出るし、プレンインズウォーカーを引っ張ってこられればスゴクイイゾ。ま、それがあるから、大抵は2ターン目に出てもその返しで除去されちゃうんだけどな!そのためにも四枚挿しって大事だね。

 さて、赤緑狼デッキで3マナと言ったら、これはもう《不吉な首領、トヴォラー》だよね。狼や狼男が対戦相手に戦闘ダメージを与えるたび、手札を一枚ずつドローできるって、やりすぎじゃね?3ターン目にコイツを召喚してから戦場に出ていた他の狼で強気な攻撃をすると、たいがいは相討ちを嫌って素通しさせてくれる事が多い。そして夜になれば、3/3から4/4にサイズアップしつつ、赤緑Xマナで対象の狼や狼男にターン終了時まで+X/+0の修正を与えると同時にトランプルを付与するから、攻撃が通りやすくなってドローにつながる。

 トヴォラーの能力で誘発するドローを活かしたハンドアドバンテージは《ナヒリの怒り》のコストを補填する事が出来るので、クリーチャー同士の殴り合いを打開するポテンシャルも秘めているね。《ナヒリの怒り》は3マナの火力呪文だけど、対象を一つ取るために手札を一枚捨てなければならず、その捨てたカードのマナ総量が与えるダメージになるから、対象を多くとるほどにダメージ量も上がっていく。ここで積極的に捨てていきたいのが、ダブついた《大いなる創造者、カーン》や伝説のクリーチャーたち、さらにフラッシュバックを持っている《古えの遺恨》だ。『衛星軌道からの核攻撃』を済ませた焼野原を人狼の群れが跋扈する様は、ULS七月二回戦第三試合の流れを決定付けたよな。

 そして、最後に紹介するのは《無謀な嵐探し》!自身のみならず後続のクリーチャーたちも速攻付与に加えてパワー修正、夜に変身していればトランプルまで与えてしまうHustleな相棒だ。身も蓋もない話すると、MtG Wikiで見かけて「これだ!」ってなったよね。それからはもう芋づる式に《執拗な仔狼》や《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》のシナジーも見つけちゃってね、前任のレア人狼たちを軒並み放牧しちゃったもんさ。飼っている動物を棄てるのは犯罪です!覚えておこうな。

 さて、この人狼デッキが円滑に展開できるためにはマナ基盤が重要だけど、このデッキで勝てないとULS三連敗しちゃうからレアのワイルドカードで二色土地いっぱい交換したよ。このデッキの影の主役はこのレア土地達だね(笑)

 Shoをして「未だに対策が練れてない」と言わしめた『完成化されたSho』をご紹介した。実はこのデッキの前段階として、完全ビートダウンの赤緑人狼デッキと、パーマネント破壊に特化した液鋼デッキがあったんだ。前者は《群れの希望、アーリン》や《結ばれた者、ハラナとアレイナ》で爆発力も持久力も備えていたんだけど、クリーチャー並べて殴るだけってのが個人的にHustleじゃないなと思って不採用。後者は5月に採用した初期バージョンで所々致命的な欠陥があったのを、7月に再調整したこのデッキで参戦したってわけ。結果的にデッキ三つ分くらいのワイルドカードを使う羽目になって手痛かったけど、良いとこ取りは出来たし勝負にも勝てたし、エルドレイン風に言えば《めでたしめでたし》かな。早くパック空けて《ネクロポーテンス》引き当てたいぜ!

それじゃあ、刻一刻と変わる環境の中でKeep hustle!It becomes night!

デッキ

4 指名手配の殺し屋、ラヒルダ (Y22) 42

3 液鋼の塗膜 (BRR) 28

4 大いなる創造者、カーン (WAR) 1

4 執拗な仔狼 (Y22) 56

4 辺境地の罠外し (MID) 190

3 冠雪の森 (KHM) 285

4 不吉な首領、トヴォラー (MID) 246

4 古えの遺恨 (ISD) 127

4 銅線の地溝 (ONE) 249

4 岩山被りの小道 (ZNR) 261

4 カープルーザンの森 (DMU) 250

2 落石の谷間 (MID) 266

1 根縛りの岩山 (XLN) 256

1 隠れた茂み (AKR) 330

1 踏み鳴らされる地 (RNA) 259

1 奔放の神殿 (THB) 244

3 タミヨウの保管 (NEO) 211

4 無謀な嵐探し (MID) 157

2 冠雪の山 (KHM) 283

3 ナヒリの怒り (SIR) 171

サイドボード

1 液鋼の塗膜 (BRR) 28

1 街並みの地ならし屋 (BRO) 233

1 ワームとぐろエンジン (BRR) 63

1 瞬足光線の大隊 (BRO) 165

1 影槍 (THB) 236

1 ファイレクシアの肉体喰らい (BRO) 121

1 根導線の融合体 (BRO) 203

【2023夏号七月分】環状赴くまま #021 渋谷ー恵比寿【キ刊TechnoBreakマガジン】

夕方過ぎになっても蒸し暑い日だったが、耐えられないほどではなかった。

渋谷駅での待ち合わせというのは慣れないものでモヤイ像がどこにあるかなど見当もつかず、とりあえず南口改札でShoと合流。

駅前のコンビニを探すのも容易ではなかったのが、この街の広大さを思い知らせてくれる。

18:41、駅前とは呼べない所にあるコンビニで買ってから、駅前に戻って乾杯。

山手線沿いの外環を南へ、この先は地図上では入り組んだ様子となっていた。

線路沿いを単純に進めそうにないのだ。

缶ビールを買ったのはそこのファミマで、誰かとコンビになった気分である。

写真を撮るためにここまで行ったり来たり、笑える。

そこへまた降り立ち、右手の坂道を上る。

ここが桜坂。

桜坂と聞けば、桜よりも金の匂いがする。

ここを左に折れると、飲食店がいくつか見られそうだった。

この界隈も、れっきとした渋谷の一部。

足を踏み入れたのは初めてだったので、この道を辿れたのは環状赴くままをやっていて良かったと言える。

突き当たりを右へ。

さて、ここいらから街の様子が変わる。

桜坂を途中で逸れたので、上へ向かう道は続くが。

また左折して、路地へ入った。

ここで突然の本格派カレー店、こういうのが地元にあったら愛してしまう。

アパートだらけの渋谷住宅街を縫って歩く。

住み心地は良くなさそうだけど、家賃は高いのだろうか。

ここら辺は道がうねっているのだが、我々は線路沿いの道へ抜けるために進んだ。

左へ行って、右へ行って、これを何度も繰り返す。

ここの先へ出れば、そろそろ線路沿い。

あの白いガードレールがそれだ。

と、その手前に洒落た建物が、ホテルに併設されたブックカフェのようだ。

あっ、「神殿」の間違いだった。

そそくさと先へ。

渋谷の落書きには閉口するが、こちらは名所レベルに仕上がっている。

洒落たピザ屋さん、マジかよって値段が表示されているが。

調べてみると、大ぶりにカットした一切れが出てくるらしい、近所なら毎日通っちゃうね。

ここを抜けると、どうやら代官山となるらしい。

代官山って、ビタイチ行った事ないぞ。

あ、そういや、何なら恵比寿も、一回くらいしか行った事なかったわ。

さっきまでの雑多な感じから、途端に閑静な雰囲気に様変わり。

さきほどの高架を、今回の境界に認定しよう。

申し訳程度の山感を演出する起伏。

オシャレな街の表層へ踏み込む事なく、先へ。

すぐそこの塀の前に、電動キックボードが貸し出されていた。

「アレのナンバープレートってことごとくひん曲がってるんだってな」

確認してみると、なるほどその通りで笑った。

ここはヤ◯クザ屋さんの装甲車置き場かな?

夜通し旗を振り続ける、勤勉な日本人の代表みたいな電光表示板。

僕もこう在りたいと真剣に思う。

最強伝説黒沢の太郎を彷彿とさせた。

黒沢のアジフライの話をしながら先へ進む。

そこの手前を左へ逸れる。

ここの裏手で男女が抱き合っていた。

遠くの街並みが恵比寿だろうか。

ここを左へ行ってしまうと環内へ入ってしまうので、道を横断する。

またも通りに差し掛かり、ここも横断。

すると。

渡った先に、良さげなお店。

豆腐食堂と書かれている。

夜は豆腐酒場になるようだ。

豆腐料理店といえば鶯谷が連想されるが、こういうのも良いな。

いよいよここの一番向こうを抜けると。

ほっ、飲み屋街だ、もう駅前だろうか。

この時19:20、どんな因果か集合から小一時間経っていた。

すると、この先の駅前が。

あれは、盆踊りだ!

にわかにテンションが上がる。

鳴り響く太鼓、舞台で踊る人々、それらを眺める圧倒的な数の人々。

非日常の顕現に、狐にでもつままれたような雰囲気に包まれて、単純に嬉しかった。

その舞台に書かれている「たつや」さんが、この夜のゴールだった。

恵比寿を代表する店舗ということなのだろう。

盆踊り会場からすぐの場所にあった。

地下の席へ案内していただいた。

こちらは「やきとり」とあるのだが、とりとは鶏ではなく肝裏でとりと読ませる、つまりはホルモンの串焼きを意味しているのだという。

これがそのやきとり、乾杯。

通じて楽しい夜だった。

【2023夏号】第四回戦 突貫 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

7/1

6/17に終えた闘いから、およそ半月と言う長い長い時間が過ぎた。

その日は、変則的に駒込に集合し、広場の椅子に座ってのデュエルである。

コンビニの缶ビールで乾杯。

今月のUncommonガール

【七月一回戦第一試合】

先攻はその日もShoだった、少年の日には思いもしなかったが、つくづくこのゲームは先攻有利だと思われる。

Junは一度マリガンするものの手札が弱い、Shoは二度目のマリガンをするか否か長考の末一度で決断。

黒緑の二色土地をアンタップインし、《ファイレクシア病の甲虫》を召喚、コイツは攻撃が通るほどにデッキ全体の毒性持ち昆虫の感染力が増加して行く。

Shoはまたも毒デッキである。

土地もクリーチャーも伸び悩むJun、Shoが展開する《ファイレクシア病の甲虫》二体と《バルターズゲートのクライドル》へ《ナヒリの怒り》を打ち込むがハンドアドバンテージは大きく損失。

Shoはその後もクリーチャーを引き込み、《グリッサ・サンスレイヤー》、《敬慕される腐敗僧》、《頭蓋穿ちの虻》と順調に召喚、虻は甲虫の能力により既に毒性3にまで増加されている。

これにJun、毒性無しのグリッサを除く二体に再度《ナヒリの怒り》を打ち込む。

しかしながら、その後もSho、立て続けに《頭蓋穿ちの虻》を二体召喚、飛行を持つ毒性3を止め切れずにJun敗北。

《バルターズゲートのクライドル》も《頭蓋穿ちの虻》も緑青のクリーチャーだ、Shoは黒緑青の三色毒デッキを組んで来ていた。

【七月一回戦第二試合】

Sho《頭蓋穿ちの虻》二体、Jun《嵐蓄積の斬鬼》《激情の罠破り》で双方ノーガードの殴り合い。

Junは赤緑の人狼デッキを持ち込んでいる、早くて重いクリーチャーを揃えてあるし、五月の赤緑デッキの不備は解消してある。

Shoライフ残り6、Jun毒カウンター五の状態。

Junからの二体をSho、《敬慕される腐敗僧》と一体の《頭蓋穿ちの虻》でチャンプブロック。

返すターンで《荒廃のドラゴン、スキジリクス》に速攻を付与して虻と共にアタック、一度に毒カウンターを五つ与えてShoが奇襲的勝利。

「『アンクル・リファイアー』ジジイ再失業って意味だ、《牙持ち、フィン》のジジイもいねえぜ。」

満を持して人狼部族で揃えたデッキが完敗を喫し、Junは苦々しい感情と同時に、自分自身はやり切ったのだと言う、憑き物でも落ちたかのような気分だった。

毒デッキはやはり下らないとも思っていたのだが。

「今月、まさか双方がリメイクデッキでぶつかるってのがウケるな」

勝者のSho、余裕の発言である。

【七月二回戦第一試合】

勝ち筋を見出したいJunと、この週で決着させたいSho。

いつもの錦糸町82エールハウスにて、ビールとハイボールで乾杯。

この日、Shoは間違いなく現在の手持ちで最強と言える、先週持参した『アンクル・リファイアー』こと黒緑青毒デッキで連勝を狙ってくるはずだった。

それに対抗できる手持ちはJunに何がある?

初戦の白青黒の三色デッキは三色の捻出に難があるのと、毒の速攻に追いつけないかもしれないと言う懸念があった…。

先攻Sho《敬慕される腐敗僧》、後攻Jun《執拗な仔狼》それぞれ召喚。

二ターン目Sho《バルターズゲートのクライドル》を召喚、腐敗僧でのアタックは仔狼でブロック。

「え、オイオイオイ」狼狽するSho、《バルターズゲートのクライドル》は攻撃クリーチャー一体がブロックされなくなると言う、毒デッキにとっては嬉しい能力を持っていたのだが、この能力に2マナ必要になっていたらしいのである。

滅多に無い事だが、野良試合と二人のバトルとで仕様が異なるという事が、あるにはある。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚、仔狼の効果で+1、警戒、トランプルカウンターが追加され、二ターン目に出るクリーチャーとしては過剰なスペックとなって場に出る。

三ターン目、Shoは土地を出し、クライドルの能力で2マナ支払って、腐敗僧の攻撃を通すが、残す土地一枚で出来ることは無かったのか呪文が唱えられる事なく、戦場は夜に。

ここからJunのギミックが始動、《液鋼の塗膜》を場に出し、Shoの土地《マナの合流点》をアーティファクトに指定、夜となり裏面に変身した《激情の罠破り》が攻撃し《マナの合流点》は破壊される。

五月の赤緑デッキにも搭載されていたギミックである、その時は最速でギミックが回転しても一歩及ばなかったが。

ターンもらってSho、手札から《マナの合流点》を出し、既存の土地二枚から《頭蓋穿ちの虻》を召喚、軽量クリーチャーで固めた速攻デッキの強みである。

だが、夜が明けるためには自分のターンで二つの呪文を唱える必要がある、土地を破壊してマナ基盤を拘束していくのは有効だった。

毒カウンターを十貯めさせるかその前に殴り切られるか、Shoのクリーチャーは軽量なのだがパワーが貧弱、一方で《激情の罠破り》は今や4/4、警戒、トランプル、攻撃するたびにアーティファクト破壊と言う、殴るも壊すも傍若無人のクリーチャーに仕上がっていた。

ここでJun、《深夜の災い魔、トヴォラー》を召喚して罠壊しでアタック、Sho側に立っている《マナの合流点》がアーティファクト化されてまたも破壊、さらにクライドルにチャンプブロックされたもののトランプルにより一点のダメージがSho本体に通ってトヴォラーの能力が誘発し一枚ドロー。

強固なロックが完成してしまった、トヴォラーは自陣に狼が三体居れば自動的に夜を迎えることが出来るので、Junが展開するクリーチャーは毎ターン軒並み強力な裏面に変身する事となる。

ターンもらってSho、森を出し《伝染させる吸血者》を召喚、飛行を持つ《頭蓋穿ちの虻》が攻撃し毒カウンターをJunに貯める。

ターンもらってJun、土地を出し《嵐蓄積の斬鬼》を召喚、能力により自身に速攻付与して5/4トランプルとなる、人狼三体でアタック。

Shoはトランプルを持たないトヴォラーを腐敗僧でチャンプブロックするも、応じてトヴォラーの能力起動、自身にトランプルを付与して、Shoに合計12点ダメージ、さらにJunの手札へ三枚ドロー。

この時点でSho残りライフ2で手札二枚、Jun残りライフ14と毒カウンター二つで手札六枚、土地はShoの二枚に対してJun五枚で差は歴然だった。

このままJun勝利。

【七月二回戦第二試合】

Sho先攻、《ファイレクシア病の甲虫》召喚。

このクリーチャーは攻撃が通るたびに、全領域の昆虫クリーチャーの毒性を増やして行くと言うものだ。

Junは土地を場に出して一ターン目を終えるが、以降召喚していく人狼たちはことごとくShoの除去呪文により破壊され続けて行く。

ブロッカーが居ないままに甲虫の攻撃が何度も通り、Shoの四ターン目には、毒性4になった甲虫に加え、《頭蓋穿ちの虻》も毒性4で召喚されてJun封殺。

Shoのデッキに対して有効に立ち回るためにどうすべきか示唆する貴重な資料となった。

つまり、先攻一ターン目に一マナクリーチャーを召喚しておかねばならないと言うことである。

【七月二回戦第三試合】

先週に続き、Shoのデッキの爆発力に苦戦必至のJun、慎重な展望で仕掛ける必要がある。

Jun先攻、土地を出して終わり。

Sho後攻、《敬慕される腐敗僧》召喚。

ターンもらってJun、《辺境地の罠外し》召喚。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、腐敗僧アタックで毒カウンター付与。

三ターン目Jun、三枚目の土地を出し再度《辺境地の罠外し》を召喚。

ターンもらってSho、除去呪文は手持ちに無いのか《頭蓋穿ちの虻》召喚。

ターンもらってJun、ドローエンジンとなる《不吉な首領、トヴォラー》召喚、罠外し一体で強気のアタックがブロックされず一枚ドロー。

四ターン目Sho、《頭蓋穿ちの虻》二体目を召喚、さらに地上クリーチャーは最早不要と言わんばかりに腐敗僧を追加コストの生贄にして《新生化》を唱える。

これは生贄にささげたクリーチャーのマナコストより一つ大きなクリーチャーを探し、+1カウンターを置いた状態で戦場に出すという呪文だ。

場に出てきたのは、三枚目の《頭蓋穿ちの虻》、これらの攻撃が飛行によって素通りし続けるならば残り三ターンでJunの毒カウンターが十を超えてしまう。

ターンもらってJun、《ナヒリの怒り》をShoの虻三体を対象にして一斉除去、そのために消費した手札は合計四枚なのだが、続けて人狼二体でアタックしトヴォラーの能力により手札二枚を補填、結果的に二対三交換でJun側のアドバンテージ、いや《新生化》のコスト込みなら二対五交換か。

ターンもらってSho、トヴォラーを《胆液まみれ》で除去。

ターンもらってJun、他に何も無い戦場を《辺境地の罠外し》でアタック、呪文を唱えなかったため夜になる。

ターンもらってSho、《シェオルドレッドの勅令》で罠外しを除去、これにより夜の戦場に土地以外は何も無くなり、新たな局面に突入か。

ターンもらってJun《嵐蓄積の斬鬼》を召喚し、速攻付与でアタック。

この時点でSho残りライフ6で手札一枚、Jun残りライフ18と毒カウンター3で手札四枚。

ターンもらってSho、土地を出すのみでエンド。

ターンもらってJun、《残忍な無法者、ラヒルダ》を召喚、速攻を付与して二体でアタック。

先の読めない攻防が渾然としていたものの、最後の最後にはハンドアドバンテージを大きく保持したJunが危なげなく勝利した。

「君、今日の靴、洒落てるね。おろしたて?」

「ほ、君よく気付くね。こないだネットで安売りしてたからすぐさま買ったのよ」

Shoの足元は黒と赤の皮を組みわせた靴に包まれていた。

「デッキカラーの黒緑じゃなくて、黒赤を履いて来ちゃったから負けたのかぁ〜」

「君、どうせ来週もその毒デッキで来るんでしょ」

【七月三回戦第一試合】

新生赤緑デッキで何とか連敗を防いだJun、目論見としては最終の三回戦こそ同デッキで激突し雌雄を決する事になるはずだった。

先攻Sho、山から《僧院の速槍》で速攻アタック、六月の赤単で殴り込んできたのだ。

序盤は双方一ダメージずつの殴り合いから、Junの《大いなる創造者、カーン》に対し、Shoの《ウラブラスク》が睨み合うも、これはターンもらってJunがすぐに《液鋼の塗膜》から《古の遺恨》の万能除去で対処。

Sho負けじと《焦熱の交渉人、ヤヤ》から果敢持ちトークン一体生成、ターンもらってJun《根導線の融合体》召喚、これをターンもらってSho《静電気の放電》と《火遊び》で除去して果敢持ち二体から合計6点分のアタック。

体力差はSho14対Jun5、Sho側には《僧院の速槍》と《焦熱の交渉人、ヤヤ》が生成した果敢持ちトークン二体で合わせて三体。

瀕死のJunは《古の遺恨》を用いたギミックで《焦熱の交渉人、ヤヤ》を除去、さらに《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》と《辺境地の罠外し》を召喚しもとからの《執拗な仔狼》と合わせて三体のブロッカーを準備、そして《大いなる創造者、カーン》の忠誠度カウンターを使い切り《ファイレクシアの肉体喰らい》を手札に加えてターンエンド。

Shoは《僧院の速槍》とプレインズウォーカー《勝負服纏い、チャンドラ》を召喚、場に出ている果敢持ちクリーチャー四体がパワー2で総攻撃、Junは展開済みの三体中二体を潰されるも何とかブロックで凌ぐ、残りライフ2、《火遊び》一発でゲームが終わる。

ターンもらってJun、《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》は攻撃させずブロッカーとして立たせておき、カーンの能力で引っ張ってきた《ファイレクシアの肉体喰らい》を召喚してエンド、7/5絆魂持ち、一ターン何も起きなければ体力的には逆転できる。

Shoは《勝負服纏い、チャンドラ》の+1能力を起動し、ライブラリーの上を公開し呪文を唱えたが、Junに直接ダメージを与えられる火力ではなく《ウラブラスク》を場に出してエンド。

「グッ、これじゃねぇっ!」

《ウラブラスク》は《辺境地の罠外し》を召喚後即生贄に捧げて除去、肉体喰らいでアタックし双方のライフはSho7対Jun9となり、そのままJunの逆転勝利。

十六分を超える長丁場となった。

【七月三回戦第二試合】

Sho先攻、山から《僧院の速槍》が速攻でアタックしてエンド。

Jun後攻、二色土地をアンタップインし《執拗な仔狼》を召喚。

双方、理想的な一ターン目。

三ターン目の盤面は、

Sho、《僧院の速槍》、《勝負服纏い、チャンドラ》

Jun、二体目に召喚され警戒・トランプル持ちになった《執拗な仔狼》、さらに警戒・トランプル持ちの《無謀な嵐探し》。

直後にSho、かなり早い段階で《ウラブラスク》を召喚したものの、ターンもらってJun《大いなる創造者、カーン》を追加コストで捨てた《ナヒリの怒り》を撃ち込んで除去、さらに二体による攻撃でチャンドラも撤退。

頼みの綱のプレインズウォーカーがテンポ良く出ないとShoの展開は辛く、二体目の《僧院の速槍》や単体火力だけでは手札が息切れしてしまう。

身動きが取れないShoに対し、Junは《大いなる創造者、カーン》から《液鋼の塗膜》を交えた土地破壊ギミックも作動し始める頃に辺りは夜となり、そのまま快勝。

今月のUncommonガール

【2023夏号六月分】環状赴くまま #020 原宿ー渋谷【キ刊TechnoBreakマガジン】

さわやかな夜だった。

Shoは昨晩の父親との飲酒が影響して身動き取れず不参加である。

NewDaysで缶ビールを物色していると、学生くらいの青年が、スマホにしか入金がなく切符が買えないので現金とpaypayとを交換してくれと申し出てきた。

そういうのは何だか怖いので数百円渡すだけ渡してその場をやり過ごしたかったが、paypayでダメなら現物を是非にという事でその場で買ってきたカフェオレを押し付けられた。

19:50、先月のゴールが今月のスタート。

この展開は地味に珍しい、北口着南口発ということが多いためだ。

こちら側には明治神宮の静謐さが充溢している。

都道413号赤坂杉並線を歩道橋で越す。

写真では周辺の広大さが伝わりにくい。

歩道橋上から行先のファイヤー通りを望む。

いかにも都会といったビルが林立しているように見えるが、そこへたどり着くまでが真空地帯の一本道といった趣がある。

原宿駅方面へ振り返るとさすがに駅前の風情なのだが、立っている歩道橋がすでに真空地帯の内部とも見える。

周辺の広大さというのは、そういう意味なのだろう。

左に小さく見える紫色の三角は、代々木の名残のNTTビル。

道はこんな感じで続く。

杉の木が突き刺さっているのは、一帯の無機質さや寂しさの目隠しにしか思えなくて、かえって気持ちが暗くなった。

上野から鶯谷まで歩いたときの期待感はここには無く、何か見てはならないものでも見てしまったかのようだ、昼にはそんな印象ないのだろうけれども。

この頃には、ぬるくなってしまう前にビールを飲み干している。

コンビニもないから、気を紛らわせるために追加のビールを買うこともできない。

手放しに喜ぶわけにはいかないが、人の痕跡があって安堵する。

現代版星座の物語と感じずにいられない。

さながら彗星のごとくアドトラックが駆けていったが、無論私の様な放浪者に向けて発信しているわけではなく、目指す先にある渋谷スクランブル交差点周辺の消費者に魅せるためだ。

調べてみると某少年誌とは全く関係のないホストクラブの街宣のようで、そんな気は無かったが都会の中でも歓楽街に向かっているんだったと思い起こされた。

空白地帯だったのが、急に左右にビルが建ち並ぶ。

杉の木が目隠しみたく密集したカーテンを抜けた途端の事で、その場を振り返って写真に収めるくらいしかできなかった。

今までは何も無かったが、ここからは何か、何らかの施設がそこにある。

裏路地の様な印象だがここがメイン通り、まだまだ末端部という事になる。

アンダーディアラウンジ、TechnoBreakも其処に居たことがある、懐かしい。

しかし、一体どんなイベントにお邪魔したのか、歌ったのか聴いていたのかは最早記憶に定かではない。

ここ消防署があるため、今まで通った道が古くからファイヤー通りと呼称されているらしい。

地図アプリにピンを打ってあった「夜カフェ」、ワンダーボウルさん。

渋谷でかれこれ五十年近く営業しているらしい。

左へ行くと環内へ向かう高架下を通るので右へ。

街の明かりが華やいできた。

めっちゃ久しぶりに見た、楽しそう。

渋谷のタワーレコード、なるほど本場はタワーになっている。

私は渋谷に来ることも稀だし、渋谷のこちら側に来ることも稀なので、はじめてお目にかかりました。

右手に西武が見え、右折方向は

代々木公園へ向かう公園通り。

そちらへは行かずに直進。

この先、いよいよ

スクランブル交差点。

なるべく写らない様に撮影したが、実際の人の数といったら非常な量だった。

これこそが街だ、と声高な断定をするほど了見は狭くない。

20駅歩いてきたことで、それくらいの感覚になることはできた。

前にも書いた気がするがこれは過剰だ、言い換えるならば売り買いに特化した街ということか。

それならば、雰囲気は違うが銀座と同じという事になるか。

さて、ゴールに着いたので、適当に飲み屋さんを見繕おう。

マークシティをくぐり抜け、

すぐ右折するとウェーヴ通り。

その先に飲み屋さんが連なっているようだ。

当たりをつけておいた多古菊さんは、どこから這入れば良いか判らず断念。

途中、ここなら間違い無いだろうというお店があったのでそちらへ。

魚金さんなら間違い無いだろう。

クラフトビールが自慢の店舗らしい、華やかで夏にぴったりのビールをいただいた。

盛り合わせは、二点ずつ付くこれと四人前のもっと大きなのが、嬉しい料金でいただける。

これだけでサヨナラも悪いので、

カレイの煮付けも頂いた。

来られなかったSho、ULSの勝者にはこれが振る舞われたのに、残念だったな。


翌朝、もらったカフェオレを冷やして飲んだ、美味しかったです。

【2023夏号】第三回戦 波乱 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

6/3

嵐の翌日、錦糸町82はテラス席が閉鎖されていた。

先に店舗入りしていたJunは82エールで喉を潤していたが、後から来たShoとは乾杯だけして早々にゲーム起動。

何せ、一日千秋の思いで迎えた決戦の初戦だからだ。

今月のUncommonガール

【六月一回戦第一試合】

先攻Sho、山から《僧院の速槍》を召喚し速攻アタック。

この瞬間、白単低速コントロールのJunは敗北を覚悟、前回のゴルガリ・ジジイに続いて又してもアグロなデッキを組んで来たと言う事に腹立たしさすら感じていた、勝負を放棄して安易な戦術を取りやがる、とも。

Shoは順調に《勝負服纏い、チャンドラ》が三ターン目に場に出るが、Junサイドには《永岩城の修繕》くらいで展開が遅すぎる。

さらにSho、四ターン目には《焦熱の交渉人、ヤヤ》を召喚しプレインズウォーカーが並ぶ、Junは投了ムードでなるべく手の内は明かさずに敵の展開を見極めておきたい、《ドゥーム・スカール》を予顕してしまうのもバレバレで無意味だった。

果敢持ちクリーチャーを並べたShoが終始余裕で勝利。

【六月一回戦第二試合】

Jun先攻、マリガンで開始。

四ターン目、後攻のShoが仕掛けた召喚は《ウラブラスク》、ファイレクシアの赤の法務官。

Junの盤面は《エスパーの歩哨》一体に《永岩城の修繕》を二枚張っている、Sho側は《ウラブラスク》と早くから召喚してあった《僧院の速槍》、ライフは15対20。

応じてJun、先ずは《永岩城の修繕》の伝承カウンター三つ目の効果により3/4トークン一体生成、次いで二枚目の永岩城の二つ目の効果により《エスパーの歩哨》を手札から捨てた上で場に出す、そして召喚《エリシュ・ノーン》。

「うぉぉ、法務官対決かよ、熱ちい!」

一本先取のShoは余裕があるのか勝負を楽しんでいる。

ウラブラスクが第二面に変身できる算段があるのがShoの余裕の根拠だった。

無謀なる衝動》ウラブラスクの能力が誘発しJunに1点、《静電気の放電》はJunに4点と誘発1点、《稲妻の一撃》これは《エリシュ・ノーン》に3点とJunに誘発1点、これらによりJunの残りライフは8。

しかしながら、《エリシュ・ノーン》も負けてはいない、何らかの発生源がダメージを与える度に1マナか2点ライフを要求する、Shoは《ウラブラスク》変身のためにマナの支払いは拒否し続けたため、五回の支払い要求で合計10点のライフを失い残り10。

《ウラブラスク》第二面の英雄譚《大いなる業》に変身、Junとコントロールする各クリーチャーに3点のダメージ、Junが展開していた永岩城の3/4トークン以外全て焼き払われる。

しかし、《エリシュ・ノーン》の断末魔でクリーチャー四体とJun本体、再度五回の支払い要求が誘発。

Sho、残す山一つからの支払い以外、8点のライフを失って残り2。

これでJun残りライフ5対Sho残りライフ2。

しかし、このゲームは先に相手のライフを0にした方が勝つ、この程度は安い支払いなのである、双方にとって。

Sho、一時的に4/5に膨れた《僧院の速槍》でアタック。

「あっ!違う!!待った、間違えた!!」即座にShoが悲鳴を上げる。

その通り、Junはこの攻撃をブロックせずとも残りライフ1、返すターンにブロッカーのいない状態で永岩城トークンで殴れば勝ちなのだ。

法務官同士の意外な友情コンボ、勝因は手癖。

【五月一回戦第三試合】

もつれ込んだ最終戦、理想通りの展開で応酬すればまだJun側にも望みはありそうだが。

先攻Sho、四ターン目に《焦熱の交渉人、ヤヤ》、前のターンにJunは《婚礼の発表》をエンチャントした程度なので分が悪い。

さらに《ウラブラスク》が召喚される、理想的な展開はSho側にあった。

Jun、手札は悪くないのだが、低速コントロールとしての展開の理想であってやはり相手側が手に負えなくなりつつある。

手札にある《ドゥーム・スカール》をいまだに予顕せずにいるのは祈りとも諦めとも言えるのだが、生憎Shoが次ターンからインスタントを連続で唱えて《ウラブラスク》の変身が間に合い、状況を覆せないままJun敗北。

「因みに、今回のデッキ名は『フォーマー・ワークプレイス』、前の職場って意味だ」

Shoが嬉々として言い放つ。

Junのデッキ名は『赦し』、先月の負けを雪辱するために憎悪を込めた黒単を組んできたが、急遽白単に変更したためである。

【五月二回戦第一試合】

後がないJun対今週で決めたいSho。

Junには確信があった、前週の一回戦を終えて飲んでいる際、Shoがデッキのシステムを明かしたのだ、表面上は速攻デッキだが実質的な勝ち手段は《ウラブラスク》頼みなのだと。

何故手の内を明かすのか、それはSho自身が自分のデッキはイマイチだと認めているからではあるまいか。

間違いなく、この戦いにShoは先月の黒緑毒デッキのゴルガリ・ジジイこと『アンクル・ハイアー』で来るはずだ。

その読みは当たって、しかしあのアグロデッキに勝てるのか。

牙持ち、フィン》、《敬慕される腐敗僧》、《チーム結成》とShoのテンポはこれ以上ない良い動き。

一方、Junは《エスパーの歩哨》をフィンのチャンプブロックに当てざるを得ない。

Sho、MVP級クリーチャー《グリッサ・サンスレイヤー》を召喚し、盤上のクリーチャー数は三対零。

Junは何とか《ドゥーム・スカール》で一掃するも、返すターンでSho《死住まいの呼び声》を唱えフィンと腐敗僧を戦場に戻してそのまま勝利。

【五月二回戦第二試合】

Jun先攻、《エスパーの歩哨》、《獅子の飾緒》、《放浪皇》と順調に展開。

一方のSho、土地は問題なく伸びるのだが、クリーチャーの展開が無い、何とか《ミレックス》から毒性トークンを生み出す程度。

土地ばかり引く事故の続くShoをそのまま殴り続けてJunが勝利。

【五月二回戦第三試合】

混迷の二回戦、最終試合。

Jun、三ターン目に預顕した《ドゥーム・スカール》で二体除去。

Sho、返すターンで《グリッサ・サンスレイヤー》を再度召喚。

さらに次ターン《敬慕される腐敗僧》の召喚に対応してJun《行進》でグリッサを追放、Sho追加の《敬慕される腐敗僧》二体目も召喚。

この後、Sho長考。

Junの盤面には《エスパーの歩哨》とアンタップ状態の平地が四、Shoが腐敗僧二体でアタックすれば《放浪皇》による追放の可能性がある、長考の末一体の犠牲はやむなしと判断してアタック。

だがこの一体を、《放浪皇》の+1カウンターと先制攻撃を付与された歩哨で討ち取り、次のターンで残る一体を追放、Shoとしては二体を失う最悪の展開である。

Shoはミレックスからダニトークン生成、現在Junに毒カウンター三つ。

この後は、ミレックスからのダニトークン達との攻防で、《屍気の拝領》がエンチャントされたトークンからのアタックにより危うく八つまでの毒がJunに与えられたが、《エリシュ・ノーン》が即変身して何とか競り勝った。

【五月三回戦第一試合】

この日、Shoは今月初お披露目の『フォーマーワークプレイス』こと赤単ウラブラスクデッキ。

対するJunは、今月のコンセプト『赦し』こと白単ジャンクでは無く、先月完敗を喫したデッキ名未詳の赤緑で挑んだ。

双方土地を五枚並べて、プレインズウォーカー同士の勝負となったが、クリーチャーと除去のバランスが良いShoが終始押し気味で勝利。

群れの希望、アーリン》が5/5トランプルと化し、《勝負服纏い、チャンドラ》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》などに何度も突撃を敢行したものの、テンポ面での遅れを取り、状況を覆す事が出来ずJun敗北。

二ターン目にJunが出したキーカードの《辺境地の罠外し》が、取り敢えずの感覚で《火遊び》により除去されてしまったのには警戒しておくべきだったか。

さらに、《大いなる創造者、カーン》によりサイドボードから引き寄せた《先駆のゴーレム》三体が火力一発で連鎖的な除去を許してしまったことも、対戦相手のデッキを全く考えていない悪手であり、勝敗の分かれ目だったと言える。

【五月三回戦第二試合】

正体不明だったJunのデッキがブン回った。

あらかじめ出しておいた《液鋼の塗膜》で対戦相手の土地をアーティファクト化し、四ターン目に召喚したプレインズウォーカー《大いなる創造者、カーン》の+1能力により0/0のクリーチャーにして自滅させる。

このデッキのコンセプトは土地破壊が主軸、カーンをShoに見立てた『Shoの精神支配』デッキである。

Shoが戦場に出した四枚目の山がこのギミックで潰され、以降毎ターン土地が破壊されてゆく。

はずだった。

返すターンでShoの《ウラブラスク》が間に合い、呪文を三つ唱えて第二面へ変身。

一歩及ばずJun惜敗。

ブン回ったのはShoのデッキも同様だったのだ。

「もし今日のデッキが、今月の白のデッキだったら墓地が消されるから不安だったけど」

などと言って、さも良い勝負が演じられたかのような口振りで、上機嫌に言っていたShoだった。

Junは危うく、次月に携えて行く予定のデッキを取り下げて、別のデッキで参戦しかねないほどに怒り心頭だったが、五月に作成した赤緑何でも破壊デッキが接戦を制することが出来なかったのもまた事実。

敗因は様々にあるのだ。

今月のUncommonガール

【2023春号五月分】環状赴くまま #019 代々木ー原宿【キ刊TechnoBreakマガジン】

闘いを終え、新たなるプレインズ・ウォークへ。

17時45分、代々木駅前はこの時間でも明るかった。

この交差点に向かって右方向。

一路、原宿へ。

突っ切って行く。

早くも駅前感は無くなったかに思える。

この先、左カーブに差し掛かる前に、風情のある店舗があった。

本当は48周年らしい、情報がブレブレで笑えた。

しかし、京野菜deフレンチイタリアンとは、都内で京野菜というのは探してもそうそう無さそうである。

グリーンスポットさん。

この歴史の長さ、機会を設けてぜひ行ってみたいと思わせるお店、良い発見ができた。

右手にロレアルのビル。

ファッション関係に疎い私でも、CMで見かける名だったので写した。

カーブの先。

おっと、ここは首都高4号がちょうど境界となっている様に見える。

代々木ー原宿間の境界に認定したい。

首都高をくぐると、その先は明治神宮エリアが広がっていた。

脇から入っていく。

搦手は寂としていた。

静謐な森林浴コースが続く。

表からの参道と合流。

ここに来たからには参拝せねば。

海外の人です。

閉門直前で人もまばらなため、エンジョイしていた。

気を取り直して前進。

明治天皇が詠んだ和歌。

おみくじの代わりとして入手することもできる。

ここで、閉門のアナウンスが放送されたので急ぐ。

三門を抜けると本堂がある。

本堂は撮影しないでおいた。

近くにお立ち寄りの際はぜひお越しください。

左手の門。

異界へ通じているかのような趣きがある。

参拝終わって正門へ向かう。

参道の左右に酒樽が積み上げられている。

明治天皇はワインを取り揃えていたのだという。

進取の精神の一つだろう。

中央の樽はロマネ・コンティ。

飲んだことは無いが名は知っている。

日本勢も負けていない。

双方の樽の並べ方に違いがあるのが面白い。

レストラン。

当然だが閉門前なので営業してはいない。

「いや〜、まさかの癒し回だったわ」とはShoの言。

たしかに、環状赴くままで最もユニークな回だった。

しかも、この周囲に飲食店は一切無い。

環内に入り込むか、次の駅の方へ行かねばならない。

そのため、今回は異例中の異例で、別の妥当なお店をチョイス。

場所は両者の住処に近い新小岩。

中トロがこの大きさで七百円、破格だ。

二つあるコの字カウンターは満席、堂々たる飲み屋さんである。

大満足飲み、毎日でも来たいと思えるお店。

新小岩の方々は羨ましいです。

【2023春号】第二回戦 圧倒 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

5/6

四月は二週で決着したため間が空いたが、待ちに待ったUncommon Low Skirmish第二回戦。

会場はお馴染み錦糸町82エールハウス、この日も十五時ぴったりに到着である。

Today’sのKOEDOビール青碧とハイボールで乾杯し、早々にゲーム起動。

今月のUncommonガール

【五月一回戦第一試合】

先行Sho、Jun赤と緑のバランスが良い土地四枚で手札キープ。

悶絶しているSho、マリガンを連発してまさかの手札三枚スタート。

「そのリスクは俺も負っている」冷淡に言い放つJun。

Shoランドセット、黒緑がアンタップイン。《多汁質の頭蓋住まい》を召喚。

『毒デッキか、読みが外れた…』Junはアグロ系デッキとの相性が最悪だった。

二ターン目、《屍気の拝領》をエンチャントした頭蓋住まいがアタック、Junは毒カウンターを一気に三つも与えられてしまう。

毒カウンターが十溜まると敗北だ。

Junは二ターン目に《辺境地の罠外し》を召喚、Shoからの二度目のアタックを通し毒カウンターは六つとなるが、場は夜になる。

三ターン目に《不吉な首領、トヴォラー》も召喚し、罠外しの攻撃によりワン・ドロー。

理想的な展開である。

Shoが召喚した二体目の頭蓋住まいは、Jun《削剝》で除去し人狼二体がアタック。

Sho残ライフ10で手札無し、Jun残ライフ18かつ毒カウンター七で手札七枚。

どちらかに決着がつく、その目前だ。

Sho、《敬慕される腐敗僧》召喚、頭蓋住まいがアタックして毒カウンター八。

ターンもらってJun、人狼二体でアタック。

だが、未熟過ぎるプレイングミス、トヴォラーの攻撃力を上げていればライフを丁度ゼロに出来たのだった。

しかも、返しのターン用にブロッカーを召喚せず、一体だけ除去しようとしても腐敗僧の能力で毒カウンターを得てしまう事になるため、このターンをShoに渡した時点でJunは詰み。

直前までデッキ調整をしていたため、柔軟なプレイングに慣れることができなかった痛恨の未熟さ。

【五月一回戦第二試合】

Jun先攻、マリガン。

巨竜戦争》でShoの毒性クリーチャー二体を除去するも、《グリッサ・サンスレイヤー》は殺し切れず、エンチャント破壊により巨竜戦争も早々に葬られる。

さらに、二体の《敬慕される腐敗僧》を連続で召喚された直後に《屍気の拝領》がグリッサにエンチャントされた事による誘発で八個目の毒カウンターを与えられてしまう。

そのまま毒性2を得たグリッサがアタックし、敗北。

無謀なる衝動》で引っ張って来た《辺境地の罠外し》を召喚せずに追放してしまうという未熟な失態が今回もあった。

やりたい事が出来ぬまま押し切られた形である。

Junの存在を賭けたデッキは封殺された。

Shoは意気揚々とデッキ名を明かす。

「《牙持ち、フィン》のアンクル・ハイアー、ジジイ採用って意味だ。四枚挿しなのに《チーム結成》でも引っ掛からなかったのはジジイに問題ありそうだがな」

「ゴルガリ・ジジイかよ」

Junの口元が苦々しく歪んだ。

【五月二回戦第一試合】

デッキ相性の悪すぎるJunはこの週、先月の三色デッキで参戦(勝ったとしても、別デッキの色の連続重複は禁じられているので、赤緑に戻す必要がある)。

対するShoはアンクル・ハイアーを引っ提げて参戦。

Jun、マリガン一回で土地三色揃う。

だがShoの様子がおかしい。

「ぐっ、ぐぬっ…」

先攻Sho、なんとマリガン連発の手札四枚スタートで黒緑の土地をタップイン。

だが、先週は似た様な状況で別デッキのJunに勝っている。

Junも土地を出してエンド。

二ターン目、Shoは満を持して先週不発の《牙持ち、フィン》を召喚。

ターンもらってJun、悪さをしそうなジジイに《不憫な悲哀の行進》で3点ダメージ(追加コストは《しつこい負け犬》)。

「ジジイッ!(by Sho)」

三ターン目にJun、《策謀の予見者、ラフィーン》を順調に召喚するが、Sho未起動の土地を動員し《シェオルドレッドの勅令》を唱える。

盤面には双方三つずつの土地のみ。

四ターン目もトップデッキしたラフィーンを召喚するが次ターンに《胆液まみれ》により除去される。

結果的に、かなり順調な土地の運びから召喚された《永遠の放浪者》が二段攻撃のトークンを生成し、ハンドアドバンテージの分が悪かったShoのクリーチャー展開が防衛しきれず決着。

【五月二回戦第二試合】

Jun、今回もマリガン一回で土地三色揃う。

先攻Shoはマリガン二回で手札五枚スタート。

Sho六ターン目には、たった今Junがトップデッキした《策謀の予見者、ラフィーン》を《シェオルドレッドの勅令》で撃墜するファインプレーからのアタックで合計七つの毒カウンターをJunに与えている。

テンポの良いアグレッシヴな展開でShoの押しが強い。

盤面はShoの《敬慕される腐敗僧》とジジイこと《牙持ち、フィン》、Junは招待カウンターが一つだけ乗った《婚礼の発表》のみ、チャンプブロック用のトークンは生成できるのが幸いか。

その後二ターン目に動き、Junがプレインズウォーカー《踊る影、魁渡》をトップデッキして召喚、+1能力で悪さしそうなフィンを一時的に無力化してからラフィーンが空中からアタック、さらに誘発する魁渡の能力でラフィーンを手札に戻して能力を追加使用、Shoの腐敗僧も一次的に無力化。

しかし、Shoの盤面には《グリッサ・サンスレイヤー》が駆けつける。

クリーチャー数だけで見ればShoが三に対し、Junは零。

Junは手札からラフィーンと、トップデッキした《しつこい負け犬》を召喚、最も厄介なグリッサを魁渡で無力化。

明くるターンにShoは焦れ、攻撃できないグリッサ以外でアタック。

接死持ちのフィンは負け犬で相討ち、腐敗僧はラフィーンが討ち取った。

これで双方のクリーチャーは一体ずつだが、Jun側にはプレインズウォーカーの魁渡がクリーチャーを無力化すべく立ち続けている。

この後はJunが《婚礼の発表》を計三枚もエンチャントし、魁渡による巧妙な無力化で場をコントロールし、まさかの逆転。

長丁場となったが、その場その場での引きが常にShoの先を行くJunの勝ちとなった。

【五月三回戦第一試合】

二回戦はJunの三色デッキ、テクノブレイクが安定感のある展開で勝利したが、同色の連続使用は強い制限があるため赤緑に戻す。

Shoは黒緑のアンクル・ハイアーで三度目の参戦。

三回戦にもつれ込んだ五月期、いよいよ決着。

先攻Sho、《敬慕される腐敗僧》、《牙持ち、フィン》、《グリッサ・サンスレイヤー》と三ターンで順に展開。

Junは三ターン目までは土地しか場に出せず、ようやく《不吉な首領、トヴォラー》を召喚。

返すShoのターンでグリッサ以外のクリーチャーによる攻撃、Junはトヴォラーでフィンと相打ちせざるを得ないのだが、直後の第二メインフェイズで二枚目のフィンが召喚されてターンエンド。

この時点での盤面は、Shoのクリーチャー三体に対して、Junのクリーチャーは無し。

Jun、四ターン目にプレインズウォーカーの《群れの希望、アーリン》召喚。

大マイナス能力で狼トークンを二体生成。

だが、次ターンのShoからの総攻撃では、二体のトークンは無駄死にさせるしかない。

この時点でJunの毒カウンターは七。

ターン貰ってJun、アーリンの能力起動後に二枚目のアーリン召喚。

強化された狼トークン二体を生成。

しかしながら、Shoのターンでは《敬慕される腐敗僧》二体目から、自陣の《牙持ち、フィン》へ《胆液まみれ》を唱えることで、腐敗僧の能力による毒カウンター二つと《胆液まみれの》増殖効果により十個目の毒カウンターがJunに渡りゲームエンド。

【五月三回戦第二試合】

Sho、《多汁質の頭蓋住まい》、《牙持ち、フィン》と順に展開し、《胆液まみれ》によるブロッカー除去と三ターンのうちにJunに毒カウンターを九つ与えるこれ以上ないほど理想的な流れ。

Jun、全体除去は手札に三枚もあるのだが、土地が一ターン間に合わず投了。

二分強で封殺と言う格好である。

コントロール色が強めでミッドレンジのJunの赤緑に対し、Shoのゴルガリジジイもとい「アンクル・ハイアー」の速攻毒カウンターデッキの完封である。

Shoはデッキの勝利に向けてプレイングミスは許されないという緊張に手を震えさせていた。

Junはデッキ名すら秘めたまま屈辱の怒りに震えていた、もうこうなればあの色で構築するしかないと決めて。

今月のUncommonガール

【2023春号四月分】環状赴くまま #018 新宿ー代々木【キ刊TechnoBreakマガジン】

新たなる『トレインズ・ウォーク』の灯がともる。

戦いを終えた我々は、この日は遺恨を忘れて一駅歩きに繰り出す。

掲載誌の体裁が変わり、環状赴くままはしばらくの間JunとShoの二人歩きとなった。

こちら側とあちら側からでは、新宿の眺めというものも全く異なる印象だ。

待ち合わせは分かりやすく思い出横丁にしたのだが、この日は大混雑だったため、こちら側へ退避してきた体である。

17時25分、乾杯してスタート。

写真映えする夜景を撮るには、あと三十分は出発を遅らせるべきだったか、陽が長くなった。

曇り空も相まって、まるで病棟のような印象の街。

切り取られた写真という風景の限界とも言えるか。

雑踏、という様子が端的に分かるような写真。

ここだけ見れば新宿とも秋葉原ともつかないが、新宿の側面としてこの要素は欠かせまい。

池袋で受けた城塞のイメージに近いが、やはり曇り空の暗い印象が先行しているかのよう。

夜景だったらどのような表情を見せてくれるだろうか、却って今までに見慣れた感覚を脱することができて良いのかもしれない。

通りを右へ向きヨドバシカメラの店舗がある方をもう一枚収めた。

飲み屋街というわけでもないのだが、人通りが非常に活発。

大きな駅には多彩な横顔があるのだ。

早くも新宿エリアを抜けてしまいそうな予感をさせる境界、国道20号線甲州街道。

左を向いてあちらは新宿南口方面。

この交差点を振り返れば、

大都会に存在するイメージのウェンディズ、都会度を判断する一つの指針となるかのように思える。

横断歩道を渡り、代々木方面へ。

看板を見なければ、ここが新宿であると看破できる人は少ないのではないだろうか。

標識には渋谷区と書かれているのも面白い。

曇り空の下、道は続く。

代々木の劇場で公演したときにこんな道路を通った事を思い出した。

この下り坂は非常に代々木らしく感じる、個人の感想という言葉で切り捨てたくはない。

ドコモタワーが見えてきた。

NTTドコモ代々木ビル、というのが正式名称らしい。

なんか、代々木スゲーもん持ってるなって感じがする(代々木の名を冠するのは他に二、三あるが)。

踏切に差し掛かった。

全然開かない、無理な横断を制止する張り紙が切実である。

ここで迂回路の提案。

ここから相当引き返すことになるのだが…。

結局二、三分待たされることになった。

だが、二、三分と書くと大したことなさそうである。

実際の待ち時間は体感で相当なものだった。

代々木駅前エリアへ突入だ。

代々木が持ってるスゲーもんその二、認定せず。

代々木駅着、なのだがこの周辺に良さげな飲み屋さんは見当たらず。

奥側の改札方面へ進む。

18時10分、代々木駅西口着。

この脇の様子が。

ほらほら、色々良い感じ。

駅前感があるのは断然こちら側だ。

ぐるりと眺めまわしてみよう。

四月期の対戦に敗北したShoがお店の選択権を持つ。

彼が選んだのはこのお店、以前知り合いといった思い出が宿っているのだという。

割安で、環状赴くままにピッタリのお店だと言う。

なるほど、面白そうなお店。

昭和タイムスリップ酒場、代々木ミルクホールさん。

さっそく潜入だ、この手のお店ってあんまりないから気分が浮つく。

ここまでくると、ハリウッドのアクション映画が描く日本みてえ。

店内には先客もちらほら。

大生で乾杯、お通しはお菓子、隠れているがどんどん焼きもついた。

おみくじハイボールはすげえサイズで料金もデカいのが来るリスクがあるのでやめ。

最近健康志向のShoが野菜炒めをチョイス、色々とあるためJunはShoに選択を委ねる。

メシが進む優しい味。

モダン焼き、空腹を満たしてくれる良いやつ。

総じてどれも非常に割高になっており千円程度、在りし日の思い出に浸りたかったであろうShoは頭を抱えていた。

お通し代が一人五百円だもん、あの駄菓子で千円するんだぜ(笑)

まぁ、そんな事に頓着のない余裕のある紳士淑女の集う場なのだろう。

我々みたいなのは、薄利多売半兵ヱにでも行く事にする(運営会社同じ)。

ちなみに環状内側には、大塚や歌舞伎町、姫路、那覇などに展開されているのれん街がずらずらずらりと立ち並んでおり、圧巻の大盛況だった。

気を落とすShoを元気付けるべく、彼の本当の思い出が詰まっていると言う新宿のカフェへ。

こじんまりとした店内には人があふれていて、生命力の充溢を感じた。

「昔はここでホットドッグにかじりつきながらビール飲んでたのに、今はザワークラウトで飲んでるなんて出世したんだなあ」

しみじみと言ったShoの横顔。

【2023春号】酒客呵業 #001 立石 宇ち多゛【キ刊TechnoBreakマガジン】

 破天荒を小洒落たスーツにつつんだ様な禍原一屰が、その日そわそわしていたのは珍しい。これから飲み屋へ行くぞと意気込んでいるにも関わらず。生地をよく見れば手の込んだストライプなのだが、生憎そんな繊細な意匠に気付くような目利きは彼の周囲にはいない。

 終業時間が十五時と言う日は年に数度訪れるが、その日その時間きっかりに退勤出来ると言うのもまた珍しい。訪問予定のお店は十四時から開いている京成立石の有名店宇ち多゛なのだが、彼がそこへ行くのは初めてである。そわそわしていると言うのは、お店の“格”とか雰囲気の為ではない。単純に億劫なだけだ。京成立石へ行くために迂回するように電車を乗り継いで行かなければならないのが、どうにも物狂おしくてたまらないと言う事らしい。ちなみに、彼が北千住に行きたがらないのも同じ理由による。兎も角、重い腰を上げた禍原一屰は、勤め先の北区から京浜東北線に乗って京成立石へ向かった。

 彼は一般的には先生と呼ばれる仕事をしているが、最近まで教育界の話題は『探究』で持ち切りと言った様相であった。禍原先生もまた、その日、初めて行く飲み屋を探究する気で意気込んでいる。探究とは簡単に言うと、好きな事をとことんやって自己実現せよ、と言った所か。禍原先生は千葉県の私立中高一貫校から一般受験で早稲田大学に合格していたので、教師としては典型的な偏差値至上主義者だ。しかしながら、如何せん勤務校の校風として求められた教員像が『右も、左も』と言う様な環境だったので、もういい加減自分の教材にだけ胡座をかいていられなくなったのである。彼の人格の変遷については、要所々々紹介する機会があるだろう。

 さて、探究である。禍原先生は探究に関して、誰にも言っていないある発想を持っていた。それは「読み、書き、聞き、話す」と言う、英語力で求められる四技能になぞらえた発想である。つまり「先ずはテーマを調べ(読み)、事前にレポートを作成し(書き)、その後現地へ行って取材し(聞き)、新たに分かった事を発表する(話す)」これで上々の探究を生徒に課すことが出来ると彼は確信していた。そのため、彼にとっての宇ち多゛初訪問も探究的にやって、いつか職場でのネタにしてしまおうと目論んでいるのだ。普段の飲み歩きをちょっとした校外学習気分でやってしまうのが、同僚の知らない彼の隠された生真面目さなのである。

 先行研究、というか各種口コミや紹介のウェブサイトを読むと、名店宇ち多゛にはクセの強い独自ルールがあるのだと言う。曰く、酔客入店不可。曰く、酒はうめ割り。曰く、串焼きの品書き無し。曰く、注文の仕方も独特、等々。あれこれ読んだが、はっきりと口に出して注文を伝えられる彼には、入店しさえすれば後は何とかなるだろうと思えた。何より、大好物の串焼きや煮込みで呑むためなのだから。かつての教え子が、毎月餃子やら煮込みやらで飲み歩いているらしい事を知って、火がついたらしいのが訪問のきっかけの様だ。

 そんな居酒屋探究に予期せぬ事が起ころうとは、禍原先生はまだ知らない。いや、直ぐに思い知った。日暮里で京成線に乗り換えて青砥で降りたのは、乗った電車が普通じゃなくて快速だったためだ。気持ちとしては普通でゆっくり揺られて、気付いたら立石と言うのを彼はやりたかった。が、結果的にはここ青砥で降りて正解だった。京成線は成田へ向けては一本道なのだが(実際は津田沼で千葉方面が出ている)、何と青砥付近では四叉路状になっており、立石に行くためにはここで乗り換える必要があったのだ。

 青砥駅は島式ホーム二面四線の高架駅、分かりやすく言えば二段ベッド状ホームの駅である。禍原が降りたのは三階下り方面の四番線、向かいに見える三番線は押上からの下り路線だ。立石まで行くには来た線路を一駅戻る必要があるため、二階のホームへとエスカレーターを下り、やって来た普通に乗りかえた。だが、立石に着かない。気付けば何故か関屋に居るではないか。彼が地元船橋から日暮里へ行く際は乗りっぱなしで良いので、実は乗り換えの事をあまりよく理解していなかった。押上行きの電車に乗らなければならなかったのに日暮里方面に戻ってしまい、彼は急激にイライラして来た。関屋駅で相対式ホームの向かい側へ移動するも、ここは普通のみ停車する駅のため十分近く待たされるというのもイライラに拍車をかけた。で、また青砥に着いて立石へ行くために乗り継ぐ電車を待つ。さっきの失敗で慎重になっているため、却ってどの電車に乗ればいいのか悩ましい。挙句、今見たいと思っている電光掲示板が韓国語で表記されていて、読みたい時に読み取れない。中高の六年のみならず、禍原先生の半生に寄り添ってくれた京成線自体を、彼は嫌いになってしまいそうになっていた。乗り換え案内は一番線へ向かえと指示しているが、次に来るのは快速。これに乗ってしまうと次の立石駅を通過してしまう。それで、足が痛むのを我慢して立ち尽くす。

 職場を出て1時間半弱、立石はとにかく遠かった。彼を阻んだのは名店が設けた独自ルールでは無く、京成線が擁する複々線の仕組みだった。

『王子の狐ならぬ、青砥の狸に化かされた』

 お店に並ぶ前に立石駅のトイレを借りようとしたところ、一旦階段を上がってから反対ホーム側へ降りて足を運ぶ必要があったと言う事も、禍原一屰を地味に苛立たせた要素の一つだ。普段、彼はこれほど短気の人ではなく、むしろ非常な楽天家で感情的になる事は滅多になかったから、ひょっとすると本当に青砥の狸が化かしてでもいたのかもしれない。

 改札階からの古ぼけた階段をまさに右も左も分からぬままに下りていくと、どうやら右手がアーケードになっているようで、彼は何とは無しにそちらへ向かった。そこに展開されていたのは、圧倒的な昭和感。鮮魚店、惣菜屋、シャッターの閉まった飲み屋、居酒屋、焼肉屋。コロッケは揚げたてに見えて美味そうだった。うろうろしていると、目当てのお店が。しかしそちらは裏手であり、現在は出口として使われているらしいため、正面側へと回る。

 すると彼は衝撃的な光景に一瞬たじろいだ。店舗正面には、暖簾が見えないくらいの人だかり、蛇がとぐろを巻いたかの様に三列にも折りたたまれたお客がずらりと行列していたからだ。事前に収集しておいた情報で知っていた事と、実際に目で見た物とでは迫力が違った。これが事前調査と実地調査を二段構えにしておく妙味である。皆が黙々たる整然さなのも威圧感があった。それらが四、五分おきに少しずつ進んでいく。別のお客がやって来て並びに着けば、最後尾はここ?などと言うやり取りが聞こえてくる。禍原は全身の感覚を緊張させ、周囲のどんな状況の変化にも対応できるようにしながら、ヘッドホンをする事も文庫本を読む事もなく、粛々と行列の流れに身を委ねた。ほとんど三十分ほど経過した三度目の折り返しで、彼はやっと正面の戸と対峙した。

「何名さん?」

「一人です!」

抜き打ちの問いかけだったので、ハッキリとした調子でつい叫んでしまったから、戸の周辺で飲んでいた酔漢らが一斉に振り返ったのに彼は恐縮した。先客たちの様子では、指一本立てておけば良かったのだ。気恥ずかしい思いをしつつ、入ってすぐ左の六人掛けを、ちょっと狭いけどとの断り付きで指示された。その座席の八人目として中程に案内されたのだから無理もない。早朝の東西線より身体を引き絞る様にして座った。お店の端の席で向かいの人以外に見えるのは壁と言う、圧迫感に加えて狭窄的な視野になるのが堪らく居心地悪い。しかしながら、無事入店して着席できた事で、彼の心だけは若干の解放感を得ていた。

 まず、飲み物を訊かれるので瓶ビール。事前に下調べした先行研究では、ここでビールと言うのは野暮になるだなどと書かれていたが、禍原先生にとってそんな事はお構いなしだった。彼は時と場合に応じて日本酒やワインも嗜んだが、根っからのビール党。すぐビールが提供される返しに注文を、お薦め二種類のタレでお願いした。慣れないお客はこうするのが良いと、何処かのウェブサイトで記載されていたやり口だ。

 しばらくして出てきたのがレバーとシロである。『だよなあ』と苦笑しつつ串を頬張ると、『そりゃなあ』と言う風ないつもの味がした。こう言うと愛好会の諸氏から叱責されそうだけれども、勝手に期待度を上げ過ぎていたのである。彼は串焼きのシロをあまり好まないし、レバーを注文するのはサッと炙った様なお店でだけだった。それでもタレの串でお薦めを訊かれれば、提供されるのがこの二種類だと想像するのは容易い。飲み歩きの好みがはっきりしている禍原先生にとって、これは無用の忠告だったらしい。

 気を取り直して煮込みを注文。ここ宇ち多゛さんは東京五大煮込みに数えられるそうで、彼の目当てもそれである。懇意にしていた教え子が、月に一度餃子や煮込みで飲み歩くのだと言う報告を受けたから、禍原先生も俄然その気になってやって来たのだった。これは美味い、ため息が出そうになる。一言で言えば豊かな味なのだが、やはりモツの種類が豊富なためだろう。呑み助の醍醐味だ、最高だった。

 こう美味いとますます飲む気が増して来る。気になっていたのが“大根生姜乗っけてお酢”と言うもので、どうやら大根の漬物に紅生姜を乗せたのに酢醤油がかかったやつなのだそう。聞き慣れぬ呪文さながらであり、実際このお店の独特な注文の仕方は某ラーメン店のコールになぞらえて紹介されることもあるようだ。このお店の中では散見、いや散聞された。みんなが注文するのは逸品の証だろう。大根に胡瓜を加えた、“お新香生姜乗っけてお酢”と言うのもある様だが、先に聞こえて来た方を頼んでしまった。これはその日の気分を反映させる選択で良いだろう。紅生姜は乗っけない事も、お酢はかけてもらわない事も選べる。

 盛り上がって来た彼は、さらに追加で煮込みとビールをお代わりした。一人で使用可能な卓上の領域は狭く、置けるのはせいぜい二皿と飲み物くらいである。だから大瓶が何本も並ぶのは窮屈になるし、グラスも邪魔くさく感じる。このお店の勘定は、卓上に残されたお皿や瓶を最後に数えるので、空皿は積み上げておけるが空き瓶は重ねられずに卓を圧迫する事になるのだ。煮込みを平らげながらビールを飲み干し、そろそろ次に移る頃合いだった。

『さっきは自分の浅はかさに脱力したが、今度は好きなものを試させてもらおう』

 このお店の串焼きには生と言うのがある。これは下茹だけされたものである。

「ガツ生お酢お願いします、それと梅割り」

 お願いしますは要らないらしいが、禍原先生は仕事柄丁寧な口調になってしまう。彼自身、横柄な野郎を何よりも嫌っていた。ガツお酢とも呼ばれる一皿は一分もかからず提供された。噛みごたえのあるサクサクとした歯触りに身悶えしそうな、高級ガツ刺しと言った風情に笑みがあふれる。

 梅割りは、グラスの下の受け皿までこぼして入れてくれた焼酎に、梅シロップを垂らして出来た原始のカクテルの様なもの。ビールのグラスを片付けてくれた所に、手際良く注いでくれる。禍原は一礼する様にグラスに口を付け、先ず一口グッと飲んでみた。ほぼ焼酎のストレートだから緊張していた。こんなものが名店を代表する飲み物なのかと言う疑念もあった。

『は!これはラムだ!』

彼は学生の頃、タイの海賊が飲むラムに憧れて、吉祥寺のラムバーへよく通っていた。懐かしの味わいが脳内に励起されて満面の笑みがこぼれそうになる。この瞬間、彼の至福は絶頂に達し、後はお店の何もかもが好きになった。こんな良いお店は限りなく無い、間違いなく五本の指に入るぞと思うまでに。

「はい〜、煮込み黒い所持って来て〜」

親父さんの声が聞こえる。それは効率的なのであって、決してぶっきらぼうなのでは無い。怖いと感じられるのは本質的では無い。身を置いていると居心地良く感じられるのは、お店のルールがお客を律し過ぎない様にさせる配慮を、店員さん方が心がけているからだったのだ。狭さや緊張感はあれど、高圧的な圧迫感があるわけでは無い。惚れっぽい性格の彼は、身体だけは周囲に配慮して縮めていたが、心情は極楽の境地にあった。

 ガツを味わって、茹でられた生の品々は絶品だろうと確信したため、今度も生でアブラを注文した。チャーシューのような濃厚な旨味がグッと固まった逸品だった。煮込みを二皿食べ終えている禍原一屰は、脂っこいものが大好きなので、このアブラ生お酢は素晴らしいものに思えてならなかった。結局、一皿二本入りのアブラ生と、煮込みをさらに追加した。そして、三杯目の梅割りを注文した時に親父さんから「この辺でもうやめにしときな」とストップをかけて頂いた。会計がいくらかわざわざ覚えてはいないが、計算し直せば四千円弱となる。美味いものばっかり注文し放題でこの値段は破格だった。

 ちょうど六時に退店した禍原一屰は、京成線の普通車両に揺られて海神駅へ着いた。こう言う良い気分の夜は、一寸ばかり寝過ごして仕舞うのが常なのだが、その日の彼は何事もなく降車する事が出来た。

『青砥の狸にお酒を振舞って、地元まで無事に送り届けて貰えたかな』

 禍原先生は理科を教えていてさらに霊感なぞ無いにも関わらず、お化けとか霊魂の存在を信じている。それが目に見えるかどうかは問題では無いのだ。我々の肉眼に見えない分子と言う存在を、二百年前の科学者は視たのだから。彼にとって酔っ払うとは、酔って祓うと言う事に他ならない。飲み歩いて酒代を払うと言う行為により、その街その土地の魔や禍や怪を祓うのが、生活習慣病に全身を蝕まれつつある禍原一屰の酒客呵業なのである。

 青砥の狸に関する後日談で話を仕舞いとしよう。彼は大いに気を良くしてお店の事が大好きになったから、その翌々日、宇ち多゛をまた訪問した。学期末は普段より早く退勤できる日が多いのだ。もう青砥の乗り換えで迷う事は無い。だが、王子で乗った京浜東北線が快速だったため、日暮里を通過した先の上野まで行って引き返す羽目になってしまった。これはもう、狐とか狸と言った議論は関係無しに彼自身に問題があると結論付けられそうである。

酒客呵業 #001 関節炎 ー了ー

二度目の訪問でいただいた「ボイル」はレバーを茹でたもの、しっとりとしていて非常に美味しい。
「タン生お酢」は人気商品、四時過ぎには売り切れてしまうのは他にシンキ、ハツ、カシラなど。
実は先日、禍原先生は二時間以上並んで開店から宇ち入りした。こちらはシンキ、コブクロとテッポウ。
限定十食程度の「ホネ」は顎の部分。スペアリブ様の食べ応えある肉。
口開け三種の神器勢揃い、最後は「ツル」。三皿も並べられないのだが、良い席だったため可能だった。

【2023春号】第一回戦 激突 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

4/1

二月の「ファイレクシア・完全なる統一」実装からちょうど二ヵ月。

いよいよ、Uncommon Low Skirmish第一回戦が始まった。

会場は錦糸町82エールハウス、大の大人が十五時の開店前に並んでいた。

キリンの生とブラウンエールで乾杯し、二杯目のジェムソンハイボールを購入してゲーム起動。


今月のUncommonガール

【四月一回戦第一試合】

Junマリガン、これが功を奏する。

Shoは早速、赤青の土地をタップイン。

「お前、イゼットジジイだろそれ!ww」

(イゼットジジイとは、Shoが開始初期の二月から愛用していた《静電式歩兵》を中核としたデッキ。赤の軽量火力や青のドローで、ジジイこと《静電式歩兵》や《くすぶる卵》を育てる。)

返しの二ターン目、順調に《くすぶる卵》を召喚。

一方で、Junの展開は

平地→黒の伝説の土地→青黒の土地をアンタップイン

と、まさかの三色デッキでShoを驚愕させる。

ここで《婚礼の発表》を貼り、以降三ターンに渡ってトークン生成路線へ。

その後は、Shoのババァこと《気まぐれな呪文踊り》や人間トークンなどを双方が除去し合うが、五ターン目にJun《策謀の予見者、ラフィーン》をトップデッキ、六ターン目に手札から《永遠の放浪者》へとつなげて快勝。

「ジジイ出されてたらどうなってたか分からんわ~」

「ここで俺のデッキ名、『ジジイ・ファイアー』だ。ファイアーには火力って意味と、解雇って意味をかけてるぜ」

「は?」

「このデッキ、もうジジイ居ねえぜ!」

まさかの《静電式歩兵》失業、Shoのデッキに勝ち目はあるのか・・・?


【四月一回戦第二試合】

序盤は丁々発止の除去合戦。

ターンをもらってJunが《漆月魁渡》を召喚、トークンを生成し毎ターンドローの方針が固まるが、フェイズイン後に即《稲妻の一撃》で魁渡が退場。

「アイツはな、Sho、お前に見立てて採用したプレインズウォーカーさ。そして」

まだ三枚しか出ていない土地から

「コイツはShunに見立てたPWだぜ!」

時を解す者、テフェリー》召喚、Junは前に見かけた際よりもコストが1減っていた事を二度見したが。

そう、Junのデッキ名はエスパーフレンズこと「ザ・テクノブレイク」本人に見立てた《放浪皇》は四枚積みだ。

その後の見どころは、Shoの《ゼロ除算》によるShunことテフェリーをバウンスしてから《マスコット展示会》という王道コンボ、この時点で土地の開きがShoの7枚に対しJunは4枚である。

つまり、手札を保持しているのは圧倒的にJunが多く、Shoは逆事故気味とも見れる。

3体のマスコットはテフェリーのバウンス、《放浪皇》のトークンと相打ちして残りは飛行2/1の一体。

そして「ジジイ・ファイアー」の大本命がShoの「ジジイ!」と言う掛け声と共に召喚される…《傲慢なジン》何でも彼はこの炭鉱採掘企業の二代目という設定のようであるが、5/4で登場した彼は早々に《冥途灯りの行進》により退場、「ジジイッ!(by Sho)」

潤沢な土地を活かし、トップデッキした《ミシュラの命令》により飛行2/1トークンが10/1になってワンパンチ、《放浪皇》も除去される。

しかしながらSho既に手札は尽きJunは手札6枚、ここから2枚目の《放浪皇》で飛行トークンを除去するも、今度はShoが今引きしてきたこれまた2枚目の《ミシュラの命令》により魁渡のトークン(居たの忘れてたでしょ)と共に《放浪皇》が除去される。

一瞬まっさらになった盤面だが、Junが《しつこい負け犬》&《策謀の予見者、ラフィーン》、次ターン《華やいだエルズペス》と一転攻勢。

「何か来い!」という断末魔の《選択》から2枚目のジジイこと《傲慢なジン》が8/4で登場するも、《虚空裂き》により丁寧に対処された、「ジジイッ!(by Sho)」

四月第一回戦はJunが難なく勝利。

Shoのデッキが不調というよりは、プレインズウォーカーのアドバンテージが強いと言う事か。

自分自身の存在意義を超え、バンドの在り方をデッキに体現させたJunは負けられない。


【四月二回戦第一試合】

4/8

翌週はShunメンバーの企画により、まだ明かされていない都内某所へロケがあるため、今日中にケリをつけたいJun。

そして、もう後がないSho。

定例の錦糸町82エールハウス。

Junのハンドは、《策謀の予見者、ラフィーン》以外全て土地でゴー。

双方順調に土地が並び、盤面上の展開に乏しくコントロールの色彩を強く帯びた試合、延びれば延びるだけデッキの勝ち筋を狙える算段が現実的になる。

事実、この試合には二十分費やされている(記事の分量も非常に多いです)。

開始七分で動き。

Shoはババァこと《気まぐれな呪文踊り》、土地は5枚。

Junのラフィーンは退場したが、Shunに見立てた《時を解す者、テフェリー》忠誠度4、《華やいだエルズペス》忠誠度6、《しつこい負け犬》が二体で片方が4/3警戒カウンター付与、土地七枚。

Sho、X=4全力の《ミシュラの命令》がテフェリーを直撃、そして6/1になったババァがブロックされる事無くエルズペスを粉砕、ソーサリー一枚でプレインズウォーカー2体を屠るナイスプレーに思わず「やるな!」。

返すJunのターン、トップデッキされた《放浪皇》で黙っていられぬとばかりに-2能力を発動し、Shoのババァこと《気まぐれな呪文踊り》を追放。

さらに2体の負け犬で計7点ダメージ、このクロックが続けばShoの命はあと2ターン。

だが、二回戦第一試合は未だ残り十分弱続く。

Sho、《くすぶる卵》召喚からX=3の《ミシュラの命令》で《放浪皇》と警戒持ちの《しつこい負け犬》を除去し、再びのダブルプレー。

しかし、そこは負け犬のしつこさで墓地からアタック、Junは今後ライフ2を支払う必要があるものの卵でブロックしきれない方の三点クロックとワンドローは保証されている。

この時点でライフはSho10対Jun18。

続くターンでSho《無謀なる衝動》により卵の燃えさしカウンターが六、さらに上手く引き込んだ《選択》を唱え《灰口のドラゴン》が孵化。

イゼットカラーの強みを見せつけた。

このドラゴンは放置すると二点火力を好き勝手に撒き散らすので、使いたくなかったが即除去で《虚空裂き》、するとShoは対応してなんと《ゼロ除算》でドラゴンを手札に回収、誘発した二点火力を負け犬ではなくドラゴン自身に撃つという致命的プレイングミスが脱力ポイントだがこういうのはよくある(忠誠度が低く残したくない方のプレインズウォーカーを選んでしまうとか)。

サイドボードから履修してきた講義カードはもちろん《マスコット展示会》、Shoは現在土地が7枚並んでいるため、卵を出した次のターンで即時孵化が可能だ。

盤面はJunの《しつこい負け犬》のみ、双方マナ基盤である土地は潤沢。

そこへもう一体の負け犬が奇襲し、Sho残りライフ4、Junは16。

さらにShoに見立てた《漆月魁渡》も召喚し、ブロックされない1/1トークン生成。

これでShoはブロッカーを二体立てなければ敗北する事となった。

だが翌ターン、Sho《くすぶる卵》を二体召喚、《無謀なる衝動》で燃えさしカウンター二つの状態でターンエンド、ブロッカーが間に合って起死回生か、次のターンで《マスコット展示会》を唱えればドラゴン二体が誕生する。

Junドロー《婚礼の発表》をトップデッキし場に出す(ドローに利用)、負け犬はブロックされると分かっているがドロー効果のために奇襲、《漆月魁渡》の+1能力も起動し計3枚の追加ドローは《否定の契約》、土地、《永遠の放浪者》。

良い流れだが、Shoもまたワンパンチ圏内である、どちらが先に決めるか…。

ターンもらってSho長考、見えているハンドは《ミシュラの命令》、《発見への渇望》、《マスコット展示会》、それと伏せられているのが一枚。

…X=4で《ミシュラの命令》!これでドラゴン二体孵化!

それを受けてJunも長考、《ミシュラの命令》は対象をプレインズウォーカーの《漆月魁渡》とブロックされない1/1トークンに取っているが…ここは様子見で優先権をShoに渡し直す(+4修正のモードをShoが選択せず、8/4にしたドラゴンからのワンパンチが無かったのが不可解だが、盤面の整理に慎重だったのだろう)。

《発見への渇望》で誘発されたドラゴンの火力により負け犬退場、さらにJunにも2点

Sho が引き込んだのが《ショック》ならば一発で、ショック2点+ドラゴンの誘発火力2×2点+本体への攻撃2×4点と、Junのライフ14を奪い切るが…!それはならず、Shoまだ土地が1つアンタップ状態である。

負け犬が素通りしてしまうため、ドラゴンは攻撃せずにそのままターン終了。

Jun、満を持して《永遠の放浪者》召喚、+1能力でドラゴン一体を一時追放、さらにトップデッキした《冥途灯りの行進》により2体目のドラゴンも追放。

「えっ、何で居なくなったの??」状況を把握しきれないSho。

しかしターンもらってSho、ずらりと並んだ土地からなんと3枚目の《くすぶる卵》召喚、さらに《マスコット展示会》で即時孵化させるのだが、応じてJun一枚刺し虎の子の《否定の契約》で展示会を打ち消してボードアドバンテージは握らせずに済ませる。

ターンもらってJun、《永遠の放浪者》の+1能力で孵化したばかりのドラゴン一体を再度一時追放。

ライフ4のShoに1/1トークンと負け犬の二体でアタックし、卵で防ぎきれない1点を与えつつ、《婚礼の発表》と負け犬の効果で2枚ドローしてターンエンド。

試合の残り時間は二分を切っているが、この時点での盤面。

非アクティブプレイヤー、Jun。

《永遠の放浪者》、《婚礼の祭典》、2/2人間クリーチャー・トークン、土地12枚、ライフ12。

ロー団アクティブプレイヤ―、Sho、ライフ3。

《くすぶる卵》、土地10枚と殺風景だがここで一気に展開。

先ずはババア!そして、ジジイ!この《傲慢なジン》は自身の能力で今や16/4飛行というフィニッシャーとして育っている、これがジジイ・フレンズこと「ジジイ・ファイアー」だ!ファイアーには解雇という意味も含ませてある!

ジジイが飛んで殴ってゲーム・エンド目前。

Junターンをもらって、《永遠の放浪者》の−4能力起動。

2/2の人間クリーチャー・トークンとShoの卵を一つずつ残して全てのクリーチャーを破壊!

《しつこい負け犬》二体で奇襲をかけ、Shoのブロッカーは飽和、押し切っての勝利であった。

コントロール色の強い長い戦いだったが、双方のデッキがゆっくりと着実に戦略に乗れていた結果と言えよう。


【四月二回戦第二試合】

先攻Sho手札キープ、王手のJunは軽快にマリガンスタート。

試合時間は十分であったが、ここで双方の土地が四枚ずつ並んだ際の盤面を見てみよう。

Shoは《くすぶる卵》に《気まぐれな呪文踊り》二体ずつ、卵とババァがニコニコで攻守共に非常な硬さ、ライフは22。

一方Junは《婚礼の発表》にカウンターが二つ乗りトークン二体と貧弱だが次のターンで2/2が三体に転ずるだろう、辛うじて《踊る月、魁渡》がアタッカーの足止めをしている、今ババァに殴られてライフは16。

Jun、《華やいだエルズペス》召喚、トークン一つに+1/+1カウンター並びに飛行カウンター付与。

Sho「華やぐね〜」実際厄介である。

ターンを渡し、強化されたトークンが三体にプレインズウォーカー二体の硬い盤面。

Sho、信じられない引きの《メフィットの熱狂》二発でエルズペスを撃破、自陣の各クリーチャーにカウンターが複数乗る。

Shoは土地4枚からマナを引き出し切ったので、ターン・エンド。

Jun、《策謀の予見者、ラフィーン》をトップデッキして召喚、魁渡の能力で孵化寸前の卵を攻防不可指定。

飛んでるトークンがラフィーンの能力で6/6になってアタックし、計8点ダメージ、Sho12対Jun14でそろそろ双方平等に勝機が訪れそうである。

その後Shoはババァの能力でコピーした《ゼロ除算》により、魁渡とラフィーンをバウンスしつつドラゴンを孵化させるものの、4枚の土地からマナを引き出し切ってしまう。

ターンもらってJun、満を持して《永遠の放浪者》、ドラゴン一体を一時追放、またもこの展開でShoとしては分が悪い。

飛行6/6トークンのアタック、ドラゴンではチャンプブロックせずに通す。

エンド。

運命の最終ターン。

ブロックされない《気まぐれな呪文踊り》2/1、飛行ブロッカーの居ない《灰口のドラゴン》4/4がそれぞれ通って、Jun残りライフ6。《稲妻の一撃》による3点ダメージ、ドラゴンの誘発能力で追加の2点ダメージ、Jun残りライフ1。マナを使い切って《無謀なる衝動》、ドラゴンの火力誘発で最後の2点ダメージを削り切り。

とはならなかった。慎重派のSho、プレインズウォーカーやトークンを丁寧に対処し、Junの陣地には6/6飛行トークンとエンチャントを一つの状態にしてターン・エンド。卵が追放領域から帰還、残りライフ6。

応じてJun、《踊る影、魁渡》召喚、+1能力でドラゴンをブロック不可指定。

Sho「エッ?」

飛行トークンの6点が勝負を決めた直後の断末魔であった。


Uncommon Low Skirmish四月期、決着!

堕ちたる奴隷商人Shoに、目覚めた義の言語術師Junの鉄鎚が下った!

だが、Shoのイゼットジジイこと、「ジジイ・ファイアー」はデッキのポテンシャルは十分であり、振り返ってみてもShoの勝機は、特に二回戦に於いて十分だった。

それでもJunは負けられない、バンドの想いを一身に背負った覚悟は、数多のワイルドカードがデッキのキーカードへと姿を変えて顕現しているのだから。

…二ヶ月同じカラーでデッキを持ち込むと、そのカラーは使用禁止となる。

次回、五月期のデッキは、Jun赤か緑か、どちらも本人が好きなカラーでは無い。

Sho、大好きな黒でリベンジに来るか、Junのメタなデッキ構築が冴えるか否か。

乞う、ご期待。

今月のUncommonガール

【2023春号】序 Uncommon Low Skirmish-珍法小競合-【キ刊TechnoBreakマガジン】

玄き腐敗の言語術師-ロゴスマンサー-Jun、彼の怒りは頂点に達した。

一年間というのは短いようで長い、いわば半永久の極限とも言える期間だ。

Junは、自分自身をバラバラの切れ端(それこそ木の葉一枚々々)に刻んで情報の薄っぺらな束また束へと刻み込むという、時の牢獄からいよいよ抜け出す事ができた。

それは果てしないように思える、真っ暗で決して平坦ではない道のりを当て所なく旅するのに似ていた。

それで得られたものは、ちっぽけな、まるで棒切れのような勇気。

つまり、道を征く者に『物は来る』のだという危うい実感だけである。

そんな彼が、とある些細な事件により、身に余る黒マナを怒涛のように放出したのだ。

堕ちたる蒼き量子術師-クォンタマンサー-Sho、彼もまた怒りを沸々と堪える日々を過ごしていた。

しかし、それは只々、日々の生活のためにしていた、やむを得ない罪なき事だったのかもしれない。

それを、ある人ならば徒然なるままにと表現するかもしれないし、別のある人ならば川の流れの如くと見るかもしれない。

だが、Shoと近しい人々の眼には、彼の寡黙な無表情や冷淡な沈黙が、攻撃的な消極として捉えられていたのだった。

すなわち、彼はこの一年間をただただ無為に、仮想量子空間における性奴隷の調教だとか新たな女商品の調達であるとかに浪費するのみだったのだ。

「貴様、すぐにその薄汚いその手を地面にへばり付けて、命乞いして見せろ!さもなければ、永遠に貴様の両目を潰して、男も女も無い暗黒へ叩き落としてやる!」

「へっへっへ!生活から逃避して高みにいた気になっていただけで、結局その生き様に飽いただけの自惚れ屋がこの俺とやり合おうとは呆れたぜ!!」

今ここにUncommon Low Skirmish、戦いの火蓋は切って落とされた。

玄と蒼、二人の吽己者がその全存在を賭けて衝突する。

【三月号】環状赴くまま #017 新大久保—新宿 編集後記【キ刊TechnoBreakマガジン】

新宿へ向かうと言うのは年甲斐もなく浮ついた気分になる。

そのため、選んだのは月末の月曜にした。

何だか気合が入ろうってものじゃないか。

日の長くなった十八時三十分、辺りが暗くなるのを待って、出発。

パチンコ店の脇にある路地を南下していく。

早速よさげなお店あり、メニューなどよくある大衆居酒屋ものではあるが、やけに小洒落ている、描かれているイラストに『ミライザカ』を感じる。

高田馬場からの路地の延長みたいな雰囲気が続いている。

しかしながら、逆側にあたる環内こそがTHE新大久保コリアン王国なので、今歩いている道はこれでも大分トホホであると言わざるを得ない。

だいたいまず人出が全くないもの、極力写らないように撮影したけど駅前なんかめちゃくちゃ人だかりがうねっていたのに。

宿泊もできるサウナ、こんなのあるなんて実用度爆アガり、当方は赤羽のをよく利用するし、仙台に旅行の際にはCure国分町は候補に入る。

新大久保エリア途絶の予感、ここまで。

左見て。

右見て。

続く路地を真っ直ぐ進む。

ここはどこか、池袋から目白に向かう途中の空隙地帯に似ている。

もちろん、街の側面の一つに、人の棲家という要素もあるが。

しかし、この先にあの新宿が待っているとは想像ができない。

以下が今回のベストショット、私道でしょうか、何か潜んでいる感じする。

指示通り律儀に右へ回って迂回。

この先、東京都道302号新宿両国線(狭義には職安通り)。

これが大久保エリアと新宿エリアの境界だな。

通りが交差する地点では左右を広く記録しておく。

やはり環内の方は人出が多いのか、良く見てみれば、行き来できるように横断歩道が設けられている。

一方でこちら側にあるのは…。

高架下。

有志のクズ入れ、駅前から飲み飲みしてきた空き缶をありがたく捨てさせてもらった。

そして、歩道橋。

渋い、実に渋い。

こんな所をカシャカシャ撮影しているのは不審者に見られる。

人をやり過ごし、カメラを向けないように配慮するのも一苦労だった。

しかし、この狛犬には興醒めも甚だしい。

ま、狙ってないからこそ、この取り合わせなんだろうが。

写真中央に写っているオレンジの光は、新宿のランドマークの一つ、エスパスの電飾である。

職安通りを越え、いよいよ新宿エリア。

しかしながら、意外と閑静なのに驚かされる。

地図を調べると、ここにあるのは西新宿プライムスクエアという共同オフィスなんだそう。

懐の広さを感じさせる施設だった。

新宿の喧騒らしきものは未だ感じられず。

そこの路地を右に覗いてみても繁華街然とはしていない。

が、いよいよそうも言っていられなくなる区域が次の路地。

目星をつけていたのはここの先にある鮮魚店。

後でここまで戻ってきて向こうへ進むことになるのだが。

え、『なんでんかんでん』??

生きとったんかワレェーーーッ!と言う感じに胸が詰まる。

さて、気を取り直して駅の方へ進路をとる。

枯れ井戸と読めそうな縁起の悪いパチンコ店さん。

くわばらくわばらと思いつつ先へ急ぐ。

あ、なんだか安心感のある、見覚えのある光景だ。

新宿は、池袋と同じく、駅前の雑踏が一番充実していて、接続の道に新宿を感じさせるようなものは少なかった。

目の前の思い出横丁へは行かず、先ほどのなんでんかんでんの少し先へ。

今夜選んだ飲み屋さんは、タカマル水産さん。

突き出しはバイ貝の煮たの、こりゃタカマルね〜。

刺し盛りの二人前と生牡蠣で、(二人で飲むのであれば)高コスパな飲みを堪能した。

後から入ってくるお客はみんな断られていて、私が入店できたのが奇跡、こちらナカナカおすすめなのでぜひ予約して行って欲しく思います。

で、〆はここ。

替え玉三つで千五百円ほど。

渋谷にあった商業施設内で食べて以来二、三年ぶりになりますが、めちゃんこ美味かったです。

今回出てきたチャーシューも強かった。

はっきり言ってスープは都内のどのお店でも出会ったことのないお味、おみそれしました。

これからしばらくは、ビール飲み歩きが爽快な陽気が続くだろう。





編集後記

 キ刊TechnoBreakマガジンも、創刊から一年経つ。前身となる「一食一飯」「ラーメンドラゴンボウル」の週刊連載に疲弊して、キの向くままの連載ができるよう、このような一人雑誌を出し続けてみるという試みである。やり切ることができて、今、非常に安堵している。

 いよいよ、後回しにし続けてきた「船橋ノワール」を何年かかったとしても終わらせる必要があるから、キ刊TechnoBreakマガジンはこれで仕舞いにする。わずかな読者の皆様に対しても、物語に区切りをつけるという誠意を示すことができたのではないかと思っている。感謝しています。

 ひょんな事から生まれた宜敷準一、私は彼にアリョーシャとかムイシュキンのような良いやつになって欲しいと願い、この一年があったのだ。彼は逆輸入される形で船橋ノワールの世界の住人になるだろう。本編での登場は期待できないが、スピンオフの「虚飾性無完全飯罪」では活躍すると思う。先月にも書いたが、我らが禍原一屰が今後どのような破天荒をするかしないか、引き続き応援してやってほしい。

 四月からは新企画が始まるから、この場ではその記事が定期的に載るだろう。それは静観していてほしく思う。「環状赴くまま」も月一で継続する。

【三月号】ヨモツヘグリ #013 浦安 三ぶちゃん【キ刊TechnoBreakマガジン】

宇ち多゛に入るから、宇ち入りと言う。

このお店は一寸怖いな、と改めて思った。

土曜なぞ朝十時の開店に向けて、八時過ぎから並び始めると言うのだから。

仕事明けに誘っていたモツ煮込みで一杯やる会、最終回は休日にそのお店へと思っていたが、未来のカミさんの方で午前中に用事があるんだそうだ。

ちなみに、土曜の宇ち多゛さんは正午過ぎには品切れで閉まってしまうらしい。

だからって博多もつ鍋か何かにハズして最終回を迎えようって気もしちゃいないが。

まぁ、兎に角、宇ち多゛さんへ行くのは僕はやめておく。

きっといつか、「何処かの呑み助」がふらっと行って、記事にすることだろう。

じゃあどうするか。

本郷三丁目のじんちゃんさんか、秋元屋さんは西東京でやや遠い、そう言えば東中野のグリル座ボスさんで鶏刺しってのも悪くない、おやそこの裏手に丸松さんってのも出来たのか秋元屋さん系って事ね。

決まらない、もういっそ東十条埼玉屋さんに、いやでもカミさん同伴でマスターに何言われるか分からない、飲み過ぎてしまっても宜しく無い。

と言うか、居心地もつまみもこの頃ますます上々な牡丹屋さんへ二人きりで再訪も良さそうだが。

あれこれ考えてしまって何が何やら訳が分からない。

こっちの方も自由に行こう。

今夜のヨモツヘグリ、最終回は和で刺身だ。

で、モツ野ニコ美女史の地元、浦安で十八時半に落ち合う事にした。

のだが、開店時間の十七時に予約の電話を入れると、その日はあいにく満員御礼なのだという。

和の湯田川さんという処、前々から気になっていたが、またしても行く機会を逸した。

女将さんが電話口で平身低頭して下さっていた様子がよく分かり、もうこのお店に当日予約をするような真似をして、同じように困らせてはならないと心に誓った。

彼女は改札前で待っていた。

象牙色をしてふんわりとした外套を羽織って、こちらに手を振っている。

それで一体どのお店に行ったらいいか、途方に暮れそうになりながら事情を話して歩き出す。

ガード下のお店は気に入っていたが、大分前に店仕舞いしてしまっていたからそちらには向かわない。

ロータリーから見て、左手の路地に入ってみることにした。

「こっちの通り歩くことって無いわねぇ、ウチへは一つ隣の路地なのよ」

などと言いながら、その長く美しい髪をきらめかせながら、その瞳はもっとかがやかせながら、慣れない通りを興味津々で彼女は進もうとしている。

通りを入ってすぐ、左手に前々時代的直球といった風情の焼き鳥屋さん。

僕たちは二人とも、呆気にとられるようにしてそのお店を凝視していたのに気付く。

無言でいるのは、我々が相互に手応えを感じている証拠だ。

和で刺身と決めた今夜の希望に肉薄できそうなお店へ近付くべく、先へ。

すると、目と鼻の先くらいの距離に、あった。

二う゛ちゃん、という由来を聞きたくなるようなお店。

軒には小さく「小料理」と書かれている。

ここだと思って、僕は彼女に様子を聞くこともせず、引き戸を開けた。

中は七人ほど掛けられそうなカウンターと、小上がりの座敷にちゃぶ台が二つで他人ん家然とした如何にもな風情である。

大将と若いの、お客は一人静かに飲んでいる。

前進するしか無いのだが、非常に気後れしている。

と言うのも、男女二人が来易い話など出来そうなお店では無いからだ。

小上がりでも何処でもどうぞ、と言われてカウンターに着く。

湊町で歌謡曲ってお店、こういうの初めてだ。

いつもと様子の違う僕の事を、不思議な顔つきで見つめているモツ野女史は、流石地元だから落ち着いているとでも言うのだろうか。

この日、僕は声をひそめて会話した。

店員さんへの注文ははっきり申し上げた。

瓶ビールとゆずみつサワーで乾杯した。

見つめ合うだけの時間が流れた。

気を落ち着かせながら席の正面を見た。

ホワイトボードが掛かっていた。

本日のマグロ

◎本日の刺身2点盛り¥1,200

①脳天と中おち

②脳天とホホ

③カマトロと中おち

④カマトロとホホ

何だか、色々と完璧なお店が駅前にありました。

①と④、あるいは②と③の組み合わせで注文すれば四種制覇となるので注文。

美味しくないわけがなかったので感想は割愛するが、気を良くして日本酒に手を出してしまいたくなるほどに上々。

鰯のフライ、鰈の煮付けも良い。

地元船橋にこう言う良いお店ってあるんだろうか。

などと少しばかり落ち込みながら、蛇足でもつ煮込みを注文。

こんにゃくを細切りにしたやつが入っているが、高速のSAで出るようなタイプである。

静々としたしめやかな夜は更けた。

退店して駅前のロータリーへ出ると、ブオンと唸った黒いセダンが眼の前に急停車した。

後部座席から、とんでもなく目立つ緋色の軍装に身を包んだ美丈夫が颯爽と降りた。

「徒歩口頭で辞令、傾聴。『エージェントW失踪から三か月、空位の補填のため貴官をエージェントMに任命』以上だ」

「アタシにWAR GEARの筆頭が務まるとでも思ってるって?」

「気の毒だが、まぁ。半人前だがヴィーも馳せ参じるさ。さて、」彼はこちらに向き直って言った「エージェントRだ、ライス大盛りのR。よろしく」

差し出された右手に握手すると、上下にぶんぶんと振られてやけに馴れ馴れしい。

「いつも読んでたんだ、キミの書く食べ歩記、楽しく読んでいた」

「は、これは、どうも」

軍務から籍を外して世迷言みたいな物を書いていた僕は、何もかもバレているのだという感じが今更ながら照れ臭く、軍閥に復帰した身分だというのが今はとても居心地悪かった。

眼の前にいる人物の階級が大尉だからと言うのもある、大いにある。

僕は小者なので小尉、いや少尉なのだ。

それにしても、手をずっと握り続けながら、やけに僕の事をじろじろと見てくるが、何なのだろう。

「私だよ、『紅いホルモンは激情』の」

そう言って、彼は嫌味を全く感じさせないような目配せをした。

「え、白米モリヲ?惑星完食男の!」

それは、僕と似たような物書きの名だ。

そちらではお互い顔も知らぬまま意気投合していた。

「y少尉、貴官はY大尉に昇進だ。二階級特進、死んだ気で励んでほしい、以上」

紅い軍装をたなびかせて、彼は嵐のように去って行った。

「軍閥内部ならまだしも、秘匿中の秘匿みたいな部隊内で恋愛なんて在り得ないから、結婚の話はしばらく、それなりに結構長い事待ってて頂戴ね」

と言いながら、モツ野ニコ美ことエージェントMは、左手の指環を右手の薬指へと移し替える。

モツ煮や餃子で満足していたこの僕が、最後の最後におあずけを食らったのが、こんな夜だ。







ヨモツヘグリ 了

【三月号】棒切れ #011 台無しの詩【キ刊Technno Breakマガジン】

道から外れて法を犯す

社会に対する叛逆だ

理系の頭に偏った

社会に対する叛逆だ

カバンの中には文庫本

空手が上々半端者

ガリ勉インテリ大嫌い

教養失くした基準以下

逆転するなら勉強だ

溜まり場行くのは止めにした

暴力連打の一夜漬け

暴風染みてる詰め込みだ

知らない事が多過ぎた

自分に対する叛逆だ

今ならルールを遵守する

最後は自分に叛逆だ

【三月号】酒客笑売 #011【キ刊TechnoBreakマガジン】

桜の季節がやってくる。

私は大学二年生の頃、四月上旬にくしゃみが続くようになり、自分が花粉症になった事を思い知った。

あれから時が経ち、今では地球環境のせいもあるだろうが、一ヶ月も早く目が痒くなる。

つまり花粉の飛散が、桜の開花をちょうど追い越して行ってしまったという事だ。

こう見れば、桜は兎で花粉は亀か。

私自身、他者と競うようにして飲み比べをする性質だから、いよいよ身体にガタが競うにいや来そうになっている。

誰と比べているのか、誰と競っているのか、そうしているうちには幸せに行き着くことはあるまい。

大学の講義で思い出せる事なぞ、、きっと片手で済んでしまうだろう。

老地質学者の咆哮、ドライアイの理論学者、私をメディアにアクセスさせた名も思い出せないあの講義、余命の無い美学者。

中でも、折に触れて思い起こされるのが、経済学の講義だ。

その精悍な経済学者が言うには、就職したら会社のトイレットペーパーを持って帰って良いのだそうだ。

コンプライアンスを無視した名調子に私は溜飲が下がる思いがしたし、私自身も他者に対してこれくらい正直でありたいと願う。

そんな彼の講義の大部分を私は居眠りしていたが、たまたま起きていたゲーム理論の簡単な小話を受けていた際に紹介された、とある答えをここに書き残しておきたい。

事例として分かりやすいチキンレースが取り上げられた。

双方が崖に向かって車を飛ばし、先にブレーキを踏んだ方が負けと言うやつだ。

ブレーキを踏んだ方は汚名を着せられるが、双方がブレーキを踏まなければ崖の上から車と命を落とす事になる。

経済学者が言うには

「チキンレースには、最初から参加しないのが正解」だそうだ。

他者との飲み比べも、SNSでの暴飲暴食自慢も、最初からやらないのが正解。

失った元手を取り返すためのギャンブルも、レベル上げの見栄とちょっとばかりの所有欲の為にソシャゲに課金する事も、最初からやらないのが正解。

しかし私のように、汚名は挽回するもので、名誉は返上するものだと心得ている愚か者からすれば、経験してみて初めてそれがチキンレースだと思い知る瞬間が多々ある。

なので、事前に察知して不参加を決め込む事が無理ならば、次善の策として気付いた時に降りるのを決めれば良い。

今調べてみたら別の説があり、チキンレースは先に気付いた方が有利なので、その者が何らかの戦術を取る事で自陣の采配をより良い結果に向ける事が出来るようだ。

なるほど、崖に向けての車に乗り込み、チキンレース開始の合図が鳴ると同時に、ギアをバックに入れて全力で踏み込めば良い訳か。

試合に負けて勝負に勝つ。

たとえ愚かであったとしても、我々は試合と勝負とを見定めるだけの教養をせめて身に付けなければならない。

さて、学業から逃避するためにせっせと読書に勤しんでいた学生時代であったが、当時から私にはろくに金が無かった。

ただ、時間ばかり抱えていて、その隙間に不安が押し寄せていた。

飲酒だけが不安を取り除く唯一の手段だった。

私が私である原型は、その頃には確立されていたように思える。

忘れもしない、三月二十五日の卒業式。

私は、同期の二人と落ち合って、卒業式会場のアリーナを出た。

そのキャンパスに来たのは入学式と体育の単位を取る時だけ、とりあえず勿体無いから式辞くらいは受けておこうと赴いたのだ。

入学式ほどでは無いが群衆単位での人だかりが多かった。

飛ぶが如く、高く高く胴上げされている人が見える。

胴上げのサークルらしく、卒業生は誰でもその資格があるそうで、我々は三人とも精一杯

持ち上げてもらった。

「それじゃあ、“いいちこコンプリート”しちゃおっか」

愛嬌たっぷりに西藤が提案した。

「よっしゃ、やろう」

溌剌として永島と私が応じた。

彼らは先々月の記事にちょっと出てきた、私の数少ない友人たちのうちの一人である。

“いいちこコンプリート”とは、「かわいいは、正義!」のキャッチコピーで当時絶賛放送されていた深夜アニメ『苺ましまろ』のOPテーマ「いちごコンプリート」を文字っただけの駄洒落だ。

そのアニソンを歌いながら、いいちこのボトルをラッパ飲みし空になるまで繰り返すと言う、勢いだけで非常にバエル(悪魔の方の)飲酒である。

まだ十四時過ぎだったろうが、無事に“いいちこコンプリート”を済ませた私は、新宿かどこかのアニソンカフェで当時の知り合いが舞台に立つと言うのを応援に行った。

メイド喫茶などに行ってはメロンソーダをしばくと言うのを戒律にしていた私は、その店でメロンソーダで酒を割ったものを四杯も五杯も飲んだと思われる。

そして、千鳥足も逃げ出しそうな満身創痍の兆千鳥足で、南口前の甲州街道跨線橋を彷徨ったのが十八時過ぎ。

向かったのはもう名も思い出せないホテルの一室の謝恩会会場だ。

時間の観念と静粛ムードとをブチ破るようなあからさまな遅刻をかまして、会場へ乱入した。

足取りは悪いながらも、こう言う時の始末に負え無いのだが応答はきちんとしていて、私を知る誰もが何ら異常を感じていなかったらしい。

謝恩会は飲み放題だからここぞとばかりに最後の酒を、誰と競うでもなく、強いて言うならその場の和やかムードや取り澄ましたお上品ムードを一変させたいが為に呷って飲んだ。

目を覚ませば見知らぬ天井だ。

腕には点滴がされているものの、全身の憔悴感いや小水感で、トイレに行くのもままならないほどだ。

これが人生最初の救急車である。

その日の午前中には、四月からの勤め先の最終面接があったから、無理矢理向かった。

そんな私を入社させてしまった、見る目もなければ人材育成の戦略も持たない哀れな企業で、私は何とかやっている。

それでは、桜の季節がやってくる。

卒業や入学、人生の節目の一つがやってくる。

私も卒業しよう。

記憶から失くした飲酒にまつわる失敗談はこれでいっぱいだ。

チキンレースは、もうやめた。

#011 卒業、搬送、涙葬送